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二十四人目のクサナギ(優香と恵理子)

「え? 私も?」


 ベルが人差し指を自分の顔に向け、首をかしげる。


「???」


 オッキーもわからないと、首をかしげる。


「まあ、いいじゃない。オッキーもマティも着替えて。さあ急いで。じゃないと、ベルと二人で行っちゃうよ」

「あ、待って、今着替えるから」

「そういうエヴァだって、昨日のままじゃない。パンツ、そのままでいいの?」


 エヴァは一瞬で顔を赤くする。


「私も着替える……」


 オッキーとマティは着ぐるみを、エヴァは昨日から着ているメイド服を脱ぎ始めた。


「ちょっとちょっと……」

「え、女の子同士だからいいじゃん」


 エヴァが言う。

 だが、ベルの視点は違った。


「って言うか、あなた達、いい下着をつけているのね。さすが姫様……」

「……ちょっと前のシリアス加減、どこへ行ったの?」


 エヴァがつぶやく。


「さあ、着替えたから、行きましょう」


 マティが声をかける。


「ごめんちょっと腰の紐……」

「はいはい」


 エヴァがオッキーのメイド服の紐を結んだ。


「ありがとう、エヴァ。さ、行こう」


 オッキーが先頭を歩き、マティとエヴァがベルの手を取って歩く。


 トントントン


「姫様隊です」

「入って」


 返事はリーシャの声だ。


「「「失礼します」」」

「失礼します」


 三人に続いて、ベルも頭をさげて優香たちの部屋へと踏み入れる。


「全員揃ったね」


 優香の確認に続き、恵理子が話を進める。


「それじゃ、タカヒロ、お願い」

「んん。えっと、みんなに報告がある」


 全員が優香に注目する。


「昨日、とある母親から一人の娘を託された。よって、うちの家族として、一人迎え入れるから。よろしく頼む」

「「「「はい」」」」

「「「え?」」」

「え?」


 オッキーとマティ、そしてエヴァ、さらには、ベルが疑問の声を上げる。

 ベルは続けて言う。しかも早口で焦った様子で。


「私、私はオッキー達に、皆さんにしてはいけないことをしました。その罪を償わないといけません。だから、ダメです。私は、私にはそんな資格はありません。私はこれからもう一度、辺境伯邸へ行って自首します。お気持ちは、うれしいです。受け入れてくれるって言ってくださって、私は幸せです」


 ベルは涙を流す。そして、話し続ける。


「でも。私は汚れています。汚れているんです。だから。ダメなんです」


 ベルは右肩を左手で抑えて、膝を落とした。


「ベル、服を脱いで」

「え?」


 恵理子の言葉に、涙にぬれた目を恵理子に向けるベル。


「だから、脱いでって」


 戸惑っているベルに恵理子が再度命じる。


 なぜ。こんなところでなぜ服を脱がされるのか。


 だが、自分には断る権利もない。


「はい」


 ベルは、ベストのボタンをはずし、脱ぐ。

 そして、シャツのボタンを外す。

 左腕をシャツの袖から抜き、ためらいながら右腕も袖から抜いた。


 その右肩にあったもの。

 ベルリン商会、というより海賊の紋章の入れ墨だった。


 ベルはそれを左手で隠す。


「ベル。左手をどけなさい」


 恵理子がベルに命じる。


「は、はい」


 ベルは、右肩の紋章をさらす。

 恵理子は、その肩に右手を置き、左手で紋章を包み込む。


「メガヒール」


 恵理子は、治癒魔法を唱えた。

 ベルの右肩が薄緑色の光に包まれ、その光が収まった時、ベルの右肩にあった紋章は無くなり、きれいな肌が戻っていた。


「え?」


 ベルは驚いてばかりだ。

 だが、刺青が消えた。あんなに消したかった刺青がこんなに簡単に消えてしまった。


「えっと、あの、これ」

「ベル。貴方は海賊の一員じゃありません。いいです? 貴方は今日から、いえ、昨日、貴方の母親から貴方を譲り受けたその時からクサナギの一員です」

「ですが、ですが私は罪を……」

「何の罪? オッキー達と一緒にいた時に二人の海賊に襲われた。そうでしょう?」

「違います。私がそこへ連れて行ったんです。私がやったんです。罪を償ってきます」

「もしそうであっても、その被害者である三人がそれを認めないわ。誰も証言しない。どこに犯罪の証拠があるの?」

「……」

「とはいえ、一度、辺境伯のところに説明に行きましょう。昨日、行ったのよね」

「はい」

「じゃあ、それは後でやるとして。他に何かある?」


 誰も異論を唱えない。


「それじゃ、さっき言った通り、昨日からベルはクサナギのメンバーです。家族です。お願いね」

「「「「はい。恵理子様」」」」

「恵理子様?」


 ベルの疑問は無視される。

 そして、恵理子はメンバーを解散させるとともに、リシェルとローデリカにお願いを続ける。


「はい、解散。リシェル、ローデリカ、悪いんだけど、ベルのパーティメンバー登録のために冒険者ギルドへ。その帰りに、キザクラ商会へ行って、メイド服と団服を。必要なら、下着もお願い」

「「はい」」

「姫様隊。それに付き合うこと」

「「「はい」」」




「ベル!」


 エヴァがベルに抱きつく。


「ベル!」


 マティも抱きつく。


「ベル!」


 オッキーも背中からベルに抱きつく。


「あ、ありがとう。ありがとうみんな。嬉しい。嬉しいよー」


 四人は涙を流しながら、喜びをかみしめる。

 だが、現実はそう甘くはないとベルは考える。


「あの、マオ様? 恵理子様?」

「身内だけの時は恵理子でいいわ」

「恵理子様。私、罪を償わないといけないと言われたら、一緒に行けないのですが」

「大丈夫よ。その時は、街ごと証拠隠滅するから」


 そう言って恵理子はけらけらと笑った。

 笑えないわ。ベルは引きつった笑みを浮かべた。


「あの、タカヒロ様」

「あ、身内の時は優香で」

「え? 優香様?」

「そう。優香で」

「あの、優香様、私の裸、見ました?」


 ベルは、優香という名前が男性の名前なのか女性の名前なのかわかっていない。

 ベルにそう言われた優香は仮面を外す。


「これでいい?」

「え?」


 まだ驚かされることがあるのか。ベルは思う。


「そう。私は女性です」

「はぁ。男の人に裸を見られちゃったのかと思いました。もしかしたら結婚しなきゃいけないのかと……」

「表向きには優香さんは男性だから、気を付けてね」


 ベルの勘違いを無視して恵理子が忠告する。


「はい。承知しました」

「ほら、リシェル達が待っているわ。行きなさい」

「はい。優香様、恵理子様」

「行こう!」


 エヴァがベルに声をかける。


「うん。行こう」


 四人は、笑いながら部屋を出て行った。


「あー、忘れていたけど、姫様隊に入れてねー」


「「「はーい」」」


 こうして、ベルは二十四人目のクサナギのメンバーとなった。





 シーガルの街から逃げ出したベルの母親、リンドバーグ。海賊の拠点まで船でやって来た。しかし。


「拠点、無くなってるじゃない。黒焦げじゃない。誰もいないじゃない。宝すらない。どうなってるのー!」


 そう、叫び声をあげた。



わんも「優香さん、恵理子さん、ひとまずお疲れさまです」

優香&恵理子「「……」」

わ「あれ? どうしました?」

優「ひとまずって、今回、ここでおしまい?」

恵「ちょっと短くない? 私達、活躍した?」

わ「後の方からですが、かっこよかったですよ。お二人とも」

優&恵「「……」」

わ「あの、ファイアボールを消した真っ暗の中、どうやって帰ったんですか? 夜目が効くんですね」

優&恵「「……」」

わ「それから、前の方ですが、ちょっと千里と桃香のお話をと」

千里「なになに、もう私達の出番?」

桃香「優香さん、恵理子さん、いいのですか?」

優香「だって、わんもが……」

恵理子「私達をあんまり出してくれないし。他に好きな女ができたんだわ」

わ「……誤解を招くようなことを」


わ「で、ですね。この年、三組が旅立ちました。そういうところです。なので、三組を順番に書けたらなと、思っているわけです(そううまくいくかわかりませんが)。じゃないとまた、だれだれが長い、とかなるでしょうに」

千里「じゃあ、私達も少しずつってこと?」

わ「優香さんと恵理子さんが旅立って三年目、千里と桃香が二年目、貴博と真央が一年目です。千里、もうすぐ会えるかもしれませんよ、愛しのセンセに」

千「……(ぼふん)」

わ「殴る準備はいいですか}

千「……(もじもじ)」

わ「こんな千里ですが、千里と桃香編に入ります」

千&桃「「よろしくお願いいたします」」

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