第十七幕 隠し事
{聞きたいこと?}
《うん》
《"Dr.カゲロウ"って人についてなんだけど…》
{…あー}
「なんか知ってるのか?」
{いや、生憎ボクは何も知らないなぁ}
〈なんか嘘っぽ…〉
『そんなこと言うなよ』
〈思春期男児は黙ってろ〉
『は??』
《はいはい喧嘩しない!》
{仲良しだね〜}
カッピーを見て笑う。
「…なんか」
「凄いカッピーのこと見てないか?お前…」
{え〜?そうかなぁ〜}
〖確かに、貝森さんがずっと一人だけ見てるのなんて珍しいよね〗
《確かに〜!》
〈なんで見てんだ〉
そう言って少し睨む。
{別になんもないよ〜!}
まるで皆がおかしいと言うように笑う。
「なんもないのにそんな見る??」
「Dr.カゲロウについても、なんか知ってそうな態度だったし」
「なんか隠してるよな?」
《うわぁ、ストレートだね〜》
〈お前気になったこととか徹底追求するタイプだろ〉
『怖…』
「え、なんで??」
本人はただ疑問に思ったから聞いただけ、と素直な感想をぶつける。
{ん〜}
楼沙は少し考えるような動作をしてから、話し始める。
{ボクね、双子の弟いるんだ}
《あれ、そうだったっけ?》
{うん。誰にも話してなかったんだけどね〜}
{さすがにそこまで聞かれたら答えた方がいいよね}
『本当になんか隠してた…』
「まぁ、昔から勘が鋭いって言われてたから」
少し自慢気に言う。
〈それで、その弟となんの関係がある?〉
{ボクの弟…似てるんだよね、そこの君と}
楼沙はカッピーを指差して言う。
『え、僕と?』
{そうそう}
{ボクの弟も照れ屋さんでさ〜!}
{こういう服とか恋愛系の話とか、そういうの嫌いだったんだよ}
《なるほど!確かにカッピーと似てる!》
〈確かに〉
『認めたくはないけど…』
{それに、そのツンツンした性格!ボクの弟もボクが話しかけたときすっごい冷たく返すから}
{まぁ、そういうことで、ずっと見てたってワケ}
《でも私たち弟さん見たことないよね?》
〖離れたところに住んでるとか?〗
{そう言ってもいいかな}
考え込むように楼沙が黙る。
{そういえば、なんでカゲロウについて聞くの?}
《最近、改造された動物たち増えてるでしょ?》
《実は私の病院の近所にも出てきちゃって》
《その子が首輪つけてたから確認してみたら、オオカミの名前と"Dr.カゲロウ"って文字が刻まれてたの》
{あぁ…そういうことだったんだね}
{もしかしてその子の名前、"ランドルフ"?}
《えっ!なんで分かったの!?》
{実は…}