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陰謀(優香と恵理子)

「リーシャ!」


 優香が再びリーシャをたしなめるが、サーバルは気にしない。


「そちらの方は猫人族では?」

「まあ、そうなのですが。私達、家族を探しているというのもあるのですが、ある人から秘石も六個集めるようにと、予言めいたことを言われていて、それで……」


 優香は慌ててリーシャの正体から話を戻す。


「何なんですかその予言って」

「その人が言うには、世界が滅びないようにするために、必要らしいです」

「「世界が滅びる?」」


 サーバルとシャミルが驚きの声をそろえる。


「まあ、予言みたいなものなので、本当かどうかも怪しいものなんですけど」

「世界の救済に我が娘がかかわると?」

「ですから、怪しい話だと」

「六人の勇者と六つの秘石が集まった時、試練が訪れるのです」


 リーシャが横から口を挟んで力説する。


「その六人が、お二人とクサナギゼットの二人と、残り二人だということですか?」


 恵理子がリーシャの行動にぽかんと口をあけているので仕方なく、優香が話を進める。


「まあ、そうらしいんですけど。試練って言われてもピンとこないというか……」

「娘がついていった相手も勇者だと……?」


 サーバルが千里と桃香も勇者なのかと声にする。

 が、シャミルが否定する。


「あなた、違いますわ。ミケリナの手紙には女神様方と」

「「ブフッ!」」


 優香と恵理子が思わず吹き出してしまう。

 千里ちゃんと桃ちゃん、女神かー。

 ドラゴン族を従えし勇者とどっちが痛いかなー。


「そうだった、女神様と勇者様。どっちがすごいのか」

「どっちもすごい称号ですわ」

「うちのマオは聖女ともよばれているので……」


 バシン!


 顔を乗り出して恵理子の称号を自慢しようとしたリーシャがはたかれる。

 おでこを押さえてしゃがみこむリーシャ。


「すみません。何でもありません」


 恵理子がきょとんとした猫人族夫婦に頭をさげる。


「それにしても、女神様、勇者様、聖女様。どれもすごい称号を」


 チッ、聞いていたか、と恵理子は苦い顔をする。


「皆さんが勝手に呼んでいるだけです。私達は単なる冒険者ですから」

「ですが、お二人の話ですと、勇者様方は六人と。ということは、あと二人いるのですね?」


 と、確認を取りつつサーバルとシャミルがワクワクし始める。

 だが、間違っても勇者はこの二人ではない。

 確認はしていないがおそらく貴博と真央だ。

 なので、優香は二人を無視して話を進める。


「はい。その二人については、全く情報がなくて。ですのでとりあえずクサナギゼットと合流しようと動いているのです」

「ねえあなた、私も冒険に出ないとダメかしら」

「私も出ないとダメか?」

「あなたは領主でしょう。ここに残りなさい」

「いや、お前だけずるいぞ。私も冒険がしたいのだ」

「「ゴホン」」

「あ、失礼」


 優香と恵理子のわざとらしい咳払いを受け、サーバルとシャミルが取り乱したことに頭を下げる。


「もしこの世界に何かあっても、私達も千里と桃香も家族を守りますから。お二人の娘さんも守りますから」

「うむ。よろしく頼みます。それと、もう一つ、娘に伝えてほしいのですが」

「何でしょう」

「冒険譚を楽しみにしていると」

「そうよね。あの子も冒険をしたがっていたもの」

「「……」」


 冒険ではなく、何もないのが一番なのだが。

 と思う優香と恵理子。


「ああ、領主という立場がなければ、私も冒険に出たい」


 あ、話が戻った。優香は思う。


「私も冒険に出て、伝説の白蛇と戦って……」


 ブルッ!


 シャミルが震えた。

 恵理子がパイタンの頭をなでなでしてなだめている。


「伝説の白蛇が何かわかりませんが、危ないことはしないに越したことはないと思いますよ」

「そ、そうね。伝説のカナヘビくらいにしておくわ。裏庭に出るの」


 おほほほほ、とわざとらしく笑うシャミル。

 その額には冷や汗が。


「話が長くなってしまいましたね。船は数日で用意できると思います。それまでこの屋敷に滞在してくれて構いません。それと、もし時間があったらまた話を聞かせてほしいです」

「はい。もちろんです。それでは、お世話になります」






 某国。


「おい、なぜサザンナイトはアストレイアを落とせないんだ?」

「何でも、ドラゴン族を従えた冒険者がアストレイアに与したと」

「皇帝が奴隷にしていた奴か?」

「はい。そうだと思われます」

「確か、そのパーティは我が娘を加入させたパーティであろう? 今はムーランドラにいるのではないか?」

「では、他にもドラゴン族を従えた者がいるということでしょうか? 先の戦闘ではドラゴン族が確認されておりますが」

「ドラゴンか。そこまでに強いのだな。しかし、たとえドラゴン族が一人二人いたとして、我らはサザンナイトに兵士も奴隷も、何より悪魔の血も提供しているだろう。悪魔でも勝てないというのか?」

「悪魔が一体だけでは足りないということではないでしょうか」

「そうか。皇帝一人を悪魔にしたくらいではダメなのか」

「それでは次はどうされますか……」

「その前に新しい皇帝を立てねばならんな」

「確か、子供が一人おりましたな」

「よし、そいつを擁立しろ。次の戦の前には悪魔の血も惜しむな」

「はっ」

「それから、次の時は我が国も出ることを考えろ。挟撃するか?」

「警戒すべきは背後に位置するカヴァデール王国かと」

「新興の国な。まあ、ほっといていいだろう。シーブレイズの聖女が出て来てもめんどくさい。とりあえず、情報は東には流すな」

「承知しました」

「それで、その新皇帝となるガキはいつ頃出兵できそうだ?」

「来年の春には新たな軍を整えることが出来るかと」

「わかった。支援しておけ。そして、来年にはこの大陸を統一する」

「御心のままに」



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