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参拝の護衛の座を獲得(貴博と真央)

 その合図とともに、第一試合と同じように左右に分かれる真央とクラリス。

 一方のオランとポンゴはステージ中央で背中合わせに構える。

 武器はもっていない。


「素手でいいのですか?」


 真央が正面のオランに声をかける。


「負けたときの言い訳にしたくないだろうから、お前達は実剣を使っていいぞ? なんで木剣なんだ?」

「そうですか」


 真央は木剣をステージに置くことでオランの問いに答えた。

 クラリスも真央に倣う。


「お前ら、なめているだろう」


 オランがそう思うのも当然。

 身長も体重もリーチも、すべてがオランたちに有利なのだ。


 真央とクラリスは、とことことオランとポンゴに近づいて行き、オランたちの間合いの外ギリギリでこぶしを構える。


「私ら二人を引き離す作戦だろう? そうはいかないね」

「そうなのですね。残念です」


 そう言って、真央はオランの間合いへと、無防備に侵入する。

 それを見て、オランは、


「なめてんのか!」


 と、右ストレートを真央に打ち下ろした。


 一方のクラリスも同様だ。

 ポンゴの間合いに入っていく。

 ポンゴは、クラリスに対して右の蹴りを繰り出す。


 真央は、両手をクロスしてそのこぶしを受ける

 クラリスは腰を落とし、左ひじでその蹴りを受ける。


 ドゴッ!


 真央のクロスの上でオランのこぶしが止まっている。

 クラリスの肘の上でポンゴの足が止まっている。


「なるほど。まあまあなのです」


 真央が余裕の発言をかます。


「そうだな。大したことないな。お姉ちゃんのほうが強いのか?」


 クラリスもポンゴをあおる。


 オランとポンゴの全力をいとも簡単に受けきってしまった真央とクラリス。

 その瞬間、会場が静まり返る。


 会場で二人の試合を見ているミーゼルがつぶやく。


「あの、初撃を受けるっての、どうなの?」


 ルイーズがそれに答える。


「ミーゼルだって受けるでしょ」

「まあね」


 その会話に、ギルマスたちは、固まる。

 なんて危ないことをと。


 真央は、一瞬にしてオランの間合いに飛び込む。

 そして、オランの左足に右のミドルキックを叩き込む。

 しかし、効いている様子もなく、オランは左腕を振り下ろしてくる。

 真央はゴロゴロと転がってそれをよける。


 クラリスは、ポンゴの間合いに一歩入り、そして、止まる。

 すると、ポンゴが右のこぶしを打ち下ろしてくる。


 クラリスはそのこぶしをつかむと同時に、バックステップを踏む。

 すると、ポンゴはその勢いのまま、前に引かれて前かがみにバランスを崩し、転びそうになってしまう。

 クラリスは、ポンゴの腕を離して一瞬さらに離れ、再び踏み込む。


「ほら、届く距離になった」


 クラリスは、右のハイキックをポンゴの顔面に叩き込んだ。


 ドゴッ!


「うぎゃ!」


 ポンゴが顔を押さえて転がる。


「真央、こっちの妹の方弱いんだ。相手を変えてくれ」

「そう言うなら、早くやっちゃってもらえます? お姉ちゃんの方、硬いのです」

「わかった。ちょっと待っていろ」


 クラリスは、顔を押さえてごろごろと転がっているポンゴに近づく。


「私な、おっさんに抱きつく趣味はないんだ。だから関節技なんか使わないぞ。だから、早く起き上がってくれると嬉しいんだが」

「貴様」


 ポンゴが顔を腫らせて立ち上がる。


「お姉ちゃん、妹さん、離れちゃったのです」


 真央がオランに声をかける。


「私がお前を押さえておけば問題ないだろう?」

「そうですねぇ。押さえておけたらなのです」


 真央は、ステップを踏んでオランの間合いに入る。


「ちょこまかと!」


 オランが両腕を振り回すが真央に当たらない。


「それじゃ、ちょっと席を外すのです」


 と、真央は、オランの前からフッと、消えてしまう。

 そして、真央は飛び上がり、クラリスが対峙しているポンゴの後頭部に後ろ回し蹴りを叩き込んだ。


 ドゴン!


「グエへ」


 ポンゴが後頭部を押さえて前のめりになる。

 それを見逃すクラリスではなく、瞬間的に踏み込んでポンゴの体重がかかった膝に思い切りミドルを入れる。


 バキィ!


 ポンゴの膝が砕ける。


 ポンゴは頭と膝を押さえてうずくまってしまう。

 それを見て、真央がオランに声をかける。


「お姉ちゃん、妹さん大変そうなのです。棄権してはどうかと思うのです」

「貴様ら、許さん。私一人でも貴様らごときやれるわ!」


 と、オランが突進してきた。


 真央とクラリスは二対一の状況を作った。

 そう焦ることもなく、どちらかがタゲを取りつつ、ヒットアンドアウェイを繰り返す。

 しかも、膝狙いで。

 会場から見ても、地味な戦い。


 そして、ついに、オランが崩れ落ちた。

 それを見て審判が手を上げる。


「勝者! 真央! クラリス!」




 会場が悲鳴に包まれる。

 一方で、手をつなぎ合って飛び跳ね、喜びを表現するギルマスたち。

 ミーゼル達は、当然、と、冷静な顔を保っている。


 ミーゼルは、全員に合図をする。

 換金してとっととずらかるよ、と。


 セレンとレティは、喜びに沸くギルマスとメルロ、キャンベルの襟をつかんで引きずっていった。


 そして、換金所で換金し、急いでギルドへと戻った。

 もちろん、真央とクラリスにはそうすることは伝えてある。




「まさにジャイアントキリング! 西ギルドの真央選手、クラリス選手の優勝です。明後日行われる王女の精霊参りのお付きは、真央選手、そしてクラリス選手! 皆さん、大きな拍手を!」


 と、呼びかけがあっても、ほとんどの観客からは悲鳴が上がるだけだ。


「それじゃ、皆さん、ごきげんよう。また来年お会いしましょう」




 真央とクラリスが控室に戻ると、係の者がやってきた。


「真央様、クラリス様。それでは明後日の説明をさせていただきたく思いますので、王城へお越しください」

「はい、なのです」


 真央とクラリスは、係の者に連れられて闘技場を出て、馬車で王城へと向かった。




 王城に入ると、応接室に通され、ソファを勧められる。

 テーブルを挟んで両側にあるソファの左側に、真央とクラリスは座って待つことにした。


 しばらくすると、応接室に国王が入って来た。

 そして、王妃、王女らしき女性も続いた。


 真央とクラリスは一応立って国王たちを迎える。

 そして、国王に座るように勧められて再び腰を下ろした。


「今日の戦い、見事であった」


 国王が二人に声をかけた。


「ありがとうございます」

「なのです」

「明後日行われる参拝について、王女、シルヴィスの護衛をよろしく頼む」

「はい。承知いたしました。必ずやご期待に応えて見せましょう」


 ここは、クラリスがそのように答えた。


「ところで、そなたらはアンブローシア帝国の出身か?」

「はいそうです。アンブローシアの冒険者です」


 クラリスは王女であるが、それは言わない。


「そうか、人間族にも強い冒険者がいるのだな」

「あの、ライムさんとネーブルさんの膝はどうなのです?」


 真央がつい、聞いてしまう。


「心配いらぬ。我が国にも優秀な治癒魔法使いはいる」

「よかったのです」

「それでは、後はシルヴィスと話をつめてくれ」


 そう言って、国王と王妃は退室していった。


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