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王都での生活スタート(優香と恵理子)

「え、違いますよ。名をあげるんです。私達もそれをサポートします」

「で、これ、いくら?」

「はい。金貨二百枚ほどです」

((……相場がわからない))

「払えるの?」

「盗賊の財宝を売れば払えると思います」

「その後の生活は?」

「そっちは私達も薬草採取や魔物討伐を頑張ります」

「ここがいいの?」

「「「はいっ!」」」

「わかった。じゃあ、手続きもお願い」

「わかりました!」


 会計係のリシェルが元気よく答えた。


「じゃあ、リシェル、馬車を止めるところも必要だし、裏庭には、ヨーゼフたちの小屋も作ってほしい。そういうの、頼める?」

「はい。任せてください。ローデリカ、行こう!」

「うん」


 リシェルとローデリカは走っていく。


「大金を持たせて大丈夫かな」

「多分、不動産屋を連れてくるのだと思います」

「そっか、そりゃそうだよね」




 しばらくミリー達と敷地内をうろうろし、あれが欲しい、これが欲しいとやっていると、玄関前に黒塗りの馬車が止まった。


 馬車から、きれいに着飾った商人と、従業員らしき男女の二名が降りてきた。


「毎度お世話になっております、不動産と言ったら私ども、ハウスン商会。わたくし、社長のモデール、モデール・ハウスンと申します。以後お見知りおきを」


 モデールは深々と頭を下げた。後ろの従業員もそれに習う。


「あの、えっと、冒険者のタカヒロです」

「それで、今回はこの建物をお求めになられるということですが、この建物はいかがですか?」


 モデールは、タカヒロとマオを品定めし、シルバークラスにしてはいい恰好をしている、もしかしたらバックに貴族などの大物がいるのかもしれない、と、想像する。


「はい。金貨二百枚とのことですが」

「おっしゃるとおりです。ただ、もしよろしければ、金貨五十枚を追加してくださるだけで、内装を整えて見せましょう。さらに五十枚を追加してくだされば、倉庫や裏庭なども整備しますが」


 優香がメンバーの顔を見回すと、目を輝かせてうんうんと言っている。

 リシェルとローデリカに目を向けると、「大丈夫」と目で訴えてくる。


「わかりました。では金貨三百枚をお支払いしますので、この建物の整備も含めてお願いします。この子達の要望を聞いてあげてください」

「さすがです。思い切りがいいですね。もうちょっと吹っ掛けてもよかったのでしょうか」


 と、モデールは笑う。


「契約書はちゃんとしてくださいよ」

「もちろんですとも。おい」


 と、モデールは後ろの従業員に声をかける。

 すると、契約書とペンを渡してきた。


「リシェル、ローデリカ、契約書を見てくれる?」

「お任せください。こう見えても元商家の娘です」

「昔、父に叩き込まれました」

「おっほっほ、頼もしい方々がいらっしゃるのですね。ですが。私ども、信用第一です。だまそうなんて、これっぽっちも思っておりませんよ。お客様にはいい思いをしていただいて、あわよくば、二つ目、三つ目をお願いしたいと思っております」

「二つ目三つ目はいらないと思うけど、内装とかでお願いすることもあると思います。その時はよろしくお願いします」


 そう言って、二人はサインを交わした。




 こうなると、ハウスン商会の動きは早く、とりあえず、建物の方を住めるようにした。掃除をして、ベッドや机のそれぞれ十四台もあっという間に運び終わる。キッチンや浴室、トイレなども整備が終わる。食堂やミーティングルームには人数分のソファに大きなテーブルまで。


「タカヒロ様、今日はお祝いをしてもよろしいでしょうか」

「うん。いいよ。お願いする」

「あ、あのー」


 と、オリティエがそっと手を上げる。


「お酒……」

「飲みすぎないならいいよ。リシェル、食材の買い出しをお願い。ヨーゼフたちのご飯の分も忘れずにね」

「はい。かしこまりました。馬車の荷物は建物にすべて持ち込みました。財宝は三階奥、タカヒロ様の執務室の隣です。なので、馬車をお借りします」

「借りるとかじゃなくて、自由に使って。お願いね」

「はい!」


 その日の夕食はパーティになった。ヨーゼフとラッシーも一緒に。




 翌日から一週間を自由時間とした。新たな生活を始めたのだ。始めれば必要なものも見えてくる。それに、共同生活だ。決めないといけないこともあれこれ出てくる。特に、留守番だ。一週間もしたらおそらく冒険者としての活動を始める。その時は鍵でも閉めて行こう。しかし、ここに滞在の間は交代制となった。財宝が置いてある。しかたもない。いざとなったらヨーゼフとラッシーだ。


「じゃあ、ちょっと出かけてくる。夕方には戻るから」

「はい。留守はお任せください」


 優香と恵理子が二人で部屋を出た。ドアが閉まるのを確認した瞬間、全員が目配せをする。よし、行ったと。


「リシェル、仕立て屋さんを呼んできなさい」

「はい。わかりました」




 優香と恵理子は、城壁の内側に沿って東門を目指す。ほぼ真北にある家から東門までおよそ三十分もかかった。


「ってことは、一周約十二キロ、直径四キロってところかな、この都市」

「大きいわよね。それだけ人も住んでいるんでしょうけど」

「さて、ちょっと東の森まで行ってみない?」

「いいわよ。暇だし」


 二人は東門から東に向かって走り出す。歩いて三時間。なら、走ったら半分くらいで着くだろうと。今日は、ヨーゼフ達は置いてきている。町中を堂々と歩かせるわけにはいかない。

 一時間ほどすると、小さな集落が見えてくる。これがギルド受付嬢の言っていた村か。高級そうな宿や店はない。貴族や金を持っている商人なら、王都まで行って泊まるのだろう。

 村を通り過ぎて、森にたどり着く。

 一応、森の中へ馬車が通れるくらいの道が続いている。

 その道に沿って走って行くと、時々冒険者ともすれ違う。道から外れて薬草を探している冒険者もいる。魔物は……この辺りにはいないのか。

 さらに一時間くらい走ると、湖に出た。道は、ここまでしかつながっていないようだ。ただし、湖畔がそれなりに広く、キャンプもできそうだ。前世だったら家族づれが遊んだり休んだりするのにちょうどよさそうだ。そう思った。


 優香は、火を焚いて休んでいる冒険者パーティに声をかける。


「あの、すみません。魔物討伐って、どの辺でできそうです?」

「ん? なんだ、この辺は初めてなのか?」

「はい。最近王都にやってきました」

「そっか。魔物だったらこの湖より東、薬草採取なら西だ。東でも薬草は取れるが、薬草採取に夢中になっていると襲われるからな」

「ありがとうございます。今度、行ってみます」


 優香と恵理子はお礼を言って、元来た道を走りだした。


「うーん。やっぱり遠いね。そう考えると、街中で仕事を探した方がいいのかな」

「とはいえ、シルバークラスに任せてもらえそうな仕事がそうそうあるかしら」

「だよね。やっぱり武闘会かなぁ」


 二人は、王都まで戻る。東門から入り、貴族街の城壁に沿って、南を回って帰ることにする。南に衛兵の詰所があるのだ。



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