貴博と真央の念願のウェディング(貴博と真央)
「貴博、真央、一緒に来てくれ」
グレイスは、屋敷の玄関先に止めておいた馬車に乗り込む。中にはすでにシャルロッテとソフィリアが乗り込んでいた。
「パパ、どちらへ行くのですか?」
「帝城だ」
「何をしにでしょうか」
「お前、もうすぐ家を出るだろう。その前にすることがある」
うーん、なんだろう。と、貴博は想像するが、やらなければいけないことが思いつかない。やりたいことはありはするが。
帝城につくと、貴博はグレイスと二人で来賓室に通される。真央は、シャルロッテとソフィリアと一緒だ。
「さあ、貴博。着替えろ」
「え?」
「そこに、タキシードがあるだろう」
貴博が振り返ると、そこに、真っ白なタキシードが掛けてあった。
「えっと」
「お前な、王女を結婚もせずに連れ出すのか?」
「? もしかして、僕の結婚式です?」
「そうだよ。王女、しかも家名を偽っていた王女だ。こんなところでこじんまりとやらざるを得なかったんだ。関係者以外招待していない。国王をなだめるのが大変だったんだからな。国を挙げて盛大にやるとか言い出してな。三公爵家と一緒に止めたんだ」
「そうでしたか。ご配慮ありがとうございます」
貴博は、タキシードに着替える。
「それじゃ、行こうか」
と、グレイスは貴博を教会へと連れて行く。そして、教会の入り口に貴博を立たせると、グレイスは、
「頑張れよ」
と言って、教会の中に入っていった。
教会の入り口で立っていると、係の女性がやって来て、
「それでは、入場いたします。ついて来てください」
と、貴博に入場を促す。
貴博は、女性について行き、祭壇の前に立つ。
すると、後ろから、花嫁が入場してくるのが気配でわかる。
花嫁が貴博の後ろに立つ。
貴博は、振り返る。
すると、そこには、純白のウエディングドレスを着た、真央が立っていた。
貴博の目から涙がこぼれる。
真央の目からも涙がこぼれる。
ついに、この日が来た。
函館で真央に出会い、真央を思い、真央のために生き、真央を追いかけた。
真央と一緒に全国を旅し、そして一緒に転生し、およそ十六年をこの世界で共に生きた。
ようやく、ようやくこの日が。
貴博と真央はどちらともなく、一歩、二歩と近づいて、抱き合った。
「真央!」
「貴博さん」
そして、貴博は真央のベールをあげると、キスをし、真央もそれに応じた。
二人は、唇を離すと見つめ合い、微笑み合い、そしてまたキスをする。
「んん」
神父がわざとらしい咳払いをする。
貴博が振り向くと、祭壇の神父が言う。
「段取りってものがありまして」
「あ、ごめんなさい。うれしくて。この日が来たのがうれしくて」
「私もです。ずっとずっと待っていましたから。この日が来るのをです」
貴博と真央は手をつないで神父の前に立った。
「タカヒロサン、あなたは、やめるときも……」
「ずっと一緒にいます。絶対に!」
「マオサン、あなたは……」
「絶対にはなれません」
「……」
神父は、二人のフライングにたじたじだ。
「それでは指輪の交換をしてください」
神父は貴博に指輪を渡す。
貴博はその指輪を受け取り、左手で真央の手を取る。そして、真央の左手の薬指に指輪をはめた。
真央の目から涙が流れる。
神父は、真央に指輪を渡す。
同じように、真央は貴博の左手の薬指に指輪をはめた。
貴博は、真央のベールを上げ、そして、キスをした。抱き合いながら。
こうして、二人は、念願の夫婦となった。




