秘石が来たにゃー!(優香と恵理子)
「これはご丁寧に。私どもはアルカンドラ大陸に渡りたいのですが、事情があって急ぎでして。カイナーズ王国のセーランジェ女王陛下に相談したところ、こちらの領主様にお願いすれば、船を出してくれるかもしれないから相談してみろと言われまして。それで、大変厚かましいお願いなのですが」
「厚かましいなんて。我々獣人の国は、人間の国と敵対したいと思っておりません。むしろ、商売相手としてこの友好関係を維持したいと思っております。カヴァデール王国の女王陛下でいらっしゃいますよね。是非、我が国と良い関係をとお願いしたいところでございます。そのための船の一隻や二隻、ご用意して見せましょう。ただし、少しお時間を」
「ありがとうございます。それでは、この街の宿屋を紹介いただけませんか? 改めてご相談させていただくために、お屋敷へ参上したいと思いますが」
「いえ、ぜひとも我が屋敷に滞在していただきたい。とはいえ、船を用意するのにそう日数はかからないと思います。短い間ですが、滞在いただけましたら、私どもとしてもうれしく思います」
「あの、一点聞かせてもらっていいでしょうか」
「何なりと」
「クサナギゼットという冒険者をご存じですか?」
「クサナギゼット!?」
サーバルが縦に割れた瞳孔を丸く開く。
それを見て、優香と恵理子はこれ以上ここで千里ちゃん達のことを聞いちゃダメかと、私達の関係者だとしゃべっちゃダメかと、そう思う。
だが、サーバルの反応は違った。
「どのようなご関係で? 私の娘がクサナギゼットのメンバーとしてついて行っているのですが」
「え?」
「それは……誘拐?」
「違います。娘からの手紙では楽しくやっていると。娘が自分で望んだことだと。娘はつらいことがあったのですが、それでも楽しく旅ができているというのであれば、それはクサナギゼットの皆様のおかげだと思っています」
優香と恵理子はほっと胸をなでおろす。
ここでは悪いイメージではないことがわかった。
「それでは、クサナギゼットのことをお聞かせいただいても?」
「はい。ですが、立ち話も何ですし、とりあえず、屋敷にいらっしゃいませんか?」
優香たちはサーバルに先導されて屋敷へと入った。
屋敷の応接室に通されると、サーバルの妻を紹介される。
「妻のシャミルです」
「シャミルです。よろしくお願いいたします」
ここでは、優香からメンバー紹介をする。
「私がタカヒロ、こっちが妻のマオ。それからリーシャ、ブリジット……」
「先ほどの話の続きですが。実は、私達の娘、ミケリナがこの街のリンベル商会に誘拐されたのです」
あれ、聞いたことがあるようなないような。そう思い、優香と恵理子はベルに視線を送る。
すると、ベルは予想通り視線をそらした。
「クサナギゼットの皆さんがそのリンベル商会へミケリナを助けるため突入した時には、すでにミケリナは海へと連れ去られた後でした。クサナギゼットの千里様と桃香様は、それを悔しがってくださいまして。それと、ミケリナが普段つけていたブレスレットを私どもの下に戻してくれました。その後の話はミケリナからの手紙でしかわかりませんが、海賊の拠点に連れ去られたミケリナは、瀕死の重傷を負い、倒れていたそうです。そこへクサナギゼットが海賊を殲滅させたうえで、ミケリナを助けてくれたと」
それでムーランドラに来るときに、海賊の気配がみじんもなかったのか。
千里ちゃん達がやったのかと、納得する優香と恵理子。
「ですので、私どもとしては、クサナギゼットの皆様に感謝しかありません。娘は自分の意思でクサナギゼットの皆さんについて行きました。それが娘の選んだ道なら、私達は応援したいと思っております」
「そうでしたか。クサナギゼットの話が聞け、よかったです」
「えっと、皆さまとクサナギゼットの関係は?」
サーバルが聞いてくる。
「はい。私とマオはそのクサナギゼットの千里と桃香を探してこの大陸に来たのですが、どうやらすれ違ってしまったらしく」
「どうしてその二人を?」
「仲間だからです。大事な、大事な仲間なんです」
「そうなのですね。皆さまは単にカヴァデール王国の女王陛下一行、というわけではなさそうですが」
「はい。私達はもともと冒険者パーティクサナギと言います。おそらく、千里と桃香が私達の名前をまねしてクサナギゼットとしたのだと思います。二人は私達より先に、私達の存在に気が付いていたようですから」
「兄弟のようなパーティということですね」
「はい。私達と千里と桃香のパーティは家族だと思っています」
サーバルが顎に手を当て考え込んでいる。
「サーバルさん、何かありました?」
「クサナギ、クサナギ、クサナギ……」
「はい。私達は冒険者パーティクサナギ。そして、千里と桃香がクサナギゼットだと……」
「もしかして、アストレイアのフィッシャーで、さらわれて強制労働させられていた猫人族を助けてくれた?」
「え、ええ、そんなこともありましたね」
「ドラゴン族を従えし勇者!?」
「その呼ばれ方は今一つむず痒いのですが」
「その節は、我らの同朋を助けてくださり、ありがとうございました。ことの詳細はウォルフから聞いております」
「「あはははは」」
笑ってごまかす優香と恵理子。
「それに、悪魔を倒されたとか」
「「あはははは」」
サーバルとシャミルは視線を合わせてうなずき合う。
そして、シャミルは自身の手首にはめていたブレスレットをはずし、優香の前に置く。
「これは、ミケリナがずっとつけていたブレスレットです。皆さまにお願いがあります。ミケリナに会ったら、これを渡してもらえませんか?」
そのブレスレットはオレンジ色の石が連なってできていた。
その石の一つ一つは光に当たると一直線の輝きを見せている。
「猫目石?」
優香が石の名前をつぶやく。
「はい。我々猫人族のお守りとしている石です」
これに反応したのはリーシャ。
優香の後ろから身を乗り出して叫ぶ。
「秘石? 秘石なの?」
「こ、これ、リーシャ」
優香がたしなめるが、リーシャの疑問にサーバルが答える。
「はい。このブレスレットは我が一族に代々伝わるもので、ここまで美しく光る石は見たことがありません。そのオレンジ色の石の色、そして光から、黄昏の秘石、と我々は呼んでいます」
これを聞いて中二病リーシャは興奮気味だ。
両のこぶしを振り上げて叫ぶ。
「猫人族、秘石。来たー!」
千里「ep.400達成おめでとう!」
桃&優&恵&貴&真「「「「「おめでとう!」」」」」
わんも「ありがとうございます! ここまで、1年以上にわたりこのお話を進められてきたのは、読んでくださっている読者の皆さんのおかげです。よね、みんな」
千&桃&優&恵&貴&真「「「「「「そーですねー」」」」」」
千「でも、ひとえに私がかわいいからじゃない!?」
わ「否定はしませんが」
桃「あれ、わんもさん、優香さんと恵理子さん推しでは?」
わ「いえ、六人推しですが、何か」
優「でも、最近思うんだけど、わんもさん、ベルのこと好きよね」
恵「エヴァのことも気に入っているみたいに見えるけど。私達のターン、私と優香さんの出番少ないし」
わ「……」
千「私達のパーティだと……ローレル? レオナ?」
貴「うちだと、ミーゼルかなぁ」
真「きっとそうなのです」
桃「わんもさん、気が多いです」
わ「……」
千&桃&優&恵&貴&真「「「「「「じー」」」」」」
わ「みんな好きなの。みんな好きでいいでしょうに!」
千「まあねー。わからないでもないわ。でも、そんなだからこそ、これからもよろしくね」
桃「ep.500目指して頑張ってください」
わ「クサナギとクサナギゼットがお互いにロックオンしてますし、終盤が近づいていますので、話数的に届くかどうかわかりませんが、これからも頑張って投稿していきます。皆様、どうぞよろしくお願いいたします」
千&桃&優&恵&貴&真「「「「「「よろしくお願いしまーす」」」」」」
 




