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転生(優香と恵理子)-4

 グレイスは、二人のお互いの小さな手を握らせ、自分も手をつなぐ。


「おはよう。どうかな気分は」

(あの、意識がある中で赤ちゃんプレーをさせられるのは、ちょっと恥ずかしいです)

「赤ちゃんプレーじゃなくて、赤ちゃんなんだけどね。そこは、生きるためと思って我慢しなよ」

((はい))

「ところで、これから一年間の君らの学習計画について、話してなかった。日中、遊んでいていいわけじゃないよ。うちの家訓は働かざる者食うべからずだから」

(赤子に何をさせるんですか)

「勉強だ。せっかく自我があるんだから、赤ちゃんの時から勉強すれば、他の子より先んじることが出来るでしょ? それに、体は自由に動かせないし、言葉は伝えられないしで、暇だよ」

(それはそうですね)

「というわけで、一日一回、僕が魔力ぐるぐるをします」


 と言って、グレイスは魔力を流し込みながら二人の体内で魔力を動かす。


「どう、昨日も魔力を注いだけど、体の中を何かがめぐっているのがわかる?」

(はい)

(ちょっと気持ち悪いです)

「はは。これが魔力。この、体中に魔力を巡らせることを魔力ぐるぐるという。これを今日から自分達でもやってもらう。この魔力を巡らせるときに、将来の自分を思い描きながらやってほしい。例えば、知的に、とか、運動神経よく、とか、理想の顔や体型を思い浮かべながらね」

(えっと、どういうことです?)

「ま、そうすると、自分の理想に近い自分になれるかもよ。ってこと」

((……))

「それと、今、体の中で感じているもやもやを胸の中心で集めてみて。イメージが大事ね」


 二人は、目を閉じてイメージする。


((あっ))

「できるみたいだね。優秀優秀。それじゃ、それを今度は大きくしてみて」


 二人はグレイスの言う通り、魔力の塊を大きくしたり凝集させたり、二人の間を移動させたりする。二人の魔力がグレイスによって同調させられてしまったので、それもたやすい。


「君ら、センスがあると思うよ。じゃあ、次、目に魔力を集めてみて」


 二人が目に魔力を集めるイメージをする。すると、


((あ))

(体の周りに何かが見えます)

(もしかして、これが魔力?)

「そうだ。今度は、その体をまとっている魔力を広げたり体の中に押し込めたりしてみようか」

 二人は、魔力を広げていく。

「うんいいね。次は集めて」


 魔力を体に沿って薄くする。


((ま、まぶしい))

「そうだね。凝集させると、まぶしくなるよ。これで、人の魔力量がわかるはず。見てて」


 と、グレイスが自身の魔力を凝集させる。


(あの、ごめんなさい。まぶしすぎて、目を閉じても)

(目がー、目がー)

「はは。ごめんね。僕は普段、体の中に魔力を収めてるから。君達も将来的にはこうやって、魔力の多さを隠せるようにしてほしい。はっきり言っておく。君達の魔力量は、僕が昨日注いじゃったから、一般の人たちより多い。それは狙われる理由になりかねない。だから、隠せるように」

((はい))

「ということで、君達の日課だけど、朝晩は、こうやって僕か妻達による健康チェック。それから、空いている時間は、理想の自分を思い浮かべながら魔力ぐるぐる。それと、魔力操作の練習。後は、この世界に早くなじむように語学学習ね。語学学習は、どこの世界も一緒。メイドに絵本でも読んでもらって。二人で手をつないでいれば、お互いのチェックもできるから」

((はい))

「それと、寝る前に、装置を使って、魔力を完全に抜くから」

(死んじゃわないんですか?)

「よく眠れると思うよ」

((……))

「それじゃ、この一年間の目標ね。一つ目、これは多分普通にできると思うけど、歩き回れるようになること、二つ目、魔力操作がうまくできるようになること、三つ目、一歳児のくせにこっちの言葉をべらべらに話せるようになること」

(あの、魔力操作って、魔法を使うためのものですか?)

「うん。昨日も言ったけど、この世界では魔法が使える。だけどね、基礎もできてないのに魔法を使うとろくなことにならない。だから、六歳までは魔法は禁止。その後、ちゃんと先生をつけて教えてあげるから」

((わかりました))

「じゃあ、健康チェックを受けてね。ソフィ、お願い」

「はいな」


 ソフィと呼ばれた銀髪ロングの超絶美人、ソフィリアが優香を抱く。そして、体のスキャンをかける。


「はい、終わり。次は恵理子ちゃん」


 ソフィリアも日本語と第四世界の言葉を使いこなす。

 優香はこの人も転生者だろうかと、あたりをつける。

 ソフィリアは恵理子も同じようにスキャンをかける。


「はい。二人とも健康です」


 二人は、アンヌとサーナに戻される。


「それじゃ、アンヌ、サーナ、お願いね」

「はい、かしこまりました」




 二人は、部屋に戻される。

 ここが二人の部屋なのだろうか。

 二人は、同じベッドの上に寝かされる。

 アンヌは、二人の手をつながせる。


(あ、恵理子さん)

(優香さん)

(不思議ね、手をつなぐと会話ができるって)

(でも、便利だわ。まだ自分たちで手を繋げないのがもどかしいところだけど)

(ところで、恵理子さん、提案なんだけど、私達、双子みたいなものだから、敬語とかやめようよ)

(え、いいんですか?)

(っていうか、前世からさん付けもやめてって言ってたよね)

(えへ。じゃあ、優香、よろしく)

(恵理子、よろしく)

(あ、何か始まるみたい)




 アンヌとサーナではないメイドが本を持ってくる。


「初めまして、チーコと申します。お二人の語学学習を担当させていただきます。今日からしばらく絵本を読みます。繰り返し繰り返し読むので、単語を覚えてください」

(なんて言っているのかしら)

(絵本を持っているってことは、読んでくれるのね、これが語学学習……)

(どこの世界もかわらないのね)

(あれ、これ、知ってる話だわ)

(そうね。絵から言ってはらぺこいもむしね)

(知っている話なら、覚えやすいかも)

(ねえ、あのグレイスって言ってた人、ここの主人っぽいけど、絶対に転生者よね)

(うん、ソフィって呼ばれていた人もね。二人とも日本語しゃべってたし。きっとこの絵本とかも、あの人達が作ってるのよ)

(ってことは、元日本人向けの教育方法ってことだよね)

(じゃあ、やっぱり、私達以外にも転生者はいるんじゃないの?)

(絶対にいるわ。だからきっと)

(真央ちゃん達が来てるかもってことだよね)

(そうよ。絶対に来てるわ。じゃないと、私達がセットだって言う理由がないもの)

(よーし、やる気出てきた。この世界について、あの人、殺し合いがあるなんて怖いこと言っていたけど、でも、頑張って力をつけて、絶対にあの子達を見つけてみせる)

(そうよ。今度こそ、みんなで一緒に暮らす。ずっと一緒に。そのために、頑張ろう)

(おー)


 こうして、二人は意欲的に学習に取り組んだ。


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