表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/442

貴博達の特訓と放課後木剣クラブの存続の危機(貴博と真央)

 教室に戻る。


「今日の試合、残念だったが、上級生の方が一枚上手だったってことだろう。まあ、ジェイドだけでなく、皆も三年間、頑張るように」

「「「はい」」」

「それじゃ、今日は解散」




 校舎を出て、庭のベンチに座って今日のことを話す。


「あーあ、負けちゃったよ」

「あの先輩、うまかったよ。試合の相手が誰であろうと、あの先輩なら対応できそうだし、いい人選だったのかもしれない」

「って言うことは、もっと強い先輩がいるかもしれないってことか?」

「ルーク先輩はマルチプレイヤーであの強さだから、特化した先輩はもっと強くてもおかしくないかもね。そういう意味では、相手が悪かったんだと思うよ」

「くそ―勝ちたかったぜ」

「おい、一年生のお前」


 貴博が振り返ると、そこにルークがいた。


「お前、この中で一番強いだろう」

「え? 僕ですか? 違いますよ」

「じゃあ、誰だ」

「この子です」


 と、真央を前面に押し出す。


「……まあ強さにはいろいろあるが、魔法という意味ならお前じゃないのか?」

「いやいや、そんなことないと思います」

「そうか。失礼した」


 ルークは踵を返して三年生の校舎の方へ帰っていった。


 あぶないあぶない、と貴博は思う。おそらく、魔力量を気配で感じているんだなと。


「お兄ちゃん、どうして自分だって言わなかったのです?」

「だって、めんどくさそうじゃん」

「そうかもだけど、もしかしたら面白いことがあったかもしれないのです」

「面白いことならいいけど、めんどくさいことは嫌だな。そうゆうの、真央に譲るよ」

「なあ、放課後木剣クラブどうする?」


 手持ち無沙汰になったジェイドが貴博に聞く。


「帰ったら先生に聞いてみるよ」

「よろしくな」




 真央と二人で帰る貴博。

 自宅につくと、玄関で仁王立ちしている、チャイナドレスで赤髪の美人がいた。


「ただいま帰りました、おりひめお姉様」

「ただいまです」

「遅い。今日から私の特訓だろう。逃げたかと思ったぞ?」

「あ、ごめんなさい。新入生歓迎会があり、友人が戦ったのでそれを見てから帰ってきました」

「そうか。それでその友人は勝ったのか?」

「相手が三年生だったこともあり、負けてしまいました」

「なるほど、それを見てお前達は、もっと強くなりたいと思ったわけだな?」

「あの、おりひめお姉様。強くなりたいと思っていますが、それを見て、というわけではありません。僕は、真央を守る強さが欲しいって、ずっと思っています」

「まあ、どちらでもよい。荷物を置いてこい。訓練場で待っているからな」

「「はい」」




 訓練場に急いで行くと。


「今日は、貴博はそらと、真央はみずきと手合わせだ。ヒーラー役はリンとレンだ。よろしく頼む」

「そら兄さま、よろしくお願いします」

「うん。かかっておいで」

「行きます! たー」


 貴博は素手で殴りかかる。が、簡単にひょいっとよけられる。

 右ミドルキックと見せかけてハイ。よけられる。右と見せかけて左、それもダメ。何一つ当たらない。


「そら兄さま、どうして当たらないのですか?」

「まあ、スピード変化、フェイントがきれいすぎる。おかげで、狙いが読みやすい。それに……」

「……」

「試してみようか」


 と、そらは自分に目隠しをする。


「ほら、打っておいで」

「行きますよ。た―」


 と、思いっきり狙うように見せつつフェイントをかける貴博。しかし、それをはじかれる。


「え?」


 そらが目隠しを取って、貴博に言う。


「動きって言うのは、何も体のことだけじゃない。気配、つまり魔力の流れ。それも判断材料になる」

「あ、今日の……」

「心当たりがあるのか?」

「今日の友人の戦った相手が、盾の後ろから動きを読んでいました。それですね」

「僕は見ていないからわからないけど、そういうことだな、きっと」

「じゃあ、どうしたいいのでしょうか」

「僕が攻撃するから、かまえて」


 そらは、貴博の前に立っている。構えもしない。しかし、

 貴博は、自分の左側から殺気を感じ、左を向く。が、


「はい」


 コツン


 正面からそらが貴博の頭に手刀を落とした。


「い、今のは?」

「魔力でデコイを作っただけ。貴博ならできるはずだよ。魔法を自分と離れた場所で発動させるのと基本は同じだからね。まあ、三年間、頑張ろうよ」

「はい」


「さて、仕切り直しと行こうか。ここからはファイトアンドヒールだ」

「はいっ」


 と言った瞬間に、


 ドゴーン!


 貴博は壁にたたきつけられる。


「スピードもマシマシで行くよ。目も、気配の読みもスピードにならして。今は、それでいい」


 貴博にレンがヒールをかけて、復活させる。


「行きま……」


 ドゴーン!


「くっ」

「ほら立って」




「真央、あなた面白いステップ踏むのね」

「はい。猫ステップなのです」

「あー、そういわれるとそれっぽいわ。でもね、飛ぶのはダメよ、よけられなくなるから」


 ドゴーン!


 真央も吹っ飛ばされる。


「いたたたた」

「ヒール」


 リンがすかさずヒールをかける。


「向こうと同じように、こっちもスピード上げていくからね。とにかく、慣れるのよ」

「はい」


 ドゴーン!


「まずは、反応しなさい」

「は、はい」




「ただいまー」


 クラリスが帰ってくる。


「おい、クラリス。私が相手をしてやる。準備して、すぐに来い」


 おりひめが声をかける。


「……は、はい」

「不服か?」

「滅相もないです、今すぐ!」


 結局、クラリスもぼこぼこにされた。


 これが三年間続くのか……グレイスお義父様のほうが、優しかったな。


 おりひめ達との特訓は、夕食を挟んでその後も行われ、ヒールにより体力は回復しても、最後には魔力を全放出させられて眠るのは、これまで通り。




 朝、登校時に、そらが声をかけてくる。


「貴博、それに真央とクラリスも。授業中も魔力操作の練習を欠かさないでね。できれば、人の魔力を感じることと、自分の魔力の放出をコントロールすること。いいね」

「「「はい」」」


「そら兄さまもみずき姉さまも、厳しいのです」

「ほんとだね。だけど、まだ強くなれるって思っていてくれるから、厳しくしてくれるんだよね。鍛えてもらえるの、あと三年しかないから、頑張らなきゃ」

「そうなのです。頑張るのです」

「帝国一とか言われていても、これか……。まだまだだってことを思い知らされるよ」


 クラリスが肩を落とした。




 その日に行われた、リンとレン、みのりとしずくによる魔法の特訓も厳しかった。とにかく発動数と発動までのスピード、発動する場所のコントロール。それを、おりひめ達とこぶしを交えながら行うのだ。


「ほら、私が発動したアイスバレットを相殺して。じゃないと当たるよ」


 という感じで、同時に何発も撃ちこまれる。

 相殺って、バレット同士を当てることがどれだけ難しいか。

 貴博は何度も吹っ飛ばされた。そして何度も思った。脳がショートすると。




 さらに翌日、ジェイドが貴博に聞いてくる。


「なあ、放課後木剣クラブ……」


 ミーゼル達も不満を顔に表す。


「「あっ!」」


 貴博も真央も、帰宅後すぐにそら達にぼこされるので、聞くのを忘れていた。

 結論として、友人とも婚約者とも過ごす時間が大事だとグレイスが判断し、夕食までに帰ってくることで、放課後木剣クラブが存続することになった。その分、夜も朝もおりひめ達との特訓が厳しくなったが。

 また、貴博達は、ジェイド達におりひめ達から教わったことを少しずつ伝えていく。こうして、放課後木剣クラブもその実力を上げていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ