精霊の塔の攻略(貴博と真央)
クラリスと真央が両サイドの扉を引くと、中は静まり返ったままだ。
なにせ、塔の中にいた何十ものホーンウルフは焼けこげになって床に倒れているのだ。
「こ、これは……」
シルヴィが驚いているが、クラリスには聞くことがある。
「これらの魔物の死体ですが、どうしたらいいです? 我々では持って帰るわけにもいかないのですが」
冒険者である以上、素材は回収すべきだが、今は供え物を背負っていて持ってはいけない。
「この塔内の魔物の死体は、そのうち消えてしまいます。精霊様の仕業かと思われますが」
「お宝やコインは?」
真央が前世の知識で聞いてしまう。
「何を言っているのです?」
当然のシルヴィの答え。
真央は手ぬぐい越しにかりかりと頭をかいた。
真央がそういう発想になったのも仕方がない。
階段が壁に沿ってつけられており、それが二階に向かっている。
前世にあったゲームにありがちなつくりがそのまま再現されているのだ。
「真央、私が先に行く」
クラリスが先頭に立ち、階段を上がり始める。
シルヴィ、真央という順番でクラリスに続く。
二階に入る前に、クラリスが少しだけ顔をのぞかせてファイアボールを先行させる。
大きな爆発音が響き、一階と同様に二階にいた魔物も戦わずして沈黙した。
三階、四階、五階……同じように、何のトラブルもなく、順調に登っていく。
「あの、こんなに順調に上がれていいのでしょうか」
シルヴィが目を点にして聞いてくる。
「今まではどうされていたのですか?」
「一階一階、魔物を討伐して……」
「そういえば、獣人の皆さん、魔法が苦手なんでしたっけ」
「恥ずかしながら。魔法がこんなに有効だなんて」
シルヴィが感心する。
実際、真央もクラリスも一度も剣を抜いていない。
ポーションすら使っていない。
しかし、順調に、というか何もなく半分、十階まで登ってしまうと、不満の声が出る。
「クラリス、つまらないのです」
クラリスだけでなく、シルヴィも、真央が言うその言葉の意図を理解する。
シルヴィにいたっては、危険が無いならいいじゃないかと思う。
「そうだな、真央、先に行くか?」
クラリスが提案する。
「うん」
十一階へと登る階段は真央が先行していく。
クラリスが最後だ。
十一階に到達する前に、真央が剣を抜いてシルヴィに言う。
「ちょっと待っていてくださいね」
そう言って、真央は十一階に飛び込んだ。
ザシュ、ドゴッ、バシィ……
いくつも攻撃の音が聞こえた後、真央が階段に顔を出す。
「入っていいですよ」
十一階に足を踏み入れると、そこには数十のホーンウルフにホーンベアが倒れていた。
「これを真央が一人で? あの短時間で? ホーンベアもいるのに?」
シルヴィが驚愕する。
「まあ、驚いていないで先に進みますよ」
クラリスが王女の背を押す。
十二階、十三階と進むと、今度はクラリスが真央に声をかける。
「真央、次は私にやらせてくれないか」
「いいのです」
真央は剣をさやに戻して、クラリスに先頭を譲った。
十四階へはクラリスが先行して突入することになる。
「ところで、シルヴィ、これまで何階まで登ったのです?」
「私になってからは、前回の十六階がこれまでの最高到達階です。そこでポーションが切れて降りました」
十三階で立ち話をする真央とシルヴィ。
「なるほど。それでは次は私が行きます」
それを聞いて意気込むクラリスが先に階段を登る。
クラリスが先に十四階に足を踏み入れても結果は同じだった。
「登って来ていいですよ」
と、すぐにクラリスから声がかかる。
「十五階は私なのです」
十五階は真央が制圧する。
十六階にはクラリスが突入した。
しかし、
「真央、ちょっと手伝ってくれ」
と、初めてクラリスから真央に声がかかった。
「どうしたのですか?」
「猫ちゃんきた」
真央がシルヴィを追い越して十六階に入ると、そこには二十頭ほどのホーンタイガーがいた。
「なるほど」
真央が呼ばれた理由を察する。
ホーンタイガーはエルフの国の南の森で戦ったが、少々手ごわい。
しかも、狭いし数も多い。
クラリスは階段下のシルヴィに声をかける。
「シルヴィ、頭を下げていてくださいね。危ないですから」
実際には、戦い方を見るな、と言っている。
クラリスは無詠唱でアイスランスを顕現させ、ホーンタイガーに撃ちこんでは別の個体に剣を向ける。
真央は相変わらず体を動かすのが好きなのか、ホーンタイガーを蹴り飛ばしては剣で切り付けていく。
十六階も二人で簡単に制圧してシルヴィに声をかけた。
「十六階もたやすく……」
シルヴィが転がっている多数のホーンタイガーを見て驚いている。
驚きっぱなしである。
「魔物は下からは来ないと思いますので、次から私と真央が同時に突入して殲滅します。少しずつ魔物のレベルが上がっていますし、油断大敵ですから」
クラリスがそう提案し、シルヴィが了承する。
十七階。
「また猫ちゃんなのです」
「しかし、大きいな」
クラリスは十六階と同じようにアイスランス併用で戦う。
真央はというと、
「これの出番なのです」
と言って、剣をさやに戻し、剣と一緒に腰にかけていた折り畳み式の大鎌を取り出した。
クラリスは、ホーンタイガーの目や口など柔らかそうなところにアイスランスを撃ちこみ、剣で着実に倒して行く。
一方の真央、大鎌の先端をザクリとホーンタイガーの延髄へと、いとも簡単に突き刺して倒していく。
十八階。
クラリスと真央は十八階に入ったかと思うと、再びシルヴィが待つ階段へと戻ってきた。
「あれ、魔物なのです?」
「角がないけど魔物なんじゃないか?」
「初めて見たのです」
「だが、あれ、堅そうだな」
初めてのクラリスと真央の打ち合わせに、シルヴィに緊張感が漂う。
いったい何がいるのか。
「よし、行くのです」
真央とクラリスが十八階に飛び出して行った。
そして、二人は数十のロックリザードと向き合った。
ガキン、ガキン、ガキン……
「やっぱり硬いのです」
ザシュ!
「目には剣が刺さるが、致命傷にはならない。しかも、視覚を奪っても向かってくる。熱か?」
「やっぱり、口から裂くのです」
真央が大鎌をロックリザードの口に向けフルスイングする。
ザシュッ!
口から胸元までが切り裂かれ、ロックリザードはようやく沈黙した。
「真央、悪いが、私がタゲを取るから後は頼む」
「わかったのです」
真央とクラリスは、二人で一体ずつ倒していくことにした。
階段下で待機していたシルヴィ。
一体何と戦っているのかが気になる。
剣や大鎌が魔物とぶつかる音が大きい。
これまでより時間もかかっている。
十七階まで順調に魔物を倒してきた二人が苦戦をしているように、シルヴィには感じられた。
シルヴィがそっと階段から頭をのぞかせた。
すると、シルヴィは目が合った。
目の前のロックリザードと。
ロックリザードは舌をちらりとだし、シルヴィに飛びかかった。
「キャァ!」
わんも「本日10月18日は、私が小説を初めて投稿した日です。二年前の話ですが。いやー。二年もよく続きました。私のつたない小説を読んでくださっている皆様がいる。そのことがとても励みになりました。本当にありがとうございます。今度ともどうぞ、よろしくお願いいたします」
千里「わんも、二周年おめでとー」
わ「千里、ありがとう」
千「これからも私のこと、かわいく書いてね」
わ「(かわいく書いてきたっけっかな?)うん。もちろんだよ」
千「それにしちゃ、私の出番、少ない気が?」
わ「そんなこと無いよ。千里はヒロインなんだから、超かっこいいよ」
千「そ、そうよね。わんも、ありがとう」
わ(これからしばらく貴博と真央編が続きます。どうぞ、皆様、よろしくお願いします。千里ファンの皆様、今少しおまちください)
千「……ジトッ」
わ「ツツー(目そらし)」
桃香「わんもさん、わんもさん」
わ「桃ちゃん、どうしたの?」
桃「わんもさんが初めて投稿したのは二年前の10月15日です」
わ&千「「え?」」
千「じゃあ、二周年記念は三日前だったってこと?」
わ「……」
千「どういうこと?」
…確認中…
わ「ごめんなさい。ガチで勘違いしていました」
千「……」
桃「……」
千「まあいいじゃない。とりあえず二年間は頑張れたってことだから」
わ「あ、ありがとうございます」
わ「読んでくださっている皆様」
千「これからも」
皆「よろしくお願いしまーす」
千「じゃないと、わんもがボケます」
ビシッ!(わんものつっこみ)
ドゴッ!(千里の反撃)




