表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

373/449

「ふふん」と「んもう」(貴博と真央)

「うーん、どれにしようかな」


 シーナが探査魔法を広げつつ、どの獲物を狙うのか悩む。

 そんなシーナにクラリスが尋ねる。


「何を悩んでいるんだ?」

「多分ボアなんですけど、いくつかいて」

「一番近いのでいいんじゃないか?」

「なら、二時の方向、ボアで……え?」


 バシュン!


 ラビが飛び出した。

 シーナが指で示した方向とは違う方へ。


 マイマイは、シーナの顔を伺う。


「えっと、二時の方向……」


 バシュン!


 マイマイがシーナの指示した方向へ飛び出した。


「えっと、どうしましょうか」


 シーナがクラリスに相談する。

 ラビとマイマイが二人を置いて飛び出してしまった。


「うん。どうする?」

「私、マイマイを追いかけますので、クラリスはラビを」

「わかった」


 二人はそれぞれを追いかける。




 ラビは自分で探知したホーンボアを視野に入れると、大きく飛び上がった。

 しかもホーンボアの索敵範囲外から。


 ボアは気づかない。上空から降ってくるラビに。

 ボアは気づかない。落下中も未だ気配を消しているラビに。


 ドゴン!


 ラビはホーンボアの脳天に薙刀の柄を叩き込んだ。


 ズドン!


 ホーンボアが倒れる。

 おそらく、ホーンボアは殴られるまでラビに気づかなかったことだろう。


「おーい、ラビ!」

「キュ!」


 クラリスが柄を地面に突き立ててホーンボアを見ているラビを見つけて声をかける。

 ラビは、得意げに倒れているボアを指さす。


「ラビ、すごいな。ホーンボアを倒してくれてありがとう」

「キュ!」


 ラビは得意げだ。


「さ、のどを切って血抜きをして持って帰ろう」

 



 マイマイはホーンボアを見つけると、その前に堂々と立つ。

 そして、柄を地面にたたきつけて、自分の存在をアピールする。


 ほら、かかってこい!


 と。


 ホーンボアはマイマイの存在に気づく。

 が、ホーンボアは「ピギー!」と鳴いて、逃げて行った。


「……」


 マイマイが立ち尽くす。


 そこへ追いついてきたシーナ。


「マイマイ、ホーンボアどうだった?」


 マイマイは、がっくりとうなだれてホーンボアが逃げて行った方向を指さした。


「そっか。逃げちゃったか。仕方ないよ。マイマイ、存在感が大きいもん」


 殺気がとは言わない。


「マイマイはカウンター狙いなのかもしれないけど、魔物相手には積極的に撃って出た方がいいのかもね」


 シーナはマイマイにアドバイスをし、もう一度探査する。


「マイマイ。私が後ろから追いやるから、後はお願い」


 そう言って、シーナはマイマイの下から離れた。


 マイマイがその場でしばらく待っていると、


 ドドドドド……


 と、ホーンボアの走る音。

 ホーンボアを確認したマイマイは、ホーンボアに向かって走り出す。

 そして、すれ違いざまにホーンボアの顎を下から殴り上げた。


 ガコン!


 顎を下から殴られたホーンボアは、その場で一回転すると、


 ズササササー


 と、倒れたまま地面をすべって止まった。


 後ろからやってくるシーナ。


「マイマイやった?」


 と聞くと、マイマイは、嬉しそうにうなずいた。


 転がっているホーンボアを見て、シーナが褒める。


「マイマイすごいね。一撃?」


 マイマイは嬉しそうにうなずく。


「それじゃ、血抜きをして持って帰ろうか」




 途中でクラリスとラビに合流する。


「ラビも仕留めたんだね、すごいすごい」

「キュ」


 シーナに褒められて嬉しそうに返事をするラビ。


「マイマイも仕留めたんだよ」


 と、シーナとマイマイが柄にぶら下げて担いでいるホーンボアを見せる。


「マイマイもすごいな」


 クラリスもマイマイを褒める。


「だが、私の存在意義が……」


 と、クラリス。


「いいじゃないですか。クラリスの存在意義は、私もだけど獲物を獲ってくることだけじゃないですよ。もちろん、ラビとマイマイもですけど」


 と、シーナ。


「そうだな。戻ろう」


 クラリスは気を良くして足を馬車に向けた。




「おー、大量だね」


 ミーゼルがクラリスとシーナに声をかける。


「うん。二人が張り切ってくれたの」


 と、シーナが報告する。


「それじゃ、頑張りついでにみんなでさばこうか」


 ルイーズがナイフを取り出す。


「セレンもホーンボア食べるでしょ?」

「あ、ああ」

「じゃあ、働かある者食うべからずね。手伝って」

「う、うむ」


 そう言って手伝おうとするセレンに、ラビとマイマイが顎を上げ、「ふふん」という得意げな視線を送った。


「……」


 セレンがそれに気づいて立ち止まる。


「いいだろう。ちょっと行ってくる」


 それに気づいたミーゼル。


「ちょっと待ってセレン。そんなにお肉いらないから。充分間に合っているから」


 しかし、もうそこにはセレンはいない。


「あーあ、行っちゃった」


 がっくりするミーゼルに、ルイーズもつぶやく。


「これ以上のお肉、センセに凍らせてもらわないと。それに、何も持って行かなかったけど、どうやって持ってくるのかしら」


「まあいいのです。さばいて調理してしまうのです」


 真央がミーゼルとルイーズをなだめ、ホーンボアの解体を再開した。


「真央はこのお肉を鍋に入れて煮込んでおいて」

「はいなのです」

「それと、こっちは焼いておいてね」

「はいなのです」




 真央達が肉を煮ながら焼きながら待っていると、


「ただいまー」


 と、貴博達が戻ってくる。


「取れたのです?」

「うん。そこそこ。鍋に入れちゃっていい?」

「はい。今、ボアを煮ているところなので、いいですよ」

「リル、お願いね」

「はい」


 リルは、野草やキノコを鍋に入れていく。


「リル、そのキノコ……」


 かごの中にあるキノコが気になる真央。


「この地域にもありました」


 鍋にほおり込まれる白い水玉の赤いキノコ。


「……」


 不安げに鍋を混ぜる真央。


「センセー、お肉を凍らせてほしいのと、ごみを燃やす穴を掘って欲しいー」


 ルイーズが貴博にお願いをする。


「今やるね」


 貴博は解体された肉を見て言う。


「ずいぶんあるね」

「ラビとマイマイが獲ってくれたんですよ」


 シーナが説明をする。

 ラビとマイマイは得意げだ。


「すごいね、ラビ、マイマイ、ありがとう」

「キュ」


 ラビとマイマイは貴博に褒められて嬉しそうだ。


「貴博、ちょっと相談があるんだが」


 クラリスが近づいて来て貴博に声をかける。


「なに?」

「こんなところで、しかも貴博にする相談ではないかもしれないが」

「うん?」

「ラビにペチパンツを」

「は?」


 疑問に思う貴博にクラリスが説明を加える。


「いやな、ラビは魔法使いスタイルでスカートがミニだろ? 魔法使いは飛び上がらないかと思っていたが、ラビは飛ぶんだ。するとな、下から丸見えなんだ」

「あ、それならマイマイにもお願いします。マイマイ、すごい勢いで突進するから、スカートめくれるんですよ」


 シーナもクラリスに乗っかる。


「そうゆうの、引率のクラリス先生に任せますよ」

「な、そう言う時だけ先生か? 今や私は身も心も十六だぞ! 乙女だぞ!」

「申し訳ないんだけど、女性のことは女性でやって欲しいです、先生」

「わかったからその先生呼びはやめろ。今やシーナと同級生のお前の妻だ」


 クラリスはシーナの肩を引き寄せ、顔を並べ口をとがらせる。


「ごめんごめんクラリス。そんな顔をしなくても、クラリスはかわいい。それじゃ、お願いね」

「「んもう」」


 顔を赤らめるクラリスに対し、口をとがらせるシーナ。


「シーナもありがとう」


 と言って、貴博はシーナの頭をポンポンした。


「んもう」


 シーナは照れを隠すようにうつむいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ