表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

410/444

再会(優香と恵理子)

「フィロ、このままドラゴン族さん達と飲み続けていいかしら?」

「ええ、構いません」

「ありがとう」


 優香と恵理子は立ち上がり、リョクレイ達に向かって頭を下げる。


「「サザンナイトの時も、フィッシャーの時は、助けてくれてありがとう」」


 リョクレイは少しほほを染めて視線を逸らす。


「やめてほしい。族長に従っただけだ。こちらこそ、族長とリピーを助けてくれたことを感謝している」


 リョクレイはそう言うと立ち上がり、優香と恵理子に頭を下げた。

 残りのドラゴン族もそれに習う。


「優香、恵理子、お互いさまでいいか? 我らは仲間ということでいいか?」


 ネフェリの確認に、優香と恵理子は視線を合わせ、


「「ダメ」」


 と言った。


「なぜ?」


 ネフェリが戸惑っていると、恵理子が笑って言う。


「家族だから」

「あは」


 ネフェリが素で笑ってしまう。


「そうよ。家族の家族は家族なのよ」


 と、優香も念を押す。


「ということは、その千里と桃香というのも優香と恵理子の家族なら、みな家族でいいのだな」

「ええ。そうよ」

「ということで、リョクレイさん。私達も家族ってことで」

「さんも敬語もいらない。家族なのだろう、優香」

「よろしく。リョクレイ」


 その光景を見ていたフィロは思う。

 なんて恐ろしい人たち。

 しかし、逆に考えれば、こんなに安全な場所もないか。

 と。

 さらに、ついでに思う。

 明日から騎士服を脱ごう。

 と。


 宴会は夜遅くまで続いた。




 翌朝。


「フィロさん、その恰好……」


 優香と恵理子がフィロの変化に気づく。


「あの、私にもさん付けはやめてほしいのです。皆様の自治領の代官風情ですので。それと、この地が安全であることがわかったので、剣を捨てました。今日からは、普通に代官としての仕事に努めます」


 そう言ったフィロはソフィローズを着ている。


「似合っているわ。ソフィローズでしょ」

「はい。仕事着として、品もあるし着やすいですし、最高です」

「フィロ、それ、私達にも支給しろ。衣食住の衣も保証してくれるのだろう?」


 恵理子とフィロの会話に割って入ったリョクレイが、フィロに要求する。


「わかりました。後でキザクラ商会へ行きましょう」


 よしっ、と、こぶしを握るリョクレイ。

 そして、緑ドラゴン族。


「それじゃ、私達は行くわね」

「後のことはよろしく」


 優香と恵理子がフィロとリョクレイに別れを告げる。


「承りました」

「ルビーによろしくな」




 優香たちは、フィロとリョクレイ達と別れ、森へと向かった。

 

「タロ、ジロ、ヨーゼフにラッシー、荷物を持ってくれてありがとうね」

「「ばふ」」

「「わふ」」


 森を通るのも四度目ともなればなれたもので、途中の食料調達も野営もすべてが順調にすすむ。


 クサナギ一行は何日かをかけて森を抜け、山肌を登っていく。


「寒い」


 恵理子が身震いをする。


「もうすぐ山頂は雪が降るって言っていたものね」

「今日中に山頂を越えてしまいましょう」


 一行は、ワイバーンを刺激しないように気配を最小限にして登っていく。


 そうして山頂。


「あれ、ルビーさん、いないね」

「いつもここにいたのに」


 優香と恵理子が首をかしげる。

 緑ドラゴン族のことを相談したかったのに、と。


 一方、ネフェリが気づく。


「下に降りたみたいだな」

「もしかして、千里ちゃん達と?」

「可能性はある」

「じゃあ、急ぎましょうか」

 



 数日して、優香と恵理子達クサナギは屋敷にまでたどり着いた。

 時間はすでに夕方を過ぎて暗くなっている。

 だが、あとちょっとと思ったら、移動せずにはいられなかった。


「あれ、畑が無くなってる。しかも、訓練場みたいにまっ平に」

「そうね。千里ちゃん達がやったのかしら」

「まあいいわ。行きましょう。屋敷に明かりがついてるし」


 優香と恵理子は、走る。


 そして、ドアノッカーをトントントン、と鳴らす。




 ドタドタドタドタ


 廊下を走る音。

 きっと、千里ちゃんと桃ちゃんだ。

 そう期待して優香と恵理子は、玄関前に立って待つ。

 自分の家でもないので勝手に入るわけにはいかない。

 そこは我慢。

 しかし、心が躍る。

 やっと会える。


 そしてついに、ドアが開く。


「優香さん!」

「恵理子さん!」


 金髪の少女が優香に、ショッキングピンクの少女が恵理子に抱き着いた。


「千里ちゃん!」

「桃ちゃん!」


 優香と恵理子もそれぞれ千里と桃香を抱きしめる。


「わーん、優香さん!」

「うわーん、恵理子さん!」


 泣き出す千里と桃香に、優香と恵理子は、感動をよそに、二人に物申す。


「あなた達、びしょびしょじゃない」

「だって、だって」

「お風呂に入っていたんです……」


 千里も桃香もタオル一枚だ。

 しかも、千里達が走ってきた廊下を見れば、モップをもって床掃除をしているメイドさん達。

 そして、近づいてくるメイドさんが四人。


「優香様、恵理子様、お久しぶりです」

「優香様、恵理子様、おかえりなさいませ」


 と、頭を下げるのはアンヌとサーナ。


「アンヌさん、サーナさん。一年ぶり?」

「もうちょっとですけどね」


 そしてモップを持ったもう二人のメイド。


「メイメイです。千里様と桃香様のお世話係をしております」

「同じくシャオリンです。感動の場面で申し訳ないのですが、痴女二人をお風呂に戻させていただきます」


 そう言って、メイメイとシャオリンは千里と桃香を優香と恵理子から引きはがし、抱きかかえて風呂へと連れて行った。


「優香様、恵理子様。千里様と桃香様のせいでびしょびしょに。どうです? 一緒にお風呂に入られます? その間にお食事を用意させていただきますが」

「入れたっけ? こんなに大所帯で」

「いま、千里様達の皆様が入っておいでですが、四十人くらい、何ともないです」

「お二人がご家族を増やされるので、増築しておきました。露天風呂もあります」

「それじゃ、お風呂をいただこうかしら」

「お着換えも用意しておきます」




「せっかく優香さんと恵理子さんに会えたのに、メイメイとシャオリンめ」


 千里は風呂に浸かりながら愚痴る。

 せっかくの感動の場面だったのに、と。


「仕方ないですよ。あのままじゃ風邪をひきますって」

「桃ちゃんは引きはがされてよかったの?」

「よくないですけど、でも、えっと、嬉しいです。会えました」


 桃香が湯に浸かりながら涙を流す。


「よし、出ようか。出てもう一回抱き着こう」


 ざばっと立ち上がり、風呂の入口へと向かう千里と桃香。


 しかし、入口の扉を開けたのは千里でも桃香でもなく。


「千里ちゃん!」


 優香だった。


「優香さん?」

「千里ちゃん、見た目が全然違っちゃって」

「優香さん!」


 一糸まとわぬ千里がタオル一枚の優香に抱き着く。


「優香さんだって。こんな美人さんに」


 聞いている他のメンバーは、優香と千里が前世の姿と比較しているとは思っていない。

 しかも、最後の記憶はそれぞれ九十歳代のおばあちゃんだ。


「桃ちゃん」


 恵理子がその脇から顔を出す。


「恵理子さん!」


 桃香も恵理子に抱き着く。もちろん何も羽織っていない。


「桃ちゃん、相変わらず……」

「どこ見てるんですか!」

「あはははは。ごめん。桃ちゃん、すごくかわいいわ」

「恵理子さんもきれいです」

「千里ちゃん、桃ちゃん、もうちょっと浸からない?」

「「はい!」」


「優香様、恵理子様、寒い」


 相変わらず、こういう時に発言するのは現在素っ裸のリーシャ。


「あ、ごめん。みんなで入りましょう」

「千里ちゃん、桃ちゃん、うちの家族も一緒に入るけどいいわよね?」

「もちろん!」


 クサナギが二十四名。

 ゼットが二十名。

 合わせて四十四名がそろってお湯に浸かった。


「千里ちゃん」

「優香さん」

「桃ちゃん」

「恵理子さん」


 風呂に浸かりながら手をつないで輪になる四人。

 お互いの名前を呼び合う。


「千里ちゃん」

「優香さん」

「桃ちゃん」

「恵理子さん……う、うう、うわーん!」


 桃香が感情を抑えきれず、恵理子に抱き着く。


「恵理子さん! 恵理子さん! 恵理子さん! ……」


 恵理子に抱き着いたまま、恵理子の名前を連呼して涙を流す桃香。

 それを見て、千里も優香に寄りそう。


「私も!」


 そう言って、千里は優香に抱き着いた。

 優香も千里を抱きしめ返す。


「優香さん」

「千里ちゃん。探してくれてありがとう」

「優香さん……うう、うわーん! 会えた、会えたよー」


「恵理子さん、私、私……寂しかったんです……」

「ごめんね、桃ちゃん。それから、ありがとう」


 恵理子は桃香を抱きしめながら、髪をなで続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ