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メルロとキャンベル再び(貴博と真央)

 テーブルにエールを運んでいた受付嬢からジョッキを一つもらう真央。

 真央はそのジョッキをギルマスへ持って行き、渡す。


「キュロちゃんの快気祝いをしなければいけません。ギルマス、いいですか」


 ギルマスは、よくわかっていない状況だが、ジョッキを受け取ってしまう。

 そして、放課後木剣クラブの面々、咆哮や牙狼の面々、そして受付嬢までジョッキを持っていることを確認する。

 ちなみに真央は果実水だ。

 真央はジョッキを掲げて声を上げる。


「キュロちゃん、回復おめでとうなのです。それでは、カンパーイ、なのです」

「「「「カンパーイ!」」」」


 さらに、真央は続ける。


「ギルマス、ごちそうさまなのです!」

「「「「ごちそうさまでーす」」」」


 あはははは

 あはははははは




 ミーゼルがつぶやく。


「真央って本当に楽しそうだわ」

「そうね。真央を見てるとこっちまで楽しくなっちゃう」


 ルイーズが同意し、リルとシーナがうんうんと頷く。


 一方でギルマスは未だ固まっている。

 それを溶かしたのはキュロ。


「ねえお母さん。私も果実水飲んでいい?」


 ギルマスはキュロを降ろし、頭をなでる。


「ああ、いいぞ。怪我が治って本当によかった」

「うん」


 また、近くの食堂から食事が運び込まれる。


「お母さん、食べていい?」

「ああいいぞ」




 ミーゼルとルイーズが咆哮に絡む。


「あんたら、プラチナランクパーティなんですって?」

「お、そうだぞ? それがどうした?」

「ちょっと、手合わせしなさいよ」

「はあ? お前らみたいなひよっこの相手をしろと?」

「私達もプラチナランクよ?」

「お前らがか? まあいい、そう言うなら相手をしてやる。ただし、明日な。今日はせっかくのおごりなんだ、まだ飲み食いしたいからな」

「それは同感ね」


 と、咆哮のリーダーもミーゼルも肉をかじってはエールを飲み干す。


「「おかわり!」」




 セレンとレティが牙狼のリーダーと話す。


「俺らはな、個々の能力も高いが連携して獲物をしとめるのを得意としているんだ」

「へー。そうなの。でも、五人でしかも、なに? 魔導士いないの?」

「獣人はもともと魔法が苦手なんだよ。でも、五人が連携すれば接近戦では負けないぜ」

「そう。じゃあ、私一人で相手できそうね」


 レティがあおる。


「ちょっとエルフで魔法が使えるからって言ったって、俺らは別々に動くと捕らえられないぜ?」

「やってみないとわからないじゃない。それに、エルフなめてるの?」

「それにな、知っているぜ、魔力量と胸の大きさは比例するってな。アルカンドラの聖女って呼ばれている奴の話だから信憑性があるぜ」

「そんなの嘘に決まっているでしょ。何ならやる?」

「私にやらせろよ。レティ」


 エルフ胸のブラックドラゴン、セレンが参戦する。


「ダメよ。貴方にやらせたら街が無くなるじゃない」

「どっちでもいいぜ。魔法を撃つ前にその喉笛、食いちぎるからな」

「「やれるものならやってみなさい」」

「でも明日な」

「「そうね、明日ね」」




 真央、リル、シーナはキュロと話をする。


「キュロちゃん、そのお耳もしっぽもかわいいのです」

「ありがとうございます。お母さんとそっくりってよく言われて、自慢の耳としっぽなの」


 ギルマスが少し照れる。


「キュロちゃんはお歌が好きなんだよね」


 シーナが話を振る。


「うん。いつかみんなに聞いてもらえるようにお歌の練習を頑張っているの」

「そうなんだ。ちょっとお姉さん達、聞きたいなー」


 リルがキュロにお願いする。


「えー、ここで? ダメだよ。お母さんがここは遊ぶところじゃないからって」

「遊ぶところじゃないかもだけど、今はみんな、お酒を飲んでいるしさ。遊んでいるようなものだよ」

「お母さん?」


 キュロはギルマスの顔を覗き込む。


「あなたが歌いたいならいいわ。今ならね」

「ほんと!? じゃあねー」


 キュロは立ち上がって、歌声を上げる。


 ラー、ラララー、ララララー、ラララー


 ゆっくりとした、美しい旋律が流れる。

 冒険者達も張り合うのをやめ、その声に惹かれ、聞き入る。




 そこへ、品のあるスタイルの良い女性が二人現れた。


 一人は虎人族。

 白のロングのプリーツスカートに水色のニットのシャツ。

 シャツはボディラインに張り付き、そのスタイルの良さを強調している。

 また、その上から白のジャケットを羽織っており、その品の良さをうかがわせる。

 同じように狼人族の女性。

 こちらは逆の色遣いだ。

 水色のプリーツスカートにジャケット。

 そして白のニットのシャツ。

 同じように、ニットのラインが胸を強調している。


 咆哮のメンバーも牙狼のメンバーもその女性達に目を奪われる。

 咆哮のリーダーは、虎人族の女性に声をかけた。


「そちらのお嬢さん、こっちに来て一緒に酒でも飲みませんか。ギルマスのおごりなんです」


 虎人族の女性は、にこやかな笑顔をリーダーに向け、つかつかと歩いて近づいて行く。

 そして、プリーツスカートを半分めくると、


 ゲイン!


 座っているリーダーの顔を蹴とばした。


「お前はパーティメンバーの顔を覚えてないのか!」


 その様子を見た牙狼のリーダーは焦る。

 もしかしてと。


 牙狼のリーダーは鼻先を狼人族の女性に向け、クンクンとにおいを嗅ぐ。


「お前は、においで人を判断するのか!」


 ゲイン!


 同じように、キャンベルに蹴とばされる。


 咆哮のリーダーは顔をさすりながら、


「お前、えっと、メルロ?」


 メルロが青筋を浮かべる。


「お前、そんなに胸なかっただろう。腰の張りも……」


 ゲイン!


 メルロはもう一度蹴とばす。


 牙狼のリーダーはそれをみて、同じ轍を踏まないように言葉を選ぶ。


「お前、キャンベル、きれいだったんだな」


 ゲイン!


 牙狼のリーダーも蹴とばされる。


「だったとはなんだ、だったとは」


 両パーティメンバーは、気になるのかちらちらとメルロやキャンベルを見つつも、なるべく視線を合わせないようにと視線をそらせた。


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