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海賊(優香と恵理子)

 オリティエ隊サイド。


「「わふ」」


 とある喫茶店の前でヨーゼフとラッシーがお座りをする。


「ありがとう、ヨーゼフにラッシー」


 オリティエはヨーゼフとラッシーの頭をなでて二頭をねぎらう。


「ちょっと待ってて」


 オリティエはそう、他のメンバーに言うと、


 ドン!


 と、ドアを蹴り破った。


「な?」


 中にいた男、リックが椅子から立ち上がり、部屋の奥へと逃げていく。


「さて、行きましょうか。ヨーゼフ、ラッシー、お願いね」

「「わふ」」


 ヨーゼフとラッシーが立ち上がり、喫茶店に入っていく。オリティエ隊がそれに続く。


 ヨーゼフもラッシーも迷うことなく、地下への階段へとオリティエ隊を案内する。

 そこでは、リックが慌てて逃げたせいか、すべての扉が開いていた。


「ヨーゼフ、ラッシー、ここまででいいわ。これから先、鼻がつらそうですもの」

「「わふ」」


 オリティエは、ヨーゼフ達を置いて、階段へと飛び込んだ。それに他のメンバーも続く。




 地下室に降り、そしてさらに階段を降りて、地下下水道へと足を踏み入れるオリティエ隊。


 しばらくすると、ドアがあり、その中の部屋に、五人の男女がいた。


「あら、こんなところにいたの?」


 オリティエが姫様隊に声をかける。


「オリティエ、ありがとう。迎えに来てくれたのね」


 オッキーが姫様隊を代表してオリティエにお礼を言う。まるで、リックとベルの状況が見えていないかのように。


「ええ、オッキーもマティも、エヴァも、全然平気そうね」

「来てくれると信じていましたから」


 マティが答える。


「さてと」


 オリティエが視線をずらすと、そこには、ベルの後ろから首に左腕を回し、右手に握ったナイフでベルのほほを今にも刺そうとしている男が目に入る。


「オッキー、この状況は?」

「わからないけど。自作自演?」


 そうオッキーが状況を説明すると、ベルが、違う、と、言葉には出来なかったが、涙を流す。


「そ。じゃ、二人とも殺していいのね」


 オリティエはベルの涙を無視する。


「その子、ベルは裏切られたっぽいけどね」

「そうなの。でもいいわよね。もともと仲間なら」


 オリティエがそう言うと、ベルは涙を流したまま視線で懇願する。助けてと。


「おい、この女がどうなってもいいのか?」


 リックが、あまりにも自分が無視された状況を不満に思ってか、声を発する。


「いいに決まっているじゃない。私達の家族じゃないし」


 オリティエがそっけなく答える。


「見殺しにするのか?」

「その女、タカヒロ様に色目を使った女でしょ? 万死に値します」


 やっぱり、オリティエは覚えていたか。オッキーは思う。


「オリティエ、この部屋、鍵を閉めて閉じ込めちゃったら、そのうち死ぬんじゃないかしら。二人とも」


 状況が進まないことがめんどくさくなったオリティエ隊のローデリカが提案する。


「そうね。それがいいかもね。それじゃ、帰りましょうか」


 オリティエ隊が部屋から出て、オッキー、マティ、エヴァがそれに続く。


「貴様ら、させるか!」


 リックがベルを離して、エヴァに襲い掛かる。が、エヴァはこの冬の間、特訓をしたのだ。


「アイスランス!」


 バシュ、バシュ……


 四発のアイスランスが、リックの両肩、両腿に突き刺さる。もちろん、特訓の成果でエヴァは倒れていない。


「お願い、私も出して!」


 床に腰を落としたままのベルが泣きながら訴える。


「勝手に出れば」


 オッキーは、それだけベルに答えて、マティとエヴァを連れて部屋を出た。

 ベルは部屋を出ると、ぱたんとドアを閉めた。




 そのドアが、数時間後に開く。


「おーい、商品はどこだい?」


 格子越しに部屋を覗き込む男。


「あれ? 王女も女王もいないじゃん。もしかしてドタキャンかな? それともガセネタ? うーん。どっちも許されるもんじゃないんだけどな」

「た、たすけてくれ」

「おや? あー、リックじゃないか。商品はどうしたんだい?」

「黒い集団に連れて行かれた」

「そこはちゃんと言おうね。奪われた? それとも、取り返された?」

「取り返された」

「そうか。じゃ、相手は勇者パーティね。うーん。それは手ごわいな」

「助けてくれないか」

「どうしたの、その両肩と両腿、なんか刺さっているけど」


 男は格子のドアもあけて中に入って来る。

 そして、リックの頭近くでしゃがみこむ。


「なあリック、この場所、ばれちゃったんじゃね? もう使えないよね。残念だな。お前の顔も割れちゃっているし。どうする?」

「仮面でもなんでも付ける」

「そっか。でも、この場所が使えなくなったこと、商品が無くなったこと、厄介な敵を作っちゃったかもしれないこと。問題がたくさんなんだよね。それに、君は口を割る前にここで死んじゃったほうが僕らのためだと思うけど。それとも、もう割っちゃった?」

「割っていない。何もしゃべっていない。それに、何でもする。裏方でもいい、荷物運びでもいい。だから……」

「ねえ、この刺さっている氷、とったらどうなる? っていうか、すごいなこの氷、いつまで凍ってるんだ?」

「おい、ここで抜かないでくれ。このままヒーラーのところまで連れて行ってくれ」

「うーん。ここで氷が溶けちゃって、出血多量で死んでもらった方が、自然だねー」

「だから、助けてくれって。いや、助けてください。お願いします」

「そうだね。楽にしてやろう」

「な?」


 ゴキッ!


 リックの首が捻じ曲げられる。


「で、首をもとの位置に戻してと。氷を取ってと」


 男は氷を下水に流してしまう。


「さ、帰ろうかな。何かが見に来ないうちに。どうせ失敗だ。関わらない方がいい」


 男は部屋から立ち去った。




 ミリー隊サイド。

 辺境伯邸の門において、ミリー隊がダイを連れて門番に掛け合う。


「辺境伯を呼んでもらいましょう。こいつが言うには、辺境伯がうちのメンバーをさらうように指示したってことです、それを確かめさせてもらいます」

「閣下がそんなことするわけないだろう。そいつの出まかせじゃないのか?」

「さあ、ここで証言しなさい」


 ミリーがダイを前に引きずりだす。ダイは両手両足にアイスランスが刺さっているので動けない。また、ここではなぜか無言を貫いている。

 そのため、いっこうに話が進まない。


 そういうやり取りを門番とミリーが繰り返していると、その騒ぎを聞きつけた騎士達が集まってくる。


「一体何事だ」

「この者達がうちのメンバーをさらって金を要求しました。これがその証拠です」


 そう言って、マティの仮面を騎士達に見せる。


「それで?」

「この男が言うには、指示を出したのは辺境伯。事件の主犯はリックという男。この男は指示に従っただけだと言っています。それを辺境伯に確かめさせていただきたい」

「あのな、見てわかると思うが、というか、今日接待されただろう。辺境伯は、金貨千枚なんてケチなことはしないぞ。そいつが嘘をついているんだろう?」


 ガシッ!


 ダイの膝が折れる。ミリーが蹴りを入れた。


「ぐわっ!」

「どういうことですか?」


 ミリーはダイに問いかけるが、ダイは口を開かない。


 そしてついに辺境伯が現れる。


「こんな夜中に何なんだ」


 その姿を見たダイがようやく声を発する。


「辺境伯閣下、助けてください。今日のことを根に持って襲われました。しかもこいつら、辺境伯閣下のことを貶めようとしています。どうか、助けてください」


 辺境伯は黙ってダイをみつめる。

 そして、ミリーに言う。


「ミリー殿。このごみの処分はこちらで行いましょう」

「それは、仲間だから助けるとか、口封じとかではなく?」


 辺境伯は、騎士に命じる。


「ダイの服を脱がせろ」

「はっ」


 騎士がダイの服を引き破る。


「や、やめろ」


 ダイが抵抗できない抵抗をする。しかし、その腕に描かれていた紋章。


「ミリー殿。それはこの辺りにいる海賊の紋章だ。そう言うことだから、私が口封じをするとか、助けるということはない。ただ、処分するだけだ」


 そう言って、辺境伯は騎士に視線を向ける。

 すると、騎士は剣を抜き、ダイの胸にそれを突き刺した。


「ミリー殿。ごみを持って帰っても処分に困るでしょう。我々が焼却します」

「そうですか。承知しました。よろしくお願いします」




 ミリー隊は歩いて宿に戻ることにする。


「さて、オリティエ達は無事に姫様隊を助け出したかしら」


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