ドラゴンはウルフを倒す時も全力を尽くす(貴博と真央)
わんも「2024年8月18日、このお話がスタートしました。つまり、今日が1周年です。毎日投稿をここまで続けられたのは、毎日読んでくださる皆様のおかげです。感謝しています。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします」
ブラックドラゴンはつかつかと歩いて戻って来て、リルの前に立つ。
「ドラゴン形態に戻れないのだが?」
「もう一本いっとく?」
リルは回復薬をもう一本取り出す。
ブラックドラゴンは、その回復薬を受け取り、一気に飲み干した。
シーン
なにも起こらない。
「ドラゴン形態になれるか試してみたら?」
貴博が声をかけると、ブラックドラゴンは右手を掲げて空に飛びだそうとする。
が、ドラゴン形態にならない。
「ど、どうして?」
ブラックドラゴンは涙目になる。
「うーん。きっと時間が解決してくれるよ。それか、仲間がいたら迎えに来てもらったら?」
そう、貴博が提案すると、ブラックドラゴンはしゃがみこんで地面に『の』の字を書き始めた。
触れちゃいけなかったかー。
と、貴博は反省する。
前世の自分もそうだったな、と。
「それじゃ、僕ら行くね。みんな、用意して」
「「「はーい」」」
貴博達は再出発の準備を整え、そして、移動を開始しようとする。
ところが、ブラックドラゴンがストップをかける。
「ちょっと、ちょっと待って!」
ブラックドラゴンは馬車の前に飛び出した。
「えっと、このドラゴン形態に戻れないいたいげな女性を、ここに捨てていくの?」
不安を感じたのか、ブラックドラゴンは言葉が柔らかくなる。
「いたいげな女性? 僕の頭を何度もかち割ろうとしてくれた乱暴なドラゴンさんじゃなくて?」
「それは私の役割として仕方なかったの。この世界を危険な魔物から守るっていうね。だけど、危険じゃないって判断したからその件はもう終わり。終わりでいいでしょ」
「まあ、誰も死んでないし? 良くはないけど、もう行こうかと思っていたのは確かだし」
「私、お金も持ってないの。どうやって帰れって?」
「歩いて帰れよ。僕らは行くところがあるんだから。って、お金も持たずによくキザクラ商会へ行こうとしたな」
「そ、そんな。およよよよよ。お金はお家に……」
ブラックドラゴンはその場にしゃがみこむ。
道の真ん中にである。
しかも泣き方がわざとらしい。
「ブラックドラゴンさん。お金があればいいんだね。貸しておくよ」
「ありがとう。って言うか、ドラゴン形態に戻れるまで連れてって」
「僕、知ってるよ。ドラゴンさん達は人型になっても重たいってこと。馬車に乗れないでしょ?」
「そ、そうかもしれないが、歩く。そこは歩くから。食事の世話をしてくれればそれでいいから」
「どうする?」
貴博は真央やクラリス達に聞く。
「護衛として雇ってあげればいいんじゃないのか? 報酬は食事で」
クラリスの提案に対し、貴博は思う。
護衛として報酬が食事って安いな……おまけをつけるか。
「じゃあ、ブラックドラゴンさん。貴方をとりあえずエルフの国まで護衛として雇います。報酬は、食事と、もし、エルフの国に無事に着けて、そこにキザクラ商会があったら、ソフィローズのエルフ服を一着。それでどうです?」
キラーン!
ブラックドラゴンの目が光った。
「雇われます。ご主人様。センセ様」
「その、センセ様っていう呼び方やめて」
「ではなんと」
「僕が貴博。こっちが真央。順番にクラリス、ミーゼル、ルイーズ、リル、シーナ。ここまで僕の妻。さっき紹介したカンタフェとサンタフェ。それから、ラビとマイマイ。ラビとマイマイいじめたら怒るからね」
これに対し、ブラックドラゴンも名乗る。
「私はセレンディ。よろしく」
「セレン、よろしく」
「……早速略しやがって」
「なんて?」
「いえいえ会長の息子様」
セレンは何かが引っ掛かる。
「貴博、さっきなんて言ったっけ?」
「さっき?」
「私が名乗ったその前」
「ラビとマイマイをいじめたら怒るよって」
「その前」
「ここまで僕の妻」
「っておい。全員妻なの?」
「それが?」
「世の中のボッチに謝れ!」
「はいはい、ボッチのセレン、おいて行くよ」
貴博はセレンの要求をスルーして馬車を出す。
「ちょっと待ってって、回復薬を二本も飲んでおなかたぷんたぷんなの。走れないからー」
馬車はエルフの国に向かって進んでいる。
「セレン、前方にホーンウルフ」
シーナがセレンに指示をする。
「任せて」
スゥ!
セレンは大きく息を吸う。
パシン!
セレンが恨めし気に振り返る。
そこには馬車から飛び出して、セレンの頭をはたいた貴博がいた。
「何するんです?」
「こっちのセリフだよ。今、ホーンウルフ相手にブレスを撃とうとしたでしょ」
「それが何か」
「オーバーキルだから、自然破壊だから、それに、あれ、昼御飯だから」
「え、あれ、食べるんです?」
「食べなくても角とか皮とか売れるから。っていうか、昼御飯に何を食べようと思ってた?」
セレンはちらりとラビを見て、
「うさぎに……」
パシン!
「ホーンラビット、出てこないの、僕らの前に。まあ、理由はわかるけど。だからホーンラビットは食べられないし、そもそも討伐もできないの。だから手ごろなのがウルフなの」
「うーん。じゃあ、森に入って探せば?」
「それはお昼ご飯前にやるけどさ。と言うわけで、ホーンウルフは……もういないじゃん」
「無駄な血が流れなくてよかったね」
「……」
無駄なやり取りを……
貴博はげんなりする。
「貴博ー、ちょっと休憩しよう。おなかすいたから」
先頭を歩くセレンが昼ご飯を要求してくる。
「……まあ、もうお昼が近いもんね」
と、少し開けたところに貴博は馬車を止めた。
「クラリス、肉、どうする?」
「まだちょっと時間があるから探してくる」
「キュ」
「え? ラビ?」
ラビは馬車から薙刀の柄を取り出して降りてきた。
マイマイも。
「ラビもマイマイも狩りに行ってくれるの?」
「キュ」
ラビとマイマイはうなずく。
「それじゃお願いね」
「キュ」
ラビとマイマイはクラリスとシーナと一緒に森に入って行った。
「あの魔物たち、狩りが出来るの?」
「セレン、まず、魔物って言わない。それから、たぶんできるんじゃないかな。草食だけど」
「草食……あの子ら草食だったのか……」
「そうみたいだよ。だから食べれそうな野草も探してこなきゃ。というわけで、リル!」
貴博がリルに声をかける。
「はーい。行きます」
「僕とリルは野草を探してくるから。馬車を見ていて」
そう、貴博はセレンに馬車の護衛を任せる。
「わかった」
「ねえ真央」
「なんです?」
セレンはミーゼル達と火を起こす準備をしている真央に声をかける。
「これから獲物を狩りに行って、昼に間に合うのか?」
「間に合うのですよ。シーナの探査能力をなめてはだめなのです」
「そうなのか。じゃあ、野草の方は?」
「リルが野草に詳しいですし、サンタフェとカンタフェは狭いところも飛んでいけますから、すぐに見つかるのです。センセはほとんど護衛の役割なのです」
千里&桃香「「わんもー(さん)、一周年、おめでとう(ございます)」」
優香&恵理子「「おめでとうございます」」
貴博&真央「「おめでとう(なのです)」」
わんも「みんな、ありがとう! これも、みんなが活躍してくれたおかげでもあります」
千「でもさー、一周年記念が胸が小さくなって飛べなくなったドラゴンさんの話って……」
セレン「な、なんだと!」
千「あれ、やるの? うちにもドラゴン族二人いるけど。フローラ、ルビー、やっておしまい」
貴「千里ちゃん、待って待って」
千「はい、センセ。何でしょうか」
貴「きっと、もうすぐ会えるね」
千「きゃぴーん!」
桃「ち、千里さん、大丈夫です!? 固まっちゃってますけど」
わ「まあ、ちょっと騒がしいしそのままにしておきましょう。しばらく千里と桃香の出番はないですし」
桃「え?」
わ「しばらくは貴博と真央、それから、優香さんと恵理子さんのお話が続きます。千里と桃香ファンの皆様、申し訳ございません。しばらくお待ちください」
千&桃「「……」」
貴&真「それでは、「これからもよろしくお願いします」」
優&恵「「私達のお話も、読んでくださいね」」
優「さあ、みんなでケーキでも食べましょうか」
恵「そうね、私、お茶を入れるわ」
真「やったのです」
貴「優香さんと恵理子さんのケーキ、おいしいんだよね」
桃「ち、千里さん。早く起きてくださーい」
貴「桃ちゃん、千里ちゃん引きずってきてくれる?」
桃「はーい。仕方ないですね」
ずりずりずり
わ「ケーキ嬉しいです」
優&恵「「……」」
わ「え?」
優「ケーキって、六等分に切るの難しいの。七等分ならなおさら……」
わ「はい、すみません。ごめんなさい。コンビニに行ってきます。せめて、一緒に……」
優「なんてね。八等分にして、みんなでわけましょう」
わ「優香さーん。ありがとうございます。頑張って優香さんと恵理子さんのお話を書きますから!」
千、桃、貴&真((((あまりのケーキ……))))




