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千里と桃香並みの災害がやってきた(優香と恵理子)

 翌日。

 優香がゲルンに出立の挨拶をする。


「ゲルンさん。ありがとう。カイナーズに行ってみます」

「そうか。何か情報があったら、ここに来なくても、カイナーズの女王にでも手紙を書かせてくれればよいですじゃ」

「わかりました。そのようにします」

「ところで」


 と、恵理子が割り込む。


「シルフィードの姫様のお名前を教えていただけますか?」

「ローレル姫様じゃ」

「ローレル姫様ですね。あった時に失礼のないようにします」

「何を言うのです。タカヒロ様とマオ様こそ、我々エルフの敬うべきお方。姫はお二人に跪くでしょう」

「千里ちゃんと桃ちゃんの家族に跪いてもらうなんてできないわ。だって、千里ちゃんと桃ちゃんの家族も私達の家族だから」

「そうですか。そう言っていただけるとありがたいです」


 ゲルンは、頭を下げた。


「あ、そうそう」


 優香は恵理子と目配せをしてゲルンに大事なことを伝える。


「私達の本名だけど、タカヒロとマオじゃなくて、優香と恵理子。もし、私達じゃない貴博と真央が来たら、優香と恵理子は千里ちゃんと桃ちゃんに会いに行ったと伝えてくれます?」

「わかりました。必ずそう伝えます」

「それじゃ、本当に行きます。お世話になりました」

「ゲルンさんもお体にお気をつけて」

「ありがとうございますじゃ」




 森を出るまでは高位精霊リーフがついてくると言った。

 だが、リーフはアクアとパイタンに付きまとっている。


「ねえねえ、大精霊様にどこで祝福されたの?」

「池」

「宿屋」

「え? 池はきっとあなたがいたところよね。宿屋?」

「飲みに来た」

「飲みに来た?」


 端的にしか伝えないパイタンに代わってアクアが説明する。


「大精霊様方が言うには、優香様と恵理子様と一緒に飲むために来たと。それで宿屋に」

「パイタンはその時に祝福されたの?」

「うん」

「それって、偶然?」


 アクアは視線をそらして言う。


「多分ね」


 優香と恵理子がとある技、酒のつまみで大精霊を釣る、を持つことは言わない。


「じゃあ、何で優香様と恵理子様と一緒になの?」

「親と子が酒を酌み交わすのに理由がいる?」

「まあ、そうよね。じゃあ、二人について行くと何度も大精霊に会えたりするわけ?」


 アクアとパイタンは顔を見合わせ、そして、首をフリフリする。


「そ、そんなことはない、はず」


 可能性はなくはない。

 基本的に用事があるときに優香と恵理子が技を使うだけだ。

 つまり、用事がなければ呼んでくれないし、レイたちは自らなかなか来ない。


「そっか。ついて行こうかなって、思っちゃったけど」

「エルフ達が寂しがる」

「そうよね。めったに会えない憧れの人を待つのもいいけど、ここでちやほやされるのもね」

「「……」」

「ほら、もう森を出るわよ」


 リーフがそう言うと、前方から明るい光が差し込んできた。




 優香達クサナギはエルフの国シルフィードを後にした。


 行きに嫌な顔をされた炭鉱の町モルガンはスルーする。

 渓谷に入り、南を目指すこととした。


「獣人の国を襲った原因、エルフの国じゃなかったね」


 優香が恵理子に話かける。


「そうね。まあ、信じればってところだけど」

「信じてない?」

「エルフの国が大陸を統一しようなんて思っていないって、私も思うわ」

「まあ、可能性がゼロにはならないよね。長老達じゃなくて、もっと違う人達が関与しているって可能性もあるし」

「でも、きっとないわ」

「私もそう思うよ」

「じゃあ、誰が?」

「そうなると、カイナーズとか人間の国がやっている。だけど、そんなことするかな」

「うん」

「となると、単に、盗賊の犯行ってこともあり得るんだよね」

「盗賊の嘘ってことね。でも、あんなに大きな盗賊の集団、見たことないわ」

「だけど、シーブレイズでリシェル達が依頼を受けた時、同じような規模の盗賊に会ったって言っていたよね」

「そういえば」

「だから、大きな盗賊の集団もあるんじゃないかと」

「それなら問題解決が早くていいわね。もう捕らえた後だし」

「そうだね。だけど、知りたい情報もあるし、行ってみようか、カイナーズ」

「うん」




 カイナーズの王城。


「女王陛下、申し上げます」


 一人の兵士がセーラの前に跪く。


「なーに? どうせ大したことないんでしょ。この世は平和なのよ。温泉に戻りたい」

「陛下。聞いてください」

「だからなに。民衆が民主化を求めてきた?」

「いえ、そのあたりはこの国が平和なため、全く」

「チッ」

「あ、舌打ちしましたね? 女王陛下のやっていいことではありませんよ! 自ら国を無くそうとする女王がどこにいるんですか?」

「ここにいるわよ。で、本題は何なのよ」

「はっ! カヴァデール王国の馬車二台が我が国に入りました!」

「カヴァデール王国?」

「報告書が回っているでしょう。アルカンドラ大陸の東部にある、小国ラフィットにとって代わり建国された国で、その後、南部のエルト三国を併呑した勢いのある国です」

「勢いのある?」

「建国直後に三国を飲み込んでいるんです。それに、馬車を引くのは巨大なケルベロス、悪魔の従者であるため、住民達が騒ぐこと必死です」

「……で、その国が何の用なのよ」

「馬車はエルフの国に向かったと」

「我が国に用事じゃないんじゃないの?」

「そうかもしれませんが、モルガンを通ったそうで」

「帰りもモルガンを通るかもってこと? 何もなかったんでしょ。何もないならそのまま帰ってもらえばいいんじゃない」

「ですが、シルフィードに行った理由です」

「知らないわよ」

「もし、何らかの協定を結ぶためだったら?」

「平和だったら問題ないわ」

「シルフィードに対して何らかの交渉をして決裂したら?」

「考えるのもめんどくさい。温泉に戻るわ」

「陛下!」

「そん時は、よ」


 兵士がもう一人走って来て、さらに情報が入る。


「モルガンの渓谷前で大量のロックリザードのまる焦げが見つかりました!」

「ロックリザードのまる焦げ? 大量の?」


 セーラは考え込む。

 そんなことをするのは、できるのは知っている限り一人、いや、二人しかいない。

 しかも、先の情報をも統合すると……。

 ラフィットの代わりに建国された国……それが来てロックリザードを大量に。

 ラフィットを攻め落とした? 

 だが、そういう話ではない。

 むしろ乗っ取った。

 さらに、南のエルト三国も戦争をしたという話ではなく、たんに併呑。

 無条件で国を奪う、そんな力を持っていて実現させてしまう生物……。

 心当たりはある。

 だが、その生物は春まではムーランドラにいて、その後にアルカンドラに渡ったはず。

 ということは、ラフィットを落としたのは別の生物。

 もしかしたら、あの生物と同等の……いや、もしかしたら捜している相手か? 


 セーラの中で人間扱いされていない千里と桃香。


 セーラは立ち上がって兵士に命じる。


「千里と桃香並みの災害が来る! 備えよ!」

「「はっ!」」


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