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ジョセフィーヌの特訓(千里と桃香)

 洞窟に来て三日目。


 千里達クサナギゼットは洞窟にもぐりこんで訓練を続ける。

 ミケやブチ、猿人族もいなくなったので、キキとララも出て来て、しかも、治癒魔法も使い放題だ。

 つまりはファイトアンドヒール。

 魔物もいないので気兼ねなく訓練に励む。

 もちろん、武器を使うと同時に魔法を発動させる対人戦だ。


 この日は、千里がジョセフの相手をしている。


「ジョセフ、気に入ったからって、剣に炎をまとわせるだけじゃ、ただの剣と変わらないから」


 ガキン、ガキン!


 と、千里はジョセフの剣を払い続ける。


「わかっている、わかっているがー、ファイアバレット!」


 ジョセフィーヌはまだ千里達、いや、ヨン達ほどまで剣技と同時に魔法を発動させることがうまくできていない。


「ほら、魔法を撃つと、動きが止まるよ。いつでも、どんな時でも魔力操作だよ。ゆっくりでいいから、二つのことを同時に」


 シュパン!


 ジョセフィーヌのファイアバレットが簡単に千里のウォーターバレットで相殺される。


「クッ!」

「はい。次々に!」

「くそ―、ファイアバレットー!」


 ジョセフィーヌが剣を上段から振り切ると、その剣先からファイアバレットが飛んだ。


「おー、いい調子だけど、できれば別の場所から出したいね」

「はぁはぁはぁ」


 ジョセフィーヌはぎゅっと剣を握り締める。


「師匠! もう一本お願いします!」

「何度でもいいよー」

「ファイアバレットー!」




 洞窟に来て四日目。


 この日は、桃香がジョセフィーヌの相手をする。が、千里より優しいのか厳しいのかわからない。


「ジョセフィーヌさん、走りますよ。剣を振りながら、魔法を発動させながらです。三つ同時にやりますよ」

「なっ!」


 ジョセフィーヌは走る。


「ほら、剣筋が曲がっています」

「ほら、ファイアバレット、詠唱失敗してる」


 次々に桃香から指示が飛ぶ。


 バタン!


「ちゃんと足元見て走らないから」


 ゴイン!


「ほら、ちゃんと前を見ないと岩にぶつかっちゃいますよ」

「体力の限界が来たら教えてくださいね。体力回復のヒールかけますから」


 と、いつまでも桃香に走らされるジョセフィーヌ。




 洞窟に来て五日目。


 この日は、ローレルがジョセフィーヌに指導する。


「さ、ルージュとフォンデの訓練を見ながら魔法の発動をしようか」


 二人の目の前では、ルージュとフォンデが訓練を行っている。

 両者ナイフを両手に握って、お互いエルフ同士。


「ジョセフ、イメージも大事だから、ちゃんと見るように」

「はい」


 本来なら、千里と桃香の訓練を見るべきだが、速すぎるわ高度すぎるわで、目が追い付かないのが現状だ。

 というわけでルージュ達の訓練を見ているわけだが、


「ほら、魔力操作しながら!」


 と、見ることに夢中になっているとローレルに叱られる。また、突然、


「ファイアバレット!」


 と、ローレルが指示を出す。


「あ、え、ファイアバレット!」

「遅い!」


 と、叱られる。

 だが、ジョセフィーヌはめげない。


 この日の訓練が終わりかけるころ、ジョセフィーヌはルージュ達の訓練を見続けていた。魔力操作をしながら。深く集中しながら。

 それを見ていたローレル。


「ほぉ」


 と、声を上げる。


 ジョセフィーヌは、ルージュの戦い方を見ながら、自分の周りにファイアバレットを出そうとしているのか、小さいファイアバレットがいくつか浮くようになった。

 しかし、ジョセフィーヌはそれに気づいていない。


「ジョセフィーヌ、今日最後に、私と撃ちあおうか」


 と、ローレルが声をかける。


「はい。よろしくお願いします」


 ジョセフィーヌは、剣をかまえた。


「ジョセフ、イメージ」


 ローレルがジョセフィーヌに助言をする。


 ジョセフィーヌは、集中する。

 そして、魔法と剣技の同時攻撃をイメージする。


 ジョセフィーヌは、ローレルの目を見つめている。その一方で、ジョセフィーヌの周りにファイアバレットが小さいながらもいくつか発動体勢に入る。

 そして、


「やー!」


 と、ジョセフィーヌが切り込むと同時に、ファイアバレットがローレルに襲いかかった。

 ローレルは、危なげもなく、ファイアバレットをウォーターバレットで相殺し、ジョセフィーヌの剣をナイフで受けた。そして、


「ジョセフィーヌ。上達したじゃないか」


 と、声をかけた。


「い、今、ファイアバレット出ましたよね。いくつ出ました?」

「え? 意識してないのか? 六つだ」

「六つも! よし!」


 ジョセフィーヌは剣を握りしめる。


「ローレル、もう一本お願いします」

「いいよ」


 そう言って、両者は剣とナイフをかまえた。


 ジョセフィーヌは、成功したり失敗したりを繰り返しながら、それでも自分の上達を喜んで何度も何度もローレルに向かった。




 洞窟に来て六日目。


「さて、明日は街に帰らなきゃだから、今日は最後の訓練だね」


 千里はそう言って、桃香たちを引き連れて再び洞窟へと入っていく。


 第二階層は相変わらず、魔物も何もいない。


「じゃあ、今日は最後だから、お片付けをしよう」


 千里が皆に言う。


「えっと、千里さん、何を?」


 桃香が疑問の声を上げる。


「あれ」


 と言って、千里は、第二階層の奥にフローラが作った氷の壁を指さす。


「あれですか?」

「そう。あれ、取り除いておかないと。でも、取り除いたらどうなると思う?」

「スタンピードが起こるかもしれませんね」

「うん。けっこうたまったよね。じゃあ、みんな、壁際まで移動」


 そう言って、氷の壁の近くまで寄る。


「みんな、たぶん、ものすごい数の魔物が出てくる。だから、魔法の散弾を撃ちこみつつ、剣をふるわないと抜かれるよ。いい?」


 千里はメンバーに声をかけて行く。


「「「はい!」」」

「私と桃ちゃんとフローラは最後列。取り残しをやる。ローレル達と第四騎士団は最前列」

「「はい」」

「レオナとルシフェは真ん中で魔法中心」

「「はい」」

「ジョセフ!」

「はい!」

「どうする?」

「最前列、行きます!」

「よし。頑張れ!」

「はい!」


 ジョセフはわざと真ん中。ローレルとヨンの間に立つ。

 それを横目で見て、ローレルもヨンもにやりと口角を上げる。


「じゃあ、フローラ、よろしく。氷の壁を取っ払っちゃって」

「はい。取り除きます。メルト!」


 バシャッ!


 氷の壁が溶けて水と化す。

 その向こうから、動きの素早いホーンラビット、ホーンウルフが集団で突入してきた。

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