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優香と恵理子の悪行?(千里と桃香)

「ところで」


 マークスが千里と桃香に声をかける。


「これで、スミスに丸投げが終わりました。これでいいですか?」

「いいわよ」

「それでは、私とルークスはこれにて失礼したいと思います」


 この場を立ち去ろうとするマークスとルークス。

 そんな二人に千里が声をかける。


「ねえ、マークスにルークス」

「何でしょうか、女神様」

「私達、貴方達二人を好きに使っていいって、国王から言われているんだけど」

「「……」」


 あの国王、なんてことを。

 こんな自由人に使われるなんてまっぴらだが。

 マークスもルークスもそう思う。


「一度アストレイアに戻るのはいい」

「「一度?」」

「私もアストレイアの王都にお遣いを頼みたいから」

「「お遣い?」」

「ええ。レオナ、金貨三百枚頂戴」

「はい」


 レオナは金貨三百枚が入った袋を千里に渡す。

 普段から持ってんのかよ。という突っ込みはなしだ。


「この金貨を王都のモデールさんに渡してほしい。それからスミス、紙を頂戴」


 千里はスミスから紙を受け取ると手紙を書く。


「王都のギルマスにこの手紙と鍵を一緒に渡しておいて。鍵はクサナギの拠点のカギだから、なくしちゃだめよ」

「と言うことは、女神様方は王都へは戻らないと?」

「ええ。せっかくここまで来たんだから、西に行ってみるわ。その手紙にはそう書いておいた」

「で、さっきの一度は戻っていいって?」


 マークスが確認する。

 一度とは何ぞや。二度目なんてあるわけがない。

 自分達は王都の近衛なのだ。王を守るのが仕事なのだ。


「あなた達二人は私達がもらうわ。この自治領で騎士団長と副団長をしなさい」

「「……」」


 口をあんぐりさせるマークスに、パクパクさせるルークス。


「何でそんな話になるんだよ」

「国王が好きにしていいって言ったからよ。それにスミスも言っていたでしょ。この領には騎士団も軍もなくなっちゃったのよ。貴方達二人で何とかなさい」

「二人で何とかなるわけないだろう」

「王国から引き抜いてよし」

「なんちゅう自由な」


 はぁ。


 マークスがあきらめる。自由人には何を言っても無駄だ。

 それに、千里も桃香も女神だ。

 少しくらい自由人でも勤めがいはあるのかもしれない。


「わかった。女神様方の命なら聞こう。私、マークス・フィンは、女神様方に仕え、この領の騎士団長を拝命いたします」

「私、ルークス・フィンも副団長を拝命します」


 二人は千里と桃香の前に跪いた。


「それから、ベルキア」

「は、はい!」


 突然呼ばれたベルキアは慌てて膝をつく。


「あなたは、この領の女性子供に尽くしなさい。女性子供省の長官を命じます」

「は、はい。この領の女性、そして子供達の未来のため、全力を尽くします」

「そう言うわけだから、スミス、代官として全体調整をよろしくね」

「は。私もこの自治領のため、誠心誠意尽くすことを誓います」


 そう言って、スミスも膝をついた。


「よし、じゃあ、私達も明日には出発しよう。ヨン、宿を押さえて来て」

「はい」


 第四騎士団が部屋を出ていった。


「この屋敷に泊まられないのですか?」


 マークスが聞く。


「うん。私たち全員で寝泊まりできる部屋を作っといてね」


 千里がそう言うと、スミスがうなずく。


「そう言うわけだから。じゃあ、みんな、よろしく」

「「「承知いたしました」」」




 千里達は、屋敷を出る。


「うーん。宿が決まるまで、冒険者ギルドでも行く?」


 千里が桃香に聞く。


「そうですね。優香さん達の情報が聞けるかもしれませんしね」

「よし。行こう」




「頼もう!」


 冒険者ギルドに入る千里と桃香。

 かわらずローレル達とレオナ、フローラとルシフェ、ジョセフとミケが続く。


「いらっしゃいませ。旅の冒険者の皆さまですか?」

「私達はクサナギゼット。冒険者パーティクサナギを探している者です」


 マウラは手を口に当てて驚く。


「クサナギの探しているパーティですか?」

「はい。お互いに探し合っています。ですが、クサナギの拠点はもうわかりましたので、後は時間の問題です」

「そうですか。よかったです。早く会えるといいですね」

「ありがとうございます」

「で、今日はどのようなご用件で?」

「今はクサナギの足取りを追っているの。知っていることがあったら教えて欲しいのだけど」

「そうですか。そうしましたら、ちょうどいい人がいます。ちょっとお待ちください」


 そう言ってマウラは二階のギルマスの部屋へと走りっていく。

 そして、連れ帰って来たのは、一人の冒険者。


「この人は、グスタフさん。プラチナランクなのに当時のシルバーランクのタカヒロ様にぼこされた冒険者です」

「マウラ、その言い方はないぞ!?」

「えへ。お兄ちゃんごめんね」


 そんな仲睦まじくする兄妹を千里がとめる。


「えっと、ブラコンもシスコンもいいんだけど、話を」

「そうだったな。よし、じゃあ、こっちで話そう。マウラ、酒!」

「え? 飲むの?」

「飲まずに話せるか」

「えっと、そんな話?」


 千里も驚く。飲まなきゃやってられないのか?




 そこへマウラが人数分のエールや果実酒、果実水を持ってきた。

 ところが、少女に見えたルシフェが果実酒を取ったため、マウラは果実酒をもう一つ持ってくることになった。


 千里がジョッキを掲げる。


「よし、クサナギにカンパーイ!」

「「「「カンパーイ!」」」」

「で?」


 千里が早速グスタフの話を聞こうとするが、グスタフが待ったをかける。

 話をするのに必要なものが無くなった。


「ちょっと待て。マウラ! エールをおかわり。人数分!」

「あ、私、果実酒で!」


 千里もお代わりを頼む。

 しかし、マウラはどうしたものかと悩む。ギルドで宴会をしていいものだろうか。


「ちょっとちょっと、宴会になっちゃってるじゃん」

「そうだな。マウラ、デリバリーも頼んでくれ!」


 グスタフが宴会を認めた。

 こうなったら仕方ない。マウラはあきらめる。


「……はーい……」

「それが来たらお前も飲め!」

「はーい!」


 飲んでいいのか。じゃあ、ここは飲もう。飲んでデリバリーを頼もう。

 どうせもう終業時間だ。

 と、上機嫌になるマウラ。




「だから、えっと、誰だっけ」


 千里がグスタフに聞く。


「あ、俺はな、プラチナランク冒険者パーティのリーダー、グスタフだ。もちろん、プラチナAランクな。よろしく」

「私は千里。こっちのピンクのツインテが桃香。それからエルフのローレルとルージュとフォンデ。人のレオナとジョセフィーヌ。ドラゴン族のフローラ。高位精霊のルシフェ、猫人族のミケ」

「なにそのメンツ。エルフや猫人族はいい。ドラゴン族に高位精霊?」

「ま、いいじゃない。タカヒロたちだってドラゴン族を従えた勇者なんでしょ?」

「ま、そうだが……」


 い、いいのか?

 グスタフは気を取り直す。


「クサナギより少ないのか?」

「私達、あと九人が宿探しをしているわ」

「おお、クサナギより多いのかな? あいつらも増やしているだろうけどな」

「で、クサナギって?」

「突然西からやってきた冒険者だったんだけどな。その時から十二人のメイドを連れていたぞ」

「メイド……」

「この街でな、公爵の息子ヒックリが俺の妹と、それをかばったクサナギのメンバーの女の子二人を監禁したんだ。その時に、あの二人は屋敷に乗り込むわ、この街中を悪魔の使い、ケルベロスを走らせるわ、大変だったんだよ。その二つが一緒の事象だってわかっていなかったんでどうしようか悩んだが、なにせ、俺らはこの街の冒険者だろう? 現れた魔物を討伐する必要があったからケルベロスを追いかけたわけだよ。だが、ケルベロスはタカヒロとマオと合流したから、俺達は屋敷の前でタカヒロとマオに出会うことになったんだ。出会った時にはすべてが終わっていたけどな。結果として妹を助けてもらったから、二人には感謝している。それで、何かお礼がしたいと言ったら、手合わせだぞ? シルバーランクの冒険者が当時のプラチナBの俺様にだ。で、ぼこされたと。まあ、たいへんだったわ」

「タカヒロ、はじめから強かったんだ。やっぱり」

「やっぱり?」

「多分鍛えられ方が違うのよ」

「そうだろうな」


 グスタフは思い出したかのように続ける。


「それからな、あいつら……。そうだ。この街の公爵家の家を見たか?」

「さっきまでいた」

「じゃあ、あの白い壁を見たか?」

「うん」

「あいつら、公爵の屋敷を襲った後に、悪名を広げようと、『クサナギ参上』って落書きしやがった」


 ブッ!


 千里が噴き出した。

 優香さんと恵理子さん、いつの時代の……。



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