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これがプラチナランクの力なのです(貴博と真央)

 翌日。


 ドンドンドンドン!


「起きて、早く行くわよ」


 メルシーがドアをノックというには大きすぎる音でノックする。


「んん、おはようございます」


 真央が目をこすりながらドアを開けて挨拶をする。


「早く行って早く帰って来ないと間に合わないわ。もう行くわよ」


 ベッドから、貴博を中心に左右の妻達も一緒に起き上がる。


「ち、リア充め」


 メルシーがつぶやく。


「メルシーは、薬づくりに生涯をささげるって言っていたのです」

「生涯なんて言っていないわ。今は、って言ったの。だから、うらやましくなんかないんだからね。早く支度しなさい。玄関で待っているから」


 と、メルシーは部屋を出て行った。




 貴博達が急いで玄関に出ると、荷車があり、馬につながれていた。その荷車には大きな樽が三つ乗っていた。


「もしかしてだけど、その樽に入れてくるってこと?」

「そうよ。生きたまま連れて帰りたいでしょ。だから、樽がいいかと思って。

「その他の荷物は?」

「いらないわ。日帰りだから」


 そう言って、メルシーは荷車に乗り、手綱を握った。


「さ、行くわよ」

「ちょっと待って、うちの馬車を連れてくるから」

「早くしてよね」




 馬車と荷車は、街を出て、北へと向かう。

 途中、貴博達が来た道ではなく、右に入り、森へと向かう。その道は、森の中へと続いていた。


「メルシー、先に行かないで、こっちを先に出して。じゃないと、魔物に対応できない」

「わかった。お願い」


 と、貴博達の馬車を先行させる。貴博の横は真央の特等席だが、今は、反対側にシーナが座る。

 シーナは、辺りを警戒する。そして、


「ミーゼル、二時の方向、ゴブリン三」

「了解。クラリス、ルイーズ、リル、行くよ」

「わかった。私が先行して、乱す。後は頼む」


 と、クラリスが突入して、ミーゼル達はそれに追従する。


「うりゃ!」


 クラリスが大鎌を投げると、大鎌は先頭のゴブリンに突き刺さる。

 それにより取り乱したゴブリンを両サイドからミーゼルとルイーズが一刀両断にする。リルはサポートに入る予定だったが、その必要がなかった。


「ナイスだったね、ミーゼル、ルイーズ」

「ありがとう。次は交代しよう」

「うん」


 こうやってゴブリンは倒されていく。


「シーナ、私達四人でやろうよ。後ろで指揮して」

「わかった」


 と、ミーゼル達は、シーナを中心とした戦闘訓練を実戦で行っていく。


「ゴブリンのエリアを抜けると、オークやホーンベアが出てくるわよ。特にオークは私達女性を狙ってくるから気を付けて」

「わかった。オークが出てきたら、僕がやるから」


 そうこうしていると、オークが出てくる。三頭も。


「貴博さん、十一時の方向、オーク三頭です」

「わかった」

「アイスランス!」


 バシュッ!


 同時に三本のアイスランスが飛んでいく。


「命中! 沈黙しました」


 シーナの言葉に、メルシーは、


「今、何をしたの?」


 と、つぶやいている。


「貴博さんは魔法が得意なのです」


 真央が解説を行った。


「ホーンベア、正面です。誰が行きます?」


 シーナが問いかける。


「はいはーい。私、まだ何も倒してないから」


 と、真央が飛び出していく。


「メルシー、熊、どうしたらいいです?」

「食材や素材にするなら血抜きで」

「わかったー」


 真央は、ホーンベアに近づいて行く。

 当然ホーンベアも警戒して構える。

 真央はナイフを手に持ち、左右のフェイントを加えてホーンベアに突進し、というより瞬間的に移動し、


 サクッ!


 と、ホーンベアののどにナイフを刺してしまった。


「え、ホーンベアが動けず?」


 メルシーは固まる。


「これ、ここで解体するのです?」


 再起動したメルシーは真央に指示する。


「急ぐから荷台に頭を下にして乗せて、血抜きしながら移動するわ」

「はーい」


 真央とクラリスは、ホーンベアを荷台にまで持って来て、乗せた。

 

「ねえ、あなた達って、ホーンベアだろうが、ゴブリンの群れだろうが、平気なわけ?」

「ふふ。これがプラチナランクの力なのです」

「そう、そうなのね。よかったわ、あなた達に頼めて。移動が順調すぎるもの」


 そうしていると、いとも簡単に湖についてしまう。


「クラリス、魔法で樽に水をためて」

「わかった」

「真央、メルシーと一緒に釣りをして。僕は熊をさばくから」

「はーい」

「メルシー、オタマジャクシを釣るのです」


 真央はメルシーを釣りに誘う。


「私達も熊をさばくの手伝おうか」


 と、ミーゼル達は熊班に加わった。



 真央は、竿を二本取り出し、針にゲソをつける。


「えっと、これの握り方は、こうです……」


 と、メルシーに釣りの仕方を教えていく。


「あの、これでオタマジャクシを釣るわけ?」

「そうですよ。ま、見ていてください」


 と、真央が、一投する。


 ポチャン!


 そして、真央がゆっくりと糸をまくと、


 ガツン!


「来ました!」


 と、真央は、糸をまいて行く。そして、水面でオタマジャクシが跳ねるのを見ると、


「せーの」


 と、オタマジャクシを引き上げた。


「こんな感じです」

「……こんないとも簡単にオタマジャクシが」

「感心していないで、釣りますよ。じゃないと、私が全部釣っちゃいますよ」


 と、真央は竿を振る。


「あ、私も」


 メルシーが竿を振る。


「初めてにしてはうまいです。さ、糸をまくです」


 と、二人で糸をまいていると、


 ガツン、ガツン!


「き、きました」


 メルシーが興奮して叫ぶ。


「慎重にやるです」


 二人は糸をまいて、オタマジャクシを釣り上げる。


「後、二匹なのです」

「こんな簡単に集まるなんて……」


 と、二人は竿を振り、簡単に二匹を釣ってしまう。


「もういいのです?」

「うん。五匹でいいわ。この湖の主、あんまりたくさん取るとスタンピードを起こすって噂なのよね。だからか、誰も捕まえようとしないし、捕まえようとしないからオタマジャクシの捕まえ方がわからないし知られていなかったの」

「それって、昔に捕まえることが出来た人って、死んじゃったってこと?」

「多分だけどそうなのよ。だから、私達も危険がくるまえに早く帰るわよ。ホーンベアの解体、終わった?」

「オッケーだよ。帰ろう」


 貴博たちは、来た道を戻っていく。

 結果としてスタンピードは起こらなかった。

 なぜなら、対岸で起こった後だからである。




 帰りも、ホーンベアをはじめ、オークやゴブリンを倒しつつ、進む。

 行きに倒した魔物の討伐証明部位の切り取りも忘れない。思ったよりことが早く済んだため、時間的に余裕ができたというのもある。




 街に戻ってくる。


「メルシー、僕らは冒険者ギルドによって、換金してから行くね」

「わかったわ。リル、一緒に来て。創薬の道具とかやり方を教えるから」

「よろしくお願いします」

「私も行きます」


 と、シーナ。三人は、先に館に戻った。



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