第十五幕 Dr.カゲロウ
《この首輪、GPSはついてないけど飼い主とオオカミの名前がついてるみたい》
『じーぴーえす無いんだ…良かった…』
「なんて書いてあるの?」
《オオカミの名前は"ランドルフ"》
《飼い主の名前は…"Dr.カゲロウ"?》
〈Dr.カゲロウ…??〉
〖聞いたことない…〗
《…待って、私知ってるかも》
「えっほんとに??」
《二人は覚えてるか分かんないけど…昔森の中でさ》
〈…あ、もしかして…あんときヤツって…〉
突然思い出したように言う。
《そう、あの子の名前確かDr.カゲロウだったよね?》
〖確かに、機械にその名前が書かれてた気がする〗
『なんの話してんの…??』
「よく分からん…」
〈昔、私が知らない人に拉致られたことがあって〉
「拉致?」
〈うん、別になんかされたとかじゃなかったけど…〉
〈でも周りには私みたいな獣人がたくさんいたような覚えがある〉
《あのときは私たち二人で助けたよね〜》
〖うん、懐かしい〗
〈あのときは本当に助かったなぁ〉
カッピーだけが俯いて無言で立っている。
〈ん?おい、どうした?〉
異変に気づいた八代が話しかける。
『いや…』
『…昔、僕も1回連れ去られたことがあった』
「え、カッピーも?」
《あら…》
〖じゃあもしかしたら常習犯かも…でもそんな情報1回も聞いたことない〗
「まだ誰も知らないとか?」
〖それか知ってても口止めされてるかも〗
しばらく沈黙が続く。
《…もし今も続いてるなら、今すぐやめさせないと》
『でもどうやって?』
〈警察に行くのが一番だけど、矢形も情報を得ていないならきっと警察も何も分からないと思う〉
《だろうね》
「自分たちで証拠集めれば?」
〈難しそうだけどなぁ…〉
《じゃあ、一旦色んな人に聞いてみようよ!》
〖そうだね、今後被害者を増やさないためにもそうするのがいい〗
〈アテあるのか?〉
《んー…"貝森さん"ならもしかしたら》