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ドラゴンんさんの終わりの見えない一着選び(貴博と真央)

 城を出て、レティシアに連れられてキザクラ商会を目指す放課後木剣クラブ。

 先頭を歩くレティシアは、この国の騎士団長らしい。

 レティシアは騎士服を着ており、背筋も伸びて凛として歩き、そのせいもあって嫌でも目立つ。

 その後ろをセレン、少し浮足立っている。少しなのは、その嬉しいさの感情表現を何とか我慢しているからだ。

 そうして馬車と続き、馬車の周りはクラリス達が歩いている。

 レティシアが先導しているせいか、街に入った時のような蔑みは和らいでいるように感じる。


「レティシアさん」


 貴博が御者台の上から呼びかける。

 レティシアは振り向いてそれに答える。


「呼び捨てでいい」

「レティシア、この街って、人間の街みたいでエルフの国とイメージが違ったんだけど」

「この街はもともと人間の街だったらしい。森に棲んでいた我々エルフに攻め込んできた時に、逆に追いやったと聞いている。今は、その街を直しながら使っている。ドワーフの国も同じようなものだろう。獣人たちは人間族と交流があるからな。人間族の街をまねて作ったのかもしれんが。そう言うわけで、この国のエルフは人間族にいいイメージを持っていない。他の大陸のエルフ達は知らないがな」

「そうなんだね。まあ人間族も今は取り返したいなんて思っていないだろうけど」

「人間族は我々より寿命が短い。世代交代が早いせいでそういう禍根もわすれやすいのではないか?」

「そうかもね」

「おい、あそこがキザクラ商会だ。買い出しを終えたら出るぞ」


 レティシアが猫のマークの看板を指さす。


「わかった」




 貴博はキザクラ商会の前に馬車を止めた。

 一番に商会に飛び込んだのはセレン。

 ソフィローズ売り場へ直行だ。

 クラリスもラビとマイマイを連れてソフィローズ売り場へ。

 ミーゼル達は香辛料などを仕入れるようだ。


「いらっしゃいませ。御用はソフィローズと旅の準備でよろしいでしょうか」


 エルフの店員が対応のために貴博の下へとやってきた。

 さすがにエルフの国のキザクラ商会では変装する必要はないようだ。


「うん。妻たちの好きにさせて」

「承知いたしました」

「ところで」


 と、貴博のポケットの中から飛び出すサンタフェとカンタフェ。


「このお方をご存じ?」


 と、カンタフェが貴博のほほをぺちぺちする。

 店員が固まる。

 妖精……と言うことは。


「し、しばらくお待ちください。支店長を呼んでまいります」


 そう言って店員が速足に下がっていく。


「おい、どういうことだ? その妖精もそうだが、さっきの店員の対応……」


 レティシアが貴博に聞く。


「ははははは……」


 貴博は笑ってごまかすしかない。


 そこへエルフの支店長がやってきた。


「ようこそお越しくださいました。貴博様、真央様」


 と、深々と頭を下げる。

 それを見てレティシアが固まる。


「貴博様と真央様でしたら、何をお持ちいただいても構いませんが」


 貴博は、すっと顔を寄せ、


「そう言うことは言わないでください。ソフィローズに夢中なドラゴンさんがいますので、本気にします」


 貴博に耳打ちされた支店長は白いぽっとほほを染め、答える。


「承知しました。それでもかまわないところですが、常識的な範囲でお願いします」

「ありがとう。ところで、グレイス……義父様と連絡ってつく?」

「あの、えっと、緊急でしたらつくと思いますが」


 支店長は逆に貴博に顔を寄せて小声て伝える。


「そっか。特に緊急ではないんだよね。また今度にするよ」

「かしこまりました」




 一番に飛び込んでいったセレンはと言うと、


「きゃー、これ、かわいいです。これも素敵、これなんて色使いがいいです。パンツがいいかしら、スカートかしら。一着、一着を選べません。どうしたら……」


 そんなセレンに店員が余計な一言を。


「お客様、ご試着なさってはいかがですか?」

「いいのです?」

「はい。そちらに試着室を用意してありますので」

「では遠慮なく」


 そう言って、セレンは手に持てるだけの服をもって試着室に飛び込んだ。


「は、入る。胸が入る。エルフ用ソフィローズが入る!」


 試着室で騒ぐセレン。


「大変お似合いですよ。お客様、プロポーションが素晴らしく整っておいでで。お客様ならどのタイプでも着こなせると思います。いえ、むしろ、お客様のような方にソフィローズを着ていただけるなんて、我々は幸せです」


 セレンは店員の声を聞いて気を良くし、一人ファッションショーを続ける。


「お客様の美しい褐色の肌には、白系も映えますね」


 店員は次から次へとセレンに勧めていく。


「そ、そうかな、白もいいな……」


 それを見て、貴博はレティシアに聞く。


「あれ、終わると思う?」

「女性として気持ちはわからなくはないが、これから魔獣討伐に行くのに……」


 そう言って、レティシアは顔をフリフリする。




 セレンは一通り試着した後、ふと、店員の服に目を向ける。


「もしかして、制服にも興味がございますか?」


 首を縦にぶんぶん振るセレン。


「それではお持ちしますね」


 そう言って、店員はスーツからメイド服まで試着室に運び入れた。

 こうして、ファッションショーはまだまだ続く。




 これは終わらないな。

 そう思った貴博はクラリスにお願いする。


「僕、ちょっと冒険者ギルドへ行って素材を売るのと、貼り紙をさせてもらってくる。だから、セレンを見ていて。それから、みんなにも必要なものはそろえてもらって。もちろんクラリスも」


 下着とか、とは貴博は口に出せない。


「レティシア、僕は冒険者ギルドへ行きたいから、案内をしてもらえる?」

「わかった」


 貴博とレティシアは二人でキザクラ商会を後にした。




 貴博はレティシアと一緒に馬車の御者台に座る。


「レティシア、エルフの国にも冒険者がいるんだね」

「まあ、人が集まれば依頼も生じるし、食料確保にも一役買ってもらっているからな。どうしても必要なんだ。それに、この国を離れていく者には冒険者が多い」

「のんびりしている人ばっかりじゃないってことなんだね」

「そう言うことだ。我々騎士団もそういうことを言っていられないしな」

「でも、他国から攻められたりしてないでしょ?」

「冒険者と同じだ。魔物対応に走り回っている。冒険者が手に負えない魔物もいるからな」


 そういう会話をしながら、冒険者ギルド前へと移動する二人。




「いらっしゃいませ」


 ギルドに足を踏み入れると、受付嬢が声をかけてくる。

 受付嬢は当然ながらエルフだ。


「今日はどう言ったご用件です? レティシア騎士団長様」

「いや、私じゃなくて、こっちの人間だ」


 レティシアが手の先を貴博に向けると、貴博は一歩前に出て挨拶と依頼をする。


「放課後木剣クラブです。買取と、貼り紙をお願いしたくて」

「そ、そうですか。では、買取の品はこちらのカウンターにお願いします」


 受付嬢は貴博を見て少し顔を曇らせたが、貴博は気にせず、馬車から素材や肉を持って来てカウンターに並べていく。


「これで全部でいいです?」

「もうちょっとあるから」


 そう言って貴博はギルドを出ては、素材や肉を持ってきた。


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