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ソフィリア(ソフィローズ)デザインのラビとマイマイの服(貴博と真央)

 こうして街について三日が経ち、ラビとマイマイ、クラリスの服が出来上がる。

 クラリスは、セーラー服を着て貴博達に見せる。


「どうです?」


 ミーゼルもルイーズもシーナもジト目でクラリスを見る。


「クラリス、姿が若返ったからって、そのはしゃぎっぷり、どうかと思う」

「そうです。体にフィットしたものを作ってもらっただけですよね」

「クラリスはスタイルが良くてうらやましい」


 と、それぞれのコメント。


「旦那様! どう?」

「クラリスはほんとにスマートだよね」

「スマート? 誉め言葉でいいのか?」

「もちろん。かっこいいって意味」

「ちょっと、私達にそう言ってくれないのは何で?」


 腰に手を当てて貴博に詰め寄るミーゼル。

 貴博はそれに答える。


「え、僕はミーゼルもルイーズもリルもシーナもとてもセーラー服が似合っていると思うよ。ものすごくかわいい」

「じゃ、真央はどうなのよ」

「真央? 真央は……かわいい」

「えへ」

「「「「……」」」」


 そうこうしていると、貴博に都合がいいことにラビとマイマイが更衣室から出てくる。


「「「「「「「……」」」」」」」


 七人が固まる。特に貴博が。

 ラビが貴博をつんつんする。


「はっ」


 貴博が我に返る。


「ラビ、マイマイ、似合ってるよ。かわいいね、その服」


 と、貴博はひとまず二人をほめる。


「で、えっと、誰のデザインかな?」


 貴博は、キザクラ商会職員を見回す。


「えっと」


 と、ヴィータが答える。


「あの、マイマイ様のそのお背中を隠すために、マントタイプを検討するという話だったかと思います。で、それをソフィローズ本店に問い合わせたところ、マントと言えばそれと、デザインを渡され」

「あの、完全に魔女っ娘なのですが」


 ラビとマイマイはふちの広い三角帽子をかぶって、その角が帽子のふちの部分に内側から刺さって隠れるようになっている。

 まさにメルシー。魔女っ娘だ。

 また、黒のマントを装備しているため、マイマイの背中の膨らみも気にならない。


「えっと、中は?」

「もちろん、魔法少女を意識しています」


 そうヴィータが言うと、ラビとマイマイがマントを広げて中を見せた。フリフリのミニスカート。大きなリボンがついた白いシャツ。


 貴博は思う。ソフィお母様、一体何を、と。


 ちなみに、ラビについては、帽子から耳が出ているし、魔法少女の衣装のお尻の上に、しっぽが出ている。


「そういえば、マイマイはしっぽはどうしているの?」


 貴博が単純な疑問をそう口にすると、マイマイは魔法少女の背中から出ている甲羅から、びろん、と、しっぽを垂らした。


「へー、甲羅に隠れるんだ」


 と、貴博が感心すると、マイマイは、うんとうなずいた。


「ヴィータさん。この二人を魔法少女に見立てたのはわかりました。足りないものがあると思うんですが」

「わかってますよ。ソフィリア様からもちゃんと伺っていますし、作ってます」


 そう言って、ヴィータは手を、パンパン、とたたいた。

 すると、店員が二本のステッキを持ってくる。

 魔法少女がもつような、大きな石がはまってリボンのついたステッキを。


「このステッキですが、上の部分をもってさやから引き抜くと、剣になります」

「おー。この二人、魔法を使わないと思うんだよね。いいね」


 ラビとマイマイは剣を抜いて、かまえる。


「ラビ、マイマイ、ここではしまって。また訓練の時に使おう」


 そう貴博が言うと、二人は剣をさやに収めた。


「センセ、これ、いいのです?」


 真央が聞いてくる。


「うーん。僕もやりすぎだと思う。でも、確かにこれでマイマイの甲羅も二人の角も隠れるかなって」

「それはそうなのですけど」

「あ、忘れてた」


 そう言って、貴博は真央に耳打ちする。

 真央は、それをヴィータに確認する。

 貴博は自分で聞く勇気がなかった。


「二人の下着はどうしているのですか?」

「もちろん、抜かりはありませんとも。ソフィローズです」


 という返事をもらって、貴博は疑問に思う。

 メーカー名ではなく、履いているかどうかではないのか、と。


「よし、冒険者ギルドへ行って冒険者登録をしよう」

「え? できるの?」


 貴博の提案に、ミーゼルが当然の疑問を発する。

 それはそうだ。

 二人は、いやホーントータスの方はわからないが、ホーンラビットは少なくとも討伐が常設依頼だ。

 つまり討伐対象種が冒険者になれるのかと。




 しかし、簡単に冒険者登録を終える。


「二人は口がきけないんだ」

「二人は魔法使いなんだ」

「ギルマス権限はいらないから、普通にシルバーからでも」

「少しでもパーティランクを下げた方が、常設依頼で文句を言われなくても済むし」


 というのが貴博の意見。

 これらは受付嬢にあらかた受理された。

 しかしながら、貴博達放課後木剣クラブのランクはプラチナのままだった。

 プラチナランクでは常設依頼を受けたとしてもホーンベアクラスでないと納得してもらえないことに不満があったので、少しくらいランクを落とした方がいいと貴博は思っていた。

 それにギルドに対する協力義務についても同様である。

 貴博達は高ランクの依頼を受けたいと思っていても、決して制限を受けたり義務を課せられたりしたいわけではない。

 ただ、人を探しているだけなのだ。

 だが、それがかなわなかった。

 放課後木剣クラブはラビとマイマイを除いた全員がプラチナランクである。

 半数以上がプラチナランクの冒険者パーティはプラチナランクとなってしまう。




 貴博は、二人の装備の確認を行った。


「よし、北に向かおう」


 放課後木剣クラブはキザクラ商会から馬車を出し、この街の北門へと向かおうとした。

 そこで、街中に鳴り響く鐘の音。


 カンカンカンカンカン


「ヴィータ、この音は?」

「魔物の襲来です」

「その場合、外に出ない方がいいの?」

「今は冒険者が前線に取られています。だから、冒険者である以上、貴博様方は討伐に参加された方がよろしいかと。私達も一応、冒険者として登録しているので外へと向かいます。これも地域貢献なのです」


 そう言って、ヴィータはキザクラ商会職員を集めていた。


「えっと、僕らは北門へ行ってみる?」

「「「「「「はーい」」」」」」




 北門までたどり着くと、門兵から声がかかる。


「おい、お前ら、外に出ると危ないぞ。冒険者やこの街の衛兵が集まって、魔物を討伐するまで待っていろ」

「僕ら、これでもプラチナランク冒険者パーティです。外に出してもらえますか? 冒険者、この街に少ないんですよね」

「……わかった。お願いする。だが、数が多い。危なくなったらすぐに戻ってこい。多少ホーンラビットが街中に入ったとして、俺らや衛兵たちが何とかするからな」


 貴博は門兵の言葉が気になり、聞き返す。

 いったい何を討伐するのかと。


「い、今なんて?」

「俺らや衛兵に任せろって」

「その前」

「ホーンラビット?」

「襲ってきているのはホーンラビットなの?」

「そうだ。それが数えられないくらいな」

「数えきれないくらい?」

「ああ、こんなことは初めてだ。だが、襲ってくるわけじゃない。街を囲んでいるんだ。そもそも、こんなにたくさんのホーンラビットを見たことがない」

「……」


 貴博が言葉をなくす。

 なんとなくだが、ここに集まっている理由がある気がする。


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