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野生の鳥に釣られるリーシャ(優香と恵理子)

「「……」」


 リーシャの告白に、優香と恵理子がさらに視線をそらしてワインを口にする。


「そ、そんな」


 リビアの言葉に、


「この世界では重婚は当たり前。何も不思議なことではないでしょうに」


 リーシャは再びフォークに肉をさして口に運ぶ。

 リビアは、優香と恵理子に視線を送る。もしかしたら、この二人がいなくなれば……


「言っとくけど、このお二人に害をなそうとしたら、私があなたを、あなた達の国を亡ぼすから」


 リーシャの言葉を聞いていた、リビアと同席している文官、武官は、すでにワイングラスもカトラリーも置いている。テーブルの下のこぶしは握られ、そして、獣人の尾は太く膨らみつつある。


「ねえ、このパーティ、クサナギの勇者様と聖女様がなんて呼ばれているかはこの大陸には伝わっていないの?」


 リーシャはフォークをフリフリして、宣言する。


「孤高の野良猫を従えし勇者様と聖女様よ」


 パシン!


「ドラゴン族を従えし、だ!」


 ブリジットがリーシャの頭をはたいた。


「なにすんのよ。孤高の野良猫でも、このパーティが最強だってことには変わらないじゃない」

「そりゃ変わらないかもしれないが、威厳が違うだろう」

「じゃあ、鞭をふるう女王様を従えし、にする? 変わらないわよ。最強だもの、勇者様と聖女様は」

「おやめなさい」


 恵理子が二人をたしなめる。ゲーブルの対岸で殺気が高まっていることもあるし、そもそもちょっと恥ずかしくなってきた。


「王子殿下、二人がお見苦しいところをお見せし、申し訳ありませんでした」


 恵理子がリビアに対して頭を下げる。

 リビアは実は何も感じていない。むしろ、物事をはっきりというリーシャにより一層惹かれているくらいだ。


「いや、まったく気にしていません。お付きであっても、自由に発言でき、一緒に食事ができる、いい関係だと思いました」

「ええ。私達は家族ですから」

「そうですよね」


 恵理子の答えに納得しつつも、リビアは、話を変える。


「ところで、皆さまは明日以降のご予定は?」

「私達はたいてい、街に到着した翌日は、情報収集や旅の準備、時間があれば魔物討伐などの常設依頼を受けたりしています。その翌日に出発となります」


 恵理子がおおよそのクサナギの予定を伝える。


「お二人は?」

「私達はたいてい情報収集のため、冒険者ギルドへ行きますが」


 優香と恵理子達はたいてい冒険者ギルドだ。貴博達の情報収集も貼り紙もせねばならない。


「では、お付きの方々も一緒に行動されるのでしょうか」

「役割分担です。たいてい私達についてくるのは、リーシャとブリジット、ネフェリとリピー、アクアとパイタンですね。残りのものが旅の準備等を行っております」

「魔物討伐にはいかないのですか?」

「他の者が行くと」

「あの、リーシャ様、私達と一緒に魔物討伐に行きませんか?」

「行かない」


 あっさりと断るリーシャ。


「よい狩場を知っているのですが」

「タカヒロ様とマオ様と一緒にいると」


 リーシャはそっけなく答える。


「では、野生の動物はいかがでしょうか。野生の鳥がおいしいですよ?」


 リビアは魔物をあきらめ野生動物で釣ってみる。


「……」


 ちょっとだけ気を引かれたリーシャ。


「もし、興味がおありなら、狩りに行く準備をさせます」

「野生の鳥……」

「串焼きにしてもたれをつけて焼いても、魔物の肉よりずっとおいしいのです」


 リーシャは優香と恵理子の顔を見る。


「いいわよ。行ってらっしゃい。みんなの食べる分を取って来てね」

「はい。必ずや」


 リーシャが野生の鳥に折れた。


「姫様隊、それにブリジット、ついて行ってね」

「「「はい」」」


 恵理子は、ブリジット達に命じる。リーシャをフォローしろと。


「タカヒロ様、マオ様とおっしゃったか」


 突然リビアの後ろの騎士から声がかかる。

 よく見ると、あの手紙の騎士だ。


「なに?」

「明日、午前中に胸を貸していただけないだろうか」

「いやよ」


 恵理子が即答する。


「ドラゴン族を従えし勇者様と聖女様の強さを身に覚えたいのですが」


 一緒にいる騎士達もにやにやしている。

 これは、相手をしないと馬鹿にされるパターンかな。そう、優香も恵理子も思う。


「わかった。午前中だね。ネフェリとリピー、アクアとパイタンは僕らについて来て」


 優香が仕方なしに承諾する。


「「「「わかりました」」」」

「それじゃ、王子殿下。本日はお招きいただきありがとうございました。私どもは、まだ宿をとっておりませんので、今日はこの辺で失礼いたします」


 そう言って、優香と恵理子は立ち上がる。

 それに次いで、エヴァもリーシャ達も立ち上がる。


「それじゃ、明日の朝、迎えに行くから」


 リビアからのそれだけの明日の予定を聞いて、優香たちは屋敷を後にした。




 宿は、どうしても大きなところにせざるを得ない。

 タロとジロを置いてくれるところ、あの巨大馬車を置かせてくれるところ。そうなると、選ぶことはできない。

 よって、街の中心近くにある高級宿を押さえることになる。

 そのため、領主の屋敷からはそう離れないところになってしまう。


「まあ仕方ないか」


 優香がぽつりと愚痴をこぼす。


「仕方ないわよ。それに、あんなことがあったからって、襲ってきたりしないわ、きっと。王子様、ほっぺた赤かったし」

「だけど、ラフィットでも似たようなことあったしさ」

「あの時はエヴァだったわよね。まあ、いざとなったら最後は何とか逃げましょう。私達にはそれができるわ」

「そうだね」




「明日の予定だけど」


 部屋での家族会議で、優香が確認する。


「僕、マオ、ネフェリとリピー、アクアとパイタンが騎士の相手をする。リーシャとブリジット、姫様隊、リシェルとローデリカが王子の相手で狩りに行く。残りが旅の準備と市場調査でいい?」

「あの」


 ミリーが手を上げる。


「リシェルとローデリカを連れて行かれると、会計係が……」

「そっか、じゃあ、トリシャにウルリカ、狩りに行ってくれる?」

「「はい、承知です」」

「オリティエ、二人抜いて大丈夫?」


 恵理子がオリティエ隊の隊長のオリティエに聞く。トリシャとローデリカ、二人ともオリティエ隊だ。


「はい。市場調査などはミリー隊と協力しますし、宿に泊まっていれば家事も少ないですし」

「ありがとう。じゃあ、そういうことでよろしく。ミリー隊も協力お願い」

「もちろんです」


 ミリーも承諾する。




「リーシャ、明日、何を狩るんだっけ」


 優香がリーシャに聞く。


「野生の鳥って言ってた。シチメンチョウがこっちにもいるのかな?」

「どうだろうね。食べがいのあるものが獲れるといいね。うち、大所帯だし」

「リーシャ、ブリジット、また競い合って自然破壊をしないようにしなさいよ。ほどほどでいいからね」


 恵理子がザリガニの件を思い出して、忠告する。


「「はーい」」

「それと、一応、王子様に接待を受けるんだから、無視しちゃだめよ」

「「……」」


 正直、リーシャもブリジットも王子の相手を不備なくできるか自信はない。

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