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してんのかな?(千里と桃香)

ブレイクは話し出す。


「二年前にこの国に現れた時は、すでに十四人のパーティで、その時はシルバーランク。この国で行われている武闘会でタカヒロが優勝してプラチナランクになった。その年にサウザナイトが無くなりサザンナイトになった」


 当然、ブレイクが武闘会の決勝で負けた部分はあっさりスルーだ。


「「ふむふむ」」

「翌年、サザンナイトの侵攻に対してこの国の王女が出兵。王女の護衛として出て行き、ドラゴン族を従えて帰って来たのは話した通り」

「「ふむふむ」」

「その後、いろいろあって、旅に出てしまった。北から東へ行ったようだ。この辺から先は他のギルドの情報からな」

「「ふむふむ」」

「この国の東にあるノーレライツ王国を通って、途中で南下。その時に病人を治したことでマオが聖女と呼ばれ始める」

「聖女……」

「そうだ。よって、タカヒロとマオは勇者と聖女と呼ばれるようになった。あ、ちなみにマオだが、当然「勇者」でもあるし、それに「奥様拳の始祖」という二つ名も持っている」

「奥様拳?」

「何でも、メイド姿でお玉を振り回して戦うそうだ」

「メイド服……」

「お玉……」


 恵理子さん、何やってんのよ。と、想像する二人。


「続きいいか?」

「うん」

「そのまま南下し、ラフィットという小国があったんだが、そこの王家を国王の座からおろしてしまい、自分のパーティメンバーを女王に据えた。この時に、タカヒロは王配という座も得た」

「王配?」

「女王の夫だ」

「「えーーーーー!」」


 千里も桃香も驚きの声を上げる。


「タカヒロ、結婚したの?」

「まだ婚約段階らしいが」


 あれ、優香さん、女だよね。女王と結婚? まあ、成り行きでそうなっちゃったのかな? そう想像し、顔を赤らめる千里。


「それでだ、ついでとばかりに、その南にあったエルト三国を併呑」

「「……」」

「合わせてカヴァデール王国な。つまり、このカヴァデール王国は実質クサナギの国だ」

「「すごい」」

「お前らだってエルフの姫様がパーティにいるだろう。同じだ同じ……。お前ら、クサナギって一体何なんだよ」


 ブレイクがげんなりする。

 突然現れた二つのパーティ。

 そのどちらもが国を支配している。


「あ、じゃあ、クサナギももうこの国の依頼受けられないじゃん。だって、カヴァデール王国に頼むようなものでしょ?」

「そう言えばそうだな。そうだったな。はぁ。この国もカヴァデール王国に飲み込まれるのかもしれんな」

「そう言うことは、思っても口に出しちゃダメじゃないの?」

「そうだな。忘れてくれ」

「で、続きは?」

「もう、手短に行くぞ。クサナギはエルトの南のシーブレイズ王国へ行った。シーブレイズ王国にはもともと聖女と呼ばれる治癒魔導士がいてな、その聖女が女王となっているんだ。つまり、聖女と聖女が対面したわけだ」

「それって、どうなったの?」

「マオが負けたらしい」

「「えー?」」 


 恵理子さん、負けたの?

 そんなにシーブレイズの聖女は強いの?

 あれ、聖女、治癒魔導士だよね?


 首をかしげる千里。


「負けたと言ってもな、ある部分の大きさで負けただけらしい。マオは気にしているらしいが。千里が桃香に負けるようなものだ」


 そう言って、千里と桃香のとある部分を視線を行き来させるブレイク。


「「む……」」」


 その意味に気づいて、腕を組んで胸を隠す千里と桃香。

 千里と桃香から、またローレル達からも殺気を当てられ危険を感じたブレイクは、何もなかったかのように話を続ける。


「そ、それからだ。シーブレイズの聖女、つまり女王とタカヒロとの交際宣言が民衆の前でされたそうだ」

「「……」」

「この時タカヒロについた二つ名が「女王ホイホイ」」

「「……」」

「噂では、さっき出てきたノーレライツ王国の王女もゲットしたらしい」

「「……」」

「まあ、その後のことは、まだ情報が入ってきていない。少なくともこの春まではシーブレイズにいたらしいぞ」

「えっと、聞いていい?」

「なんだ?」

「タカヒロは交際相手が三人いるってこと?」

「気になるのそこか? まあいいや。マオが妻だって言っていたぞ。これはこの街に来た時から。だから、妻一人、正式な彼女二人、真偽不明の彼女が一人ってところだろう。しかもその彼女の二人が女王で真偽不明が王女な」

「してんのかな……」


 顔を赤らめた千里が思わずつぶやいてしまう。


 ボフッ!


 そのつぶやきを聞き逃さなかった桃香が顔を真っ赤に染める。


「おい、そういうの、聞かないでおいてやれよ。プライベートだろうに」


 意外と冷静に返すブレイク。


「なんだ、千里、寂しいのか。私がいるだろう」


 そう千里を後ろから抱きしめるローレル。

 さすがにこれにはブレイクも顔を染める。


「……! びっくりするじゃん、ローレル!」

「私らもフローラもルシフェも、寿命の長い組は、最後まで添い遂げるって言っているだろ。いつでもいつまでもこの若い姿で添い寝してやるから」

「ローレル! こんなところでなんてこと言うの!」


 千里も桃香も顔を真っ赤にする。


「人間族も負けていませんわ」


 ジョセフィーヌまでもが参戦する。しかし、言ってはいけないことを……


「私だって千里様と桃香様のお力があればいつまでも若……モゴモゴモゴ」


 瞬間的に千里が消え、ジョセフィーヌの横まで移動すると、その口をふさいだ。

 それを見てブレイクは目を大きく開くが、もう、お腹いっぱいである。


「おい、そう言うの、部屋にこもってやってくれよ」

「「……すみません」」


 千里と桃香が素直に謝る。

 それを聞いたブレイクは、事実か、と、赤くなった顔を隠すようにうつむいた。


「まあいいや。で、お前達は、これからどうするんだ?」

「今、家を探しているところ」

「クサナギの家があるだろう」

「一緒に住むと大所帯になるから、近くで探すつもり」

「まあ、クサナギも大所帯だったからな」

「で、私達は、クサナギに入れてもらうわ」

「おいおい、二大陸の国もドラゴン族もエルフ達をも従えているパーティ同士が合併するってことか?」

「そうよ」

「はぁ。なんの冗談だよ。国より、冒険者ギルドより立場が上なんじゃないのか? この世界をどうするつもりだよ」


 ブレイクはため息をつく。

 しかし、悩んでも仕方がない。

 このパーティに何かしてもらうことが難しいことは重々理解した。

 踏むなら虎の尾やドラゴンの尾の方がよっぽどかましだろう。

 本当に女神の名はだてではない。


「まあいいや。で、家をもってここに住むのか?」

「当面ね。私達はもう二人探さないといけないから」


 そう言って、千里と桃香は立ち上がる。


「それじゃ行くね」

「ああ」

「あ、そうだ。クサナギって、どっちから来たの?」

「西からって聞いている」

「ありがとう」




 千里と桃香がクサナギの拠点に戻ってくる。

 その前には、黒塗りの馬車が止まっていた。


「ただいまー」


 千里が家の中に入る。

 中では、レオナが商人らしき男と商談をしていた。


「千里、いいところに。こちら、モデール・ハウスンさん。この家をクサナギに売った商会の代表の方です」

「おー、モデールさんですか。この家、いいですよね。大人数で住めるし、訓練場もあるしで」

「ありがとうございます。この家、かなり頑張りましたから」

「そうなんだね。ところで、似たような物件ってあるの?」

「はい、今しがた、こちらのレオナ様にもお話させていただきましたが、実は、この隣は私どもの倉庫でして、そちらをお売りすることが出来ます。もちろん、ここと同じようにリフォームして住めるようにできます」

「それで、おいくら万円なの?」

「マンエンが何を意味するか分かりませんが、こちらと同じく、金貨三百枚でいかがでしょうか。それだけいただければ、居住区部分もお好みに改良いたします」

「レオナ?」


 レオナはうなずくだけだ。


「それじゃ、お願いしようかな。ここと同じように」

「ただし、ちょっと今込み合っておりまして、リフォームを完成させるまでに一か月ほどいただきたいのですが」

「あ、大丈夫大丈夫。私達、ちょっと西に用事を済ませに行ってくるから」

「承知しました。それでは近いうちに着工し、一か月後には住めるようにさせていただきます」

「了解。詳細は、旅に出る前に、レオナとヨンとつめておいてね」



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