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VS騎士団長と副団長(貴博と真央)

「第一試合のお二組、そろそろ会場入りしてください」


 係の者が控室にやってきて、準備を進めるように伝えてくる。


「ネーブル行くか」

「はい」

「真央、行こう」

「はいです」




 真央達にお呼びがかかる前、闘技場。


「それでは、今年の収穫祭を始めたいと思います。それでは国王様、開催の挨拶を」


 闘技場では収穫祭開始のアナウンスがかかる。


「余が国王である」


 闘技場のテラスに立つ国王。猫人族だ。


「今年の農業は豊作だったと聞いている。是非、今年こそ精霊様にお目にかからねばならん。その護衛を決める予選会だ。よい戦いを期待する。一方で、収穫祭は今日より三日間続く。みな、豊作に感謝し、騒いでくれ」

「「「うおー!」」」


 会場が盛り上がってくる。


「それでは、予選会第一試合を行います。ちなみに、昨年優勝の東ギルド、オラン選手とポンゴ選手はシードで、決勝戦のみとなります。皆さま、準備はよろしいでしょうか。賭け忘れはありませんか? いいですね。それでは第一試合を開始します。まずは、王国第二騎士団騎士団長ライム選手、そして副団長ネーブル選手です」

「「「うおー!」」」


 大歓声が上がる。


「ちなみに、このお二人の賭けの倍率は五倍となっています。比較的低い数字です。それだけ人気があるということ」


 ライムとネーブルが闘技場の中心に設置された一辺二十メートルほどのステージに登場すると、さらに歓声が上がる。


「皆さま、対するは西ギルドから真央選手とクラリス選手です。ちなみに倍率は前代未聞の百倍。皆さん賭けましたか? 賭けていませんね。だからこの数字ですよね?」


 会場から笑いが起こる。

 ミーゼルは腹黒く笑う。

 見てなさいと。


 真央とクラリスがステージに上がっても歓声は上がらない。

 しかし、


「真央ー! クラリスー!」

「頑張れー!」

「負けるなー!」


 ギルマス、そしてメルロとキャンベルは必死だ。なにせ、金貨一枚の借金をしているのだ。

 この必死の応援にも笑いが起こる。


「すみませんでした。一部、賭けた人がいるようですね」


 アナウンスが闘技場に笑いを誘う。

 ミーゼルはギルマスに言う。


「安心して見ていなさいって」

「そうか、そうなのか?」


 ギルマスは、金貨一枚の借金に顔が青くなっている。


「大丈夫よ」




 ステージの上では審判が両者に説明を行う。


「基本、何でもありだが、相手を殺すことは反則だ。死にそうになった相手に、戦意を無くした相手に追い打ちをかけてはいけない。それに、そういう状況になったら、こっちで止めるから。わかったね」

「えっと、確認したいのです」


 真央が審判に問う。


「相手を倒したら勝ち。外に突き落としたら?」

「外に出されても負けだ。だが、そんな戦いを誰が望む?」

「なるほど。わかったのです。治癒魔導士は用意されているのですか?」

「もちろんんだ」


 そのやり取りに、ライムが笑う。


「それは自分達の心配かな。今から降参したらどうだい?」

「どこまで治してもらえるのかの確認です。貴方達が」


 ライムとネーブルの顔から表情が消える。


「それじゃいいかね。離れて」


 真央とクラリスは中央から離れ、木剣をかまえる。


「どこまで馬鹿にするのか」

「隊長、思い知らせましょう」


 ネーブルが前、ライムがその左後ろで構える。

 当然のように実剣を握っている。


 審判が中央から離れる。

 そして、手を上げ、それを振り下ろすと同時に宣言する。


「はじめ!」


 その合図とともに、真央とクラリスはライムとネーブルの左右に分かれるように瞬時に移動する。


「は、速い」

「ネーブル、右、私が左だ!」

「はい」


 真央とクラリスが二人を挟むように位置し、真央がネーブルと、クラリスがライムと向き合う。


「それじゃ、行きます。三、二、一、スタート!」


 と、真央が合図をした瞬間、二人がダッシュする。

 ライムもネーブルも剣をかまえて迎え撃つ。

 しかし、


 シュン!


 ネーブルの視界から真央が消えた。

 ライムの視界からクラリスが消えた。


 次の瞬間、


 ドゴッ! ドゴッ!


 ライムの左ひざが後ろから木剣でたたきつけられた。

 同様にネーブルの左ひざも。

 後ろ向きに崩れ落ちるネーブルとライム。


 会場が静まり返る。


 ステージの上では、先ほどと変わって、ネーブルの前にクラリス、ライムの前に真央が立つ。

 二人とももう木剣はかまえていない。肩に担いでいる。


「審判。もう無理だと思うが」


 クラリスが審判に声をかける。


 ライムもネーブルも立つことが出来ない。

 二人とも左ひざを砕かれているのだ。


 審判は、ネーブルを、そしてライムを確認し、両手を上げた。


「勝者、真央とクラリス!」


 あまりに早い決着に、会場はまだ静まり返っている。


「やった!」

「真央ー!」

「クラリスー!」


 よって、この三人の叫び声はよく響く。


 真央とクラリスがその声を頼りに観客席を見ると、ギルマスたちが手を振っていた。

 その隣のミーゼル達は、そっとピースサインを出すだけだ。


 しばらくして、


「「「うぉー!」」」


 と、歓声が上がり、投票券が宙を舞う。




 闘技場では、アナウンスがかかる。


「それでは、前回優勝者、東ギルドのオラン選手、ポンゴ選手の入場です」


 すると、会場から足を踏み鳴らす音が響く。


 ドン、ドン、ドン、ドン、ドン、ドン……


 その音に合わせるように、オランとポンゴがステージに上がってくる。

 二人が手を振ると会場が割れるような歓声に包まれる。


「「「うぉー!」」」


「さて、オラン選手とポンゴ選手がステージに上がりました。今回の倍率は二倍もありません。完全なる大本命です。皆さん、大勝ちは期待できませんが、今日はいつもよりちょっとだけおいしいお酒を飲めるのではないでしょうか」




 ステージ上では、審判が真ん中に歩き出る。


「それじゃ、第二試合を始める。ルールは同じだ。いいね」


 真央とクラリスはうなずく。


「わかってるって。すぐ終わるからよ」


 オランが審判に早くやれとせかす。


 審判が離れる。

 真央とクラリスも中央から下がる。

 だが、オランもポンゴも中央から移動しない。

 しかし、審判は合図をかける。


「それでは、始め!」

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