表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/441

かかってきなさい。全員まとめて相手をします。あおはるです!(貴博と真央)

 と、ジェイズが言った瞬間、貴博は・魔力の流れを感じ、真横に飛ぶ。

 貴博がいたところに爆発が生じる。


「よく気づいたな」

「いやいや、あんなの食らったら死んじゃうじゃないですか」

「なんでもありって言ったろう」

「わかりました。では、僕も行きます」


 そう言って、刀をかまえたまま、貴博は低空でダッシュし、クラリスへと迫る。

 そして、下段から切り込むが、その前にファイアバレットを先行させる。


 バシュ、キィン!


 クラリスはファイアバレットをよけ、刀を受ける。


「なかなかえげつないことをするじゃないか」

「なんでもありだと」


 ドカン!


 二人の中央で魔法が炸裂する。


「たぁ!」


 貴博が切り込む。クラリスがそれをはじくが、両者の後ろで火魔法が爆発する。

 両者がその威力に吹き飛ばされて剣とクロスさせる。

 お互いの足元から火柱が上がり、それを飛んでよける。


 見ていたグレイスが感想を漏らす。


「あれ、マーレ先生の戦い方だな」


 シャルロッテが答える。


「マーレ、ここで教えていたことがあるのかもしれませんね。ターレかオプシディアンの誰かかもしれませんが」


 キィン、キィン……


 剣が交差する音が響く。時々、ドオン、ドゴンと言った魔法がぶつかり合う音も混ざっている。


「貴博、お前、猫をかぶっていたな?」

「前にも言いましたけど、僕より真央の方が強いですよ」

「そうか、今度手合わせを頼むかな、お前を倒してから」

「いえ、そろそろ様子見は終わりにして、僕が勝たせてもらいます」


 貴博は、バックステップでクラリスから離れると、クラリスの四方八方から、ファイアバレットを撃ちこんだ。何発も何発も。


 ドドドドドドゴン!


 クラリスの周りが煙だらけになる。が、その煙の中からクラリスが飛び出してくる。


「やってくれたな!」

「いや、化け物ですか。あれだけ食らって」

「人を化け物扱いにするな。本気で行く」


 クラリスは魔法を捨てたようで、全力で剣を振るって来る。

 ものすごい剣の応酬となる。クラリスは上から下から何度も撃ちこみ、貴博はそれをすべてはじいて行く。

 さすがに、体重が違い、貴博が押され始める。手数で負けているわけではない。


「先生、そろそろつらくなってきたので、本当に勝たせてもらいますね」

「やれるものならやってみろ」


 貴博は、剣に魔力をまとわせ、切りかかる。


 バチン!


 剣が合わさった瞬間、閃光が光る。

 そして、クラリスが動きを止める。

 その瞬間に、貴博は、クラリスののど元に剣を突きつけた。


「勝者、貴博!」

「はあ、疲れた。先生、大丈夫ですか?」


 と、剣を納めながら聞くと、クラリスはそのまま倒れた。

 それを貴博が何とか支え、クラリスが顔から倒れ込むのを防ぐ。


「先生、先生!」


 やばいかな、と、貴博は、こっそり脈をとる。心臓は動いている。呼吸も大丈夫。あとは、この面々が見ている前でヒールを使ってよいか。


「ん、んん」


 クラリスが意識を取り戻す。そして、貴博に支えられていることに気づくと、何とか自分の足で立った。


「先生、大丈夫ですか?」

「ああ。何とかな。最後のは何だったんだ?」

「魔法の一種です」


 そうか、ここには電撃魔法はないのか。と、貴博は想像する。

 ないのではない。広まっていない。


「まあ、なんだ。これで、皇帝陛下も公爵達も納得するだろう」

「えっと、なんのでしょう」

「婚約に決まっているだろう」

「あはははは」


 苦笑いをする貴博。




 観客席から放課後木剣クラブが降りて走ってくる。先頭はもちろん真央だ。

 真央が貴博にダイブして抱き着く。


「お兄ちゃん、かっこよかった!」


 と。


「さすが私の旦那様です」


 シーナが頬を染める。

 その後ろで、ミーゼルが叫んでいる。


「お父様、早く! 順位がかかっています」

「「あ」」


 と、ルイーズとリルも父親を呼ぶ。


 娘に呼ばれて猛ダッシュをしてきた三公爵。


「「「婚約を認める」」」


 と、何を急いでか用件だけをいう。


「あ、あの」


 貴博が言葉を発する。

 グレイスやその妻達まで集まってきている。


「あの、僕は、前から宣言している通り、成人したら真央と二人で旅に出ようと思っています。僕は、真央と一緒にいたいし、真央を守るために頑張って来たんです。つまり、僕の中心にいるのは真央です」


 真央が頬を染める。


「ですから、せっかくのお申し出はうれしく思うのですが……」

「うれしいのよね」


 ミーゼルが口を挟む。


「じゃあいいじゃない。私が貴博といたいの。それに燃えるわ。私も貴博の中心になってみせる」

「私も!」

「私も負けません!」

「私は初めから貴博様について行くと」


 ミーゼル、ルイーズ、リル、そしてシーナが宣言する。


「ま、真央……」


 と、貴博が真央に助けを求める。

 すると、真央は一歩前に出て、腕を組んで言った。


「かかってきなさい。全員まとめて相手をします。あおはるです!」

「真央、そういうことじゃなくってさ」

「楽しそうでいいのです。競い合ってもっともっとお兄ちゃんに好きになってもらうんです」


 そう、真央は笑った。かわいい。


「貴博、話がまとまったようだから、僕らは帰るよ」


 と、グレイス達は引き上げていく。

 れーちゃんとラミとルミはメイドに担がれていった。


「それじゃ、娘のことを頼むよ」


 スノーホワイト公爵。


「うちの娘も幸せにしてやってくれ」


 シトラス公爵。


「うちもよろしく頼む。旅に出てもいいが、時々顔を見せてくれ」


 ネビュラス公爵。


「うちだけ男爵家だけど、よろしく頼むよ」


 ウエッジ男爵。

 そして、


「うちの娘ももらってくれ。ちょっと年上だが、自分より強い相手じゃないと嫌だと言っていてな。ようやくその相手が見つかったんだ。よろしく頼む」


 皇帝陛下。


「じゃあ、僕もジェイドを連れて帰るよ。ジェイドとはこれからも友達でいてくれ」


 ジェイズ。




 訓練場には、放課後木剣クラブとその顧問のクラリスが残る。


「貴博様、よろしくお願いします」

「私も幸せです」

「私も貴博様をお慕いします」

「どこまでもついて行きます」

「ようやく、ようやく私にも婚約者が」


 と、婚約者になった者が貴博に抱き着いて行く。


「……あの、さっきのシーナのお父さんの後の人、だれ? 年上がどうかって言っていたけど。っていうか、どうしてクラリス先生まで僕に抱き着いているんですか?」

「ん? さっき、婚約が認められただろう。ウェッジ男爵の後に、うちの父があいさつしただろうに」

「「「「……」」」」


 固まる者多数。


「えっと」


 と、悩む貴博に、シーナが言う。


「あのお方は、皇帝陛下です。で、クラリス先生がどうしてかって言うのは……まさかと思いますけど」

「クラリス・ミッテンバーグ。本名、クラリス・アンブローシア。この国の第一皇女だ。よろしく頼む、旦那様」


 真央を含め、全婚約者が固まる。


「あ、あの、先生はおいくつ?」

「女性に年齢を聞くのか? まあ、答えてやる。十七だ。十歳年上だが、気にするな」

「……」


 貴博は思う。他の七歳児を婚約者にするより罪悪感が少ないかも、と。

 それを察した真央が貴博の横腹をつついた。真央、心を読むな。


「それからな、学校の中では先生でいいが、普段はクラリスと呼んでくれ」

「く、クラリス?」

「なんです、旦那様」


 と、口調を変えるクラリス。


「あ、そうでした。私、家を出て一人暮らしをしていたので、これを機に、旦那様と一緒に住みますね」


 これにより、ファイトアンドヒールの犠牲者が一人増えたが、クラリスは逆に強くなれると喜んでいた。


 押しに弱い男、貴博。七歳。婚約者六名。父親たるグレイスに追いつくまであと十四人。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ