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「セーラがセーラー?」by桃香(千里と桃香)

 千里はフォークを口にくわえてフリフリしながら聞く。正直お行儀が悪い。

 セーラはピンときた、という顔をする。


「千里、桃香、あなた方は、キキちゃんとララちゃんとでかもしれませんが、ホーンベアを六頭も一度に倒せるほどお強いのですよね?」

「ん?」

「それに、お二人は、どこにいるかもわからない人を探している」

「うん」

「こういうのはどうでしょう。お二人は、私のお友達になってください。その代わり、私はあなた方の求める情報を集めて提供します。王族は情報を集めるのも得意なのですよ? やみくもに歩いても、見つからないこともすれ違うこともあると思いますわ」

「うーん」


 千里が悩む。桃香は千里が何を考えているかを理解できているし、どうせ同意するので何も言わない。


「何を悩んでいらっしゃるのですか?」

「それ、私達だけじゃん。メリットがあるの」

「え? 私のお友達になってもらうっていう……」

「あのさ、セーラ。私達はもう友達なの。だから、情報はもらいたいけど、それに対する対価が何もないの」


 はっ! という顔をするセーラ。そして、ほろりと涙を流す。


「セーラ?」

「あの、私のように王女をしていますと、友達なんて言ってくださる方はいらっしゃらないのです。なので、私としては、一世一代の覚悟で友達になってほしいとお願いしたつもりでした。なのに、あなた方はこうもあっさりと……」

「ねえセーラ。セーラは私達を信用してくれる? 信頼してくれる?」

「ええ、もちろんですわ。私のことを友達と言ってくださったお二人を信用、信頼せず、誰を信じるというのですか」

「私達は情報が欲しい。しかも広範囲の。だから、だからセーラに情報を集めてもらいたい、探し人の情報を。その代わり、その情報が入るまで、私達はあなたのお付きをするわ。あなたと一緒に熊だろうと盗賊だろうと倒しに行く。どう? あなたの横のポストをくれないかしら」

「姫!」


 当然、異論が出る。

 セーラは手を挙げて騎士を黙らせる。


「私はこの二人を信じます。この二人に背を預けます。この決定はセーランジェ・カイナーズ自らがしました。異論は許しません。よろしいですね」

「「「はっ」」」

「千里、桃香。これでこれから一緒にいられます」

「ふふ。よろしくね、セーラ」

「よろしくお願いします。セーラさん」

「はい。よろしくお願いします。千里、桃香」


 ふふふふ

 あははは


「ところで、一緒にいられることになったので早速ですが、今日、キキちゃんとララちゃんと一緒に寝ても?」

「あはははは。いいんじゃない。みんなでくるまって寝よう」

「やった! うれしいです」

「じゃあ、夜中は、恋ばなだね」

「恋ばな?」

「女子会といえば、恋ばなじゃないの?」

「王女様にも恋をした経験くらいありますよね」

「え? ええ? そ、それを話すのですか?」


 セーラは顔を真っ赤にする。


「あー、あるんだ」

「セーラさん、かわいいです」

「そ、そんな、お二人にだって!」

「私達、十五年間ずっと、海に向かってバカヤローと」

「はい。つらい日々でした」

「でも、千里さんはダメンズにすぐつかまりそうになるんです」

「なにをー、桃ちゃんだって、エセミュージシャンにつかまってたじゃん」

「いはいいはいれふ、ほっへ、ほっへはほへる」


 千里は桃香のほっぺをつねって余計なことを言わないようにと必死になる。


「あはははは」


 それを見て、セーラが笑う。


「おかしいですわ、お二人、本当に仲がよろしいのですね」

「何言ってるの、セーラだって今晩、恋ばなを共有するんだからね! ダメなやつ」

「そうですよ、お姫様とはいえ、ダメなやつはあるはずです」

「セーラ、婚約者はいるの?」

「え、まだ、いませんが」

「ほら、失敗してるんじゃん」

「な、失敗じゃないです。私は王女です。行先はいっぱいあります! まだ決まっていないだけです」

「よーし、そのあたり、お姉さんが聞いてあげよう。好みのタイプから」

「私の方が年上ですー」


 あははははは。




 真夜中。キキとララにくるまる三人。


「あの、どのような方を探していらっしゃるのですか?」

「それが、どこにいるのかわからないし、どんな容姿をしているかもわからないの。そもそも、本当にいるのかも」

「それ、本に出てくる登場人物を探すような話ですよね。難しいですよね」

「そうなの。ただし、多分だけど、ものすごく強い。だから、きっと目立つ。目立っていればだけど」


 桃香がうんうんとうなずく。なぜなら、自分達と同じように鍛えられているだろうから。


「性別は、男が一人、女性が三人。どういう組み合わせでいるのか、単独でいるのかすらわからないわ」

「それが、この世界中のどこにいるかわからないと。隣の大陸にいるかその向こうかもわからない。諜報員に隠させるけど、名前は?」

「今は別の名前を名乗っているかもしれないけど、男がタカヒロ・クサナギ、女性が、マオ・イシカワ、エリコ・ササキ、ユウカ・イチノセ。本人達がその名前を聞けば、すぐに気づくと思うわ、私達が探しているって」

「わかった。その名前を探らさせるわ」

「おねがい。どうしても会いたい人達なの」

「あなた方二人を私のそばに足止めさせる代わりに、私は目を広げます。必ずや見つけて見せましょう」




 翌朝

 トントントン


「あの、姫様、朝になります」

「ふわーあ。よく寝ちゃった」

「千里、桃香、朝ですわよ」

「むにゃ、センセ……」

「きゃっ、突然なんですの、千里!」

「ん? あ、おはよ、セーラ。どうしたの?」

「突然千里が私のことをセンセって呼んで抱き着いたのです」


 千里が顔を赤くする。


「あははは、ごめんね、セーラ。寝ぼけてたみたい」

「桃香も起きてくださいまし」

「うーん。はーい」


 トントントン


「あの、姫様、入ってもよろしいですか?


 女性の声だ。


「千里、桃香、よろしくて?」


 二人はうなずく。


「いいですわ」

「失礼いたします」


 メイドが四人入って来た」


「姫様、お着替えをお持ちしました。その恰好でお部屋を出られては困りますので」

「千里、桃香、ここで着替えてもいい?」

「いいわよ。私達も着替えるし」


 セーラは、メイドに騎士服を着せられ、髪を整えられる。

 千里と桃香は、そんなことは気にせず、着替えていく。


「あの、千里、桃香、コートの下は変わった服を着ているのですね」


 千里と桃香が着ているのはセーラー服だ。


「うん。師匠達が、戦闘服はこれだって、私達にはよくわからないことを言って、これを着させるんだよね。っていうか、これしか用意してくれなくってさ」


 当然、ラミとルミだ。バニー達パールはバニースーツを愛用していた。さすがにそれはお断りした。


「なんだかかわいいですわ」

「着てみる? 桃ちゃんのは小さいと思うから私のになるけど」

「セーラがセーラー?」


 という、桃香のつぶやきは聞こえていても全力で無視する。


「いいのですか? ですが、その短いスカート、馬に乗るときとか戦闘の時とか大丈夫なのですか?」

「大丈夫。履いているから」


 と、千里はスカートをバサーっとめくり、ペチパンツを見せる。


「では、それもお借りしますわ。ミシル、王都に戻ったら作ってもらってください」

「あ、あの、セーランジェ様、それ、キザクラ商会で販売している服ではないでしょうか」

「え? 市販されているのですか?」


 千里は思う。まあ、売ってなければ手に入らないよな、と。


「王都に戻ったら、その商会へ行きます。お願いします」

「承知しました」


(桃)「お願いです。拾わないでください。単なるつぶやきです。タイトルにしないでください」

(千)「もーもちゃんの、くろれきしー」

(桃)「いやぁー」

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