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アストレイアのクサナギの拠点(千里と桃香)

 千里達は、フィッシャーの街を出て、西へ西へと向かう。

 途中、いくつかの街を訪れ、食料等、旅に必要なものを買う。また、森に入っては食材を確保する。

 そうして、夏前にはアストレイア王国王都へと到着する。




「やったー! アストレイアだー!」


 千里が北の門で両手を上げて叫ぶ。


「もしかしたら、優香さんと恵理子さん、戻ってきているかもしれないですよね」

「そうだね。そうだといいね」

「それじゃ、とりあえず冒険者ギルドに行きましょう」

「そうしよう。レオナ、お願い!」

「はーい」




 馬車は二台で冒険者ギルドに乗り付ける。

 千里と桃香は、馬車が止まることすら待てないように、飛び出し、ギルドへと入っていく。

 まずは、桃香が確認する。


「千里さん、ありました。ここにも貼り紙です」

「なんか新しいこと書いてある?」

「はい。あります。合言葉は『真央ちゃんの得意料理は鍋』です」

「おっけ」


 千里は、カウンターに向かう。


「あの。冒険者パーティクサナギの拠点のカギを貸してほしいんだけど」

「え?」


 突然の申し出に、受付嬢のミューラは戸惑う。


「合言葉は、真央ちゃんの得意料理は鍋、ね」

「あ、あの。貴方様は?」

「私? 優香さんと恵理子さんが探している千里と桃香。私達も優香さんと恵理子さんを探しているの。優香さんと恵理子さんのパーティでしょ、クサナギ」

「えっと。違います。だれです? ユウカサンとエリコサンって」

「千里さん、違います。タカヒロとマオです」


 桃香が間違い……間違いではないが、すれ違いに気づき、訂正する。


「あ、そっか。タカヒロとマオのパーティね」

「……少々お待ちください」


 そう言って、ミューラは階段を上ってギルマスの部屋へと入っていく。

 しばらくすると、ギルマス、ブレイク・オースティンが降りてくる。


「お前達がクサナギの探している相手なのか?」

「そうよ。って言うか、私達が探している相手がタカヒロとマオなの」

「と言うことは、冒険者パーティクサナギの関係者と言うことでいいな」

「関係者も何も。私達はクサナギゼットよ」

「えっと、同じなのか違うのか」

「クサナギにしようと思ったら、すでに使われていたから、ゼットをつけたの。パーティを一緒にしたかったけど、同意がないとできないって」

「そりゃそうだな」

「で、なんなの?」

「ほら、これが鍵だ。この街の最北の門のところを右に入って、少ししたところにクサナギの拠点がある。自由に使っていいってさ」

「ありがとう」


 千里はカギを受け取って、出て行こうとする。


「ちょい待ち」


 ブレイクが千里と桃香を止める。


「何? さっきから」


「クサナギの関係者なら依頼がある」

「嫌よ。私達にはやることがあるんだから」

「お前達、パーティランクは?」

「プラチナだけど?」


 ギルマスは、ニヤリと笑い。


「そしたら、ギルドに協力する義務があるじゃないか」

「「……」」

「と言うわけで、明日の朝、来てくれ」

「「……」」


 千里と桃香は黙ってギルドを後にした。




「千里、桃香、どこへ行きます?」


 御者台に座るレオナが聞いてくる。


「北門まで戻って」

「はい。承知しました」


 レオナとヨンは、それぞれ馬車の向きを変え、北へと戻る。


 ギルドから北へと向かい、王城周りを時計回りにぐるっと回って、さらに北へ。




 北門についたところで、右に曲がって、千里がきょろきょろと見回す。


「右に曲がってすぐのところって言っていたけど」

「……千里さん、ここじゃ?」

「ん? ここ、商店と倉庫じゃない?」

「でも、場所的に……」

「よし、カギを突っ込んでみよう」


 千里は、馬車を降り、玄関のドアのカギ穴にカギを突っ込む。

 そして、ひねる。


 ガチャ


「桃ちゃん、開いたよ。ここだよ。ここだったよ」


 中に入ろうとする千里にレオナが声をかける。


「千里ー、ここでよかったのなら、馬車はその倉庫に入れていいのですか?」

「ちょっと待って。色々見るから。桃ちゃん、来てー」

「はーい」


 桃香も千里と一緒に建物の中に入っていく。


「ふむふむ、一階はオープンなスペースなんだね。テーブルがあって、椅子もいっぱいある。これ、みんなで座れるんじゃ……」


 千里は、テーブルの上のメモを見つける。


『貴博さんかな、真央ちゃんかな、千里ちゃんかな、桃ちゃんかな。いらっしゃい。ここが私、恵理子と優香さんと仲間達が住んでいる家です。私達が戻るまで自由に使ってね。横にある倉庫は、訓練場に改造してあります。そこも使ってね。もし、家のことで何かあったら、モデール・ハウスンさんを訪ねてね』


 なんだよ、モデール・ハウスンって。


 という突っ込みはここでは入れないでおく。


 何にせよ、優香さんと恵理子さんがこの世界にいることが分かった。

 それだけでも嬉しい。


「恵理子さん、優香さん、会いに行きます!」

「千里さん、待っててって書いてあったじゃないですか」


 意気込む千里に桃香がすかさず突っ込みを入れる。


「だけど桃ちゃん。会いに行った方が」

「そうかもですが、さっき、ギルマスに何か言われましたよね」

「うーん」


 千里は、考えてはみたものの、気になることを先に済ませることにする。


「桃ちゃん、探検しよう」

「はぁ。そうですね。確認しましょう」




 一通り建物の中を見回ったところで、馬車を裏庭にとめ、皆で一階の食堂に集まった。


「ヨン、どう? ご飯作れそう?」

「ええ、食材を買ってこればですが」

「じゃあ、ひとっ走り頼める? 私らはひとっ風呂浴びるから」

「……承知しました」


 ヨン達第四騎士団は、買い物のため、建物から出て行った。




 食堂で晩御飯を食べながら相談するクサナギゼット。


「今後の予定だけど」


 千里が口を開く。


「ギルマスが明日来いって言っていましたよね」


 千里がわざと無視していることをわかっていながら、桃香が突っ込む。


「うん。二人の足取りが知りたいから、ギルドに行くのはやぶさかじゃないんだけど」

「それについては、一度ギルドに行きましょう。他にもあります?」

「私としては、恵理子さん達を探しに行きたいのと……」

「待っててって書いてありましたよね」

「だけどさ、どっちへ行ったかわかれば対策もとれるじゃん?」

「それはそうですが、すれ違う可能性もありますよ」

「だけど、待っているのって性に合わなくて」

「わかる気がします。ですが、それも情報を集めてからですね」

「うん」

「他には?」

「この家だけど。恵理子さん達のパーティも大所帯だよね、きっと。そしたらさ、一緒に住めないじゃん」

「どうします」

「近くに同じような家がないかなって」

「それはいいかもしれませんね。ご近所さんになればいいわけですし」


 ここでは、「また」とは言わない。

 前世では恵理子と優香が住むマンションの近くで二人で暮らしていたので、「また」と言ってもいいのだが、この世界では通用しない。


「と言うわけで、レオナ、モデール・ハウスンさんをお願いね」


 突然振られたレオナは戸惑う。


「モデール・ハウスンさんって誰です?」

「多分、不動産屋さん。ハウスン商会とか、そういう名前じゃないかな」

「はぁ。明日、聞いてきます」

「よろしく。それでね。私としては、最西端に行ってみたい」

「それは、私達が育ったような屋敷があるかもってことです?」

「うん。きっと優香さんも恵理子さんもそこで育ったはず」

「本当にあるかはわかりませんが、確かに気になります」

「でしょう。冬になる前には行ってみたいね」

「なあ千里」


 話を聞いていたローレルが口を挟む。


「身近なものから少しずつやっていった方がいいんじゃないか?」

「それもそうか。じゃあやっぱり、家探しとギルドの依頼からだね」



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