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千里と桃香のパーティ名(千里と桃香)

「あの、他国とはいえ、国王を呼び捨てにするのは」

「いいのよ。あいつ、ダメンズじゃん。振られてよかったのよ」

「ですが、コティ様は強くなりたいと」

「あなたが相手をすればいいじゃん」

「コティ様は、強い女性を連れてこいと言っておりまして」

「そのコティって子に言ってやって。まずは男を見る目を養えと」


 千里さんが言う? という目をする桃香。だが、それに気づいた千里が、桃ちゃんもね、という目をする。


「ということで撤収よ。男を見る目を養いたいって言うなら、呼びなさい。お姉さんが指導してあげるから」

「ちょっと、ひどい言われようですわ」


 ドレスを着た令嬢が現れる。


「わたくし、男爵家とは言え、一応貴族令嬢なのですけど」

「貴族令嬢って、政略結婚の道具だからって、人を見る目を養ってこなかったのね」

「な、なんて無礼な」

「そりゃそうでしょ。あんなチャラ男のどこがいいのよ。そもそも強い女って、セーラのことでしょ?」

「セーラ? 誰ですの?」

「セーランジェ・カイナーズよ」

「……この国の女王様じゃないですか。何で呼び捨てを!?」

「まあ、そのくだりはどうでもいいわ。ところで、あんな筋肉魔導士を目標にするとか言わないわよね」

「筋肉魔導士……」

「そうよ。ファルテンの王子の全力パンチをおでこで受けるような女よ? だけど本業は魔導士なの」

「……」

「千里、やめてあげて。ここにいないとはいえ、セーラがちょっとかわいそうになってきた」


 ローレルが千里を止める。


「まあ、セーラはいい子よ。努力家だしね。元々しょぼしょぼの魔導士だったけど、頑張ったのよ。頑張って強くなったのよ」

「それで、どうしてルディアス様が女王陛下を強いと?」

「折ったのよ。ルディアスの首を。文字通りにね。ルディアス、死ぬところだったんだから」

「……ルディアス様まで呼び捨て」

「そうゆうこと。もし、それを聞いてまだ強くなりたいなら、紹介状を書くわよ。セーラのお付きのミシルにね」

「そのミシルというのは……」

「セーラのメイドよ。セーラと一緒に鍛えたから、同じように強いわよ」

「鍛えた……。あの、失礼をいたしました。コティ・モーリーと申します。お名前をいただいてもよろしいでしょうか」

「私が千里、それから、桃香、ローレル、ルージュにフォンデ。三人は見ての通りエルフね」

「千里様、私、強くなれますでしょうか」

「あのね。きれいになりたい人はきれいになる努力をするからきれいになるの。それを人に聞いてどうするの?」

「そうですね。わかりました」

「ちょっと、紙とペンを貸して」


 千里が騎士に紙とペンを持ってくるように言う。

 受け取った千里は、手紙を書く。


「「ミシルへ。コティ・モーリーを鍛えてね。千里」っと」

「桃ちゃんもサインして」


 桃香も「桃香」とサインする。


「はい、コティ。強くなりたかったらミシルを訪ねなさい。そうでなかったら捨てていいわ」

「あ、ありがとうございます]


「それともう一通」


 千里はペンを走らせる。

 桃香もそれにサインをする。


「これ、ルディアスにね。ルディアスのお付きにしなさい。って、書いておいたから、こっちを選んでもいいわ。好きにしなさい」

「え? ルディアス様のお付きに推薦してくださるのですか?」

「貴方が、それを望むならね。どっちでもいいわ」

「あ、ありがとうございます」


 コティは、二通の手紙を胸にしまう。


「それで、皆さんは……」

「私達は明日にでもこの街を出るわ」


 千里は立ち上がる。


「それじゃ、御馳走様」


 桃香やローレル達も千里に続く。

 



 屋敷を出た千里が気づいた。


「あー依頼料もらうの忘れたー」

「まあ、仕方ないです。ご飯もおやつもいただきましたし。いいことにしましょう」

「うん。そうだね」


 千里はふとつぶやく。


「強いって言われるのもめんどくさいことが多いね」


 それに答えるのはローレル。


「千里、それじゃ、冒険者登録が終わったら、最短で目指すか?」

「うん。余計な依頼は受けない。まっすぐ行こう!」




 翌日。朝からギルドに顔を出す。


「おはようございます」


 受付嬢が明るく出迎えてくれる。


「冒険者登録の方、どうなったの?」

「はい。準備ができております。まずは皆さまのお名前をお聞かせください」

「千里」

「桃香」

「ローレル」

「ルージュ」

「フォンデ」

「レオナ」

「ヨン」

「ミー」

「チー」

「キー」

「リィ」

「シィ」

「ルゥ」

「スゥ」

「フゥ」

「ありがとうございます。皆さま、プラチナランク冒険者として登録させていただきます」


 受付嬢は、プレートに刻まれた名前の確認をし、最後の質問をする。


「それでは最後です。皆さまプラチナランクですので、冒険者パーティもプラチナランクとなります。冒険者パーティの名前はいかがいたしますか?」


 千里と桃香は顔を見合わせる。そして、受付嬢に二人同時に告げた。


「「クサナギ!」」




「「イエーイ」」


 千里と桃香がハイタッチを交わす。

 アルカンドラ大陸で貴博と真央がクサナギというパーティを組んでいる。

 私らも同じ名前でパーティを組もう。

 だが、受付嬢に却下される。


「すみません。そのパーティ名は登録済みのため、使えません」

「「……」」


 千里と桃香は、手を合わせたまま固まる。


「え、なんで?」

「すでに登録済みですので」

「だって、よその大陸だよ。それに、冒険者パーティなんてごまんとあるんだから、絶対にかぶっているパーティの一つや二つや十はあるでしょう?」

「いえ、ありません」

「それに、後で合流するつもりだし」

「それは、相手のパーティがいいって言ってからの話です」

「それにそれに、みんなどうせ「神の盾」とか「女神の聖剣」とか「天使の守り神」とか自分が神とか女神の護衛になっちゃったりとか、そんな痛そうなのばっかりじゃない。絶対にかぶっているでしょう」


 そう力説する千里に向け、


「冒険者の妄想力をなめるなよ!?」


 そう言って受付嬢が目を光らす。


「え?」


 千里と桃香が受付嬢の口調の変化に驚くと、


「あら、ごめんなさい」


 受付嬢の表情が再び柔らかくなる。


「あの、「の」をつけた方がいいの?」


 何とかの何とか、そういう名前がいいのかと、桃香が聞く。


「確かに、そういうパーティ名は多いですよね。聖者の行進とか、北国の春とか」

「「……」」

「お姉さん、馬鹿にしてます?」


 千里が怪訝な顔をする。


「いえ? 滅相もない」

「私達のイメージから言うと?」


 じゃあ、と。千里は受付嬢にどんな名前がいいかと聞いてみることにする。


「うーん。カラスの行水?」

「色から言ったよね。それに騒がしいって言ってる?」


 千里は思わず声を上げる。


「黒の下は白」

「それ、第四だけだから!」


 思わず、千里は突っ込みを入れる。


「え?」


 桃香が顔を赤らめる。ローレル達エルフも。ヨン達はほほに手を当ててくねる。


「桃ちゃん、ローレル、ごめん」

「い、いえ、いいんです。やっぱり、なんだかんだで白かと」

「膨張色だとレオナが……」


 そして、勝ち誇るレオナ。膨張色は見えなければ意味がない。


「ごめん、私も今日は白」


 白状する千里。


「あの、クサナギの名前にこだわりがあるのですか?」


 どうにも決まらないことに、受付嬢が助け舟を出そうとする。


「うん。ある」

「それでは、クサナギに何かをつければいいのではないでしょうか」

「なるほど。例えば?」

蠢く蛹(うごめくさなぎ)


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