カッパーランク、クサナギ(優香と恵理子)
二人はテーブルについて待たせてもらう。
その間、聞き耳を立てる。まあ、カッパーの自分達に対する悪口も聞こえてくる。
まあ、そんなことは気にしても仕方がない。
しばらくすると、ばたばたばたと、ギルドの玄関から入って来る男が一人。
「ギルマスはいるか?」
「ちょっと待ってて、今呼んでくるから」
受付のお姉さんがその男に告げ、奥の部屋へと向かっていった。
ギルマスらしき、ごついおっさんが出てきた。
「どうした?」
と、走ってきた男に聞く。
「マイナンにて、ゴールドランクの冒険者パーティが廃業。リーダーの手首を誰かに切られたとのことです。誰がやったかは不明。ただし、辺境の村と合わせても、かなりの数のゴールドがやられているかと」
優香と恵理子はこそこそと話をする。
「誰がやったか不明だって」
「うーん。どうしてかしら。もしかして、カッパーにやられたなんて恥ずかしくて言えないとか、そんなくだらない理由?」
「そうだったらうれしいけどね。ダミーで僕らを油断させる戦略だったらめんどくさいな」
「ねえ、そこの二人」
いきなり声をかけられ、はっとする優香と恵理子。声をかけたのは受付のお姉さんだ。
「旅をしてきたって言ったわよね。何か聞いていない?」
「いえ、初耳です」
「私達、ランクを上げたくて、薬草採取や常設依頼に忙しくて」
「そうよね。カッパーなんて、そんなものよね」
お姉さんは、納得して引き下がる。
そうこうしていると、ミリー達がやってくる。
「えっと」
と言って、ギルド内を見渡すメンバーたち。
「あ、いらっしゃいました。タカヒロ様―!」
と、手を振るナディア。
それに続き、集まってくる面々。
「タカヒロ、様?」
受付のお姉さんは首をかしげる。
さっき、二人は夫婦だと名乗った。なのに、まだ、十人以上の女の子に慕われているのか? しかも、様付け? カッパーのくせに、いったい何者……。
お姉さんは、心にメモをする。こいつには何かある、と。
お姉さんは、ギルドの奥へと進み、ギルマスの部屋のドアをノックする。
「入れ。何か新しい情報はあったのか?」
「はい。マイナンの街で、ゴールドランクの冒険者がやられました。この冒険者は生きているそうです。話は聞けます。話してくれればですが」
「なるほど。それだけか?」
「今日、旅をしているカッパーランクの冒険者パーティが来ました。リーダーと思わしき男の子は仮面をかぶっており、メンバーから様付けで呼ばれています」
「カッパーなのだろう? 今時の貴族は、ゴールドくらい、金で買うぞ? ということは、貴族でもないのか。にもかかわらず、様付けか」
「はい。なので怪しいと、報告させてもらいました」
「だが、怪しいだけなんだな」
「今のところですが」
「じゃあ、ほおっておけ。いなくなられるより、手のひらにいてもらった方がいいだろう」
「はい」
優香達は、ミリー達が用意してくれた宿屋に向かう。
部屋に入ると、予定の打ち合わせをする。
「みんな、ここでの予定だけど。ここまで、馬を酷使させてきた。だから、しばらく、四、五日、ここに滞在しようかと思う」
「「「はい」」」
「それで、その間、野草採取とか、常設依頼を受けるために、街から出る。人目につかないところで、みんなで武器の使い方や魔法についての勉強をしようか」
「「「はい」」」
翌朝、優香と恵理子は再び冒険者ギルドへ向かう。
朝のギルドは混んでいるが、優香達は依頼を奪い合うわけではない。
順番に並んで、受付のお姉さんにまでようやくたどり着いたところで、新人冒険者らしく質問をする。
「あの、すみません。常設依頼を受けたいんですが、薬草って、どっちの方面にありますか? それから、弱い魔物を狩るためには、どっちへ行ったらいいでしょう」
「ぷふっ、かわいい質問ね。いいわ。カッパーらしくて」
お姉さんは笑う。
「お姉さんが教えてあげる」
お姉さんは、地図を広げ、
「えっと、今ここにいるでしょ。南、どっちかわかる?」
「はい。あっちの方です」
優香は、ギルドの入り口の方を指さす。
「そうね。この地図を見てほしいんだけど、まっすぐ南に行くと、森があるわ。そこが初心者にはいいんじゃないかしら」
「そうですか。ありがとうございます。行ってきます」
二人は、お礼を言って、ギルドを離れた。
宿に向かい、皆に告げる。
「今日から南の森に行こうと思う」
「「「はい」」」
「薬草を採取するのが目的だけど、弱そうな魔物が出てきたら、みんなで倒そう」
「「「はい」」」
「よし、行こう」
十四人は、二台の馬車を引き連れて、南へと向かう。
三時間ほど歩くと、森が見えてくる。
「えっと、三時間も歩いて森じゃ、あんまり薬草を取っている時間がないじゃん」
「そうよね。みんな、こんな依頼を受けているのかしら」
「仕方ない、みんなで薬草を探そう」
「タカヒロ様、訓練はいかがしますか?」
「うーん」
優香は、来た道の方を見て、答える。
「今日はやめにして、薬草をため込もう。魔物が出てきたらラッキーということで」
「はい。かしこまりました」
馬車を森の入り口に置き、アリーゼとナディア、ヨーゼフとラッシーを見張りに残して森に入る。
腰を下ろして薬草を探すふりをして皆で集まる。
「そのまま、薬草を探すふりをしながら聞いて。僕らは、街からつけられている。だから、怪しい真似はできない。このまま薬草を探して帰ろう」
「「「はい」」」
結局、二時間ほど薬草を採取して、街に帰ることにした。
ギルドに戻り、
「お姉さん、薬草を採取してきました」
「あら、偉いわね。あっちの買取カウンターに出してくれる? そしたら、ちゃんとポイントをカードに付与してくれるから」
「はい。ありがとうございました」
「はい、次の人―」
「本当に薬草を採取するだけでした。馬車二台に十四人という大所帯。宿に泊まりながら、薬草採取だけでやって行けるのかは疑問です」
「そうよね。不思議だわ。やっぱり、どこかのお坊ちゃんかしら。にしても、それならもっとランクが高そうな気もするし」
「明日も見ます?」
「もういいわ。きっと、何もないわよ。お坊ちゃんなのは間違いないかもね」
翌日、同じように南に向かう。
誰もついてこない。
よって、一時間くらい歩いたところで、馬車の引手をヨーゼフとラッシーに代える。そして、皆、走っての移動をする。すると、合計二時間で森に着く。
「今日は誰もついてこなかった」
「なんだったのかしらね」
「よし、今日は、前半は武術体術の鍛錬。後半は魔導士として、時間を見て薬草採取をしよう」
「「「はい」」」
こうして、ヘブンリー公爵領に着いて、何もないまま五日間が過ぎた。
「名をあげられそうなイベントもなかったな」
「そうね。平和すぎたわ」
「平和が一番なのに、おかしいね」
「おかしいわね」
「よし、今日は、一日買い物にあてよう。明日出発するから、荷物の確認と不足分の買い物ね。みんなで手分けしてやろう」
「「「はい」」」
翌朝。
「にーしーろー、あれ、二人足りないね。ヴェルダとメリッサは?」
「ち、千里……(わんも)」
「何?(千里)」
「ブックマークが……嬉しい……(わ)」
「よかったわね(千)」
「あれ? 反応薄い?(わ)」
「あのね、私、まだ全く活躍してないんですけど(千)」
「……(わ)」
「それにね、評価だってもらってるわよね(千)」
「そ、そうなんだよ。嬉しい。嬉しいよ(わ)」(ごめんなさい。ちょっと前にもらってました)
「で、私の活躍、いつ?(千)」
「……(わ)」
「タイトルどおりなら私、ヒロインよね?(千)」
「千里、知ってた? タイトルは変えられるんだよ(わ)」
「きー! 優香さんが美人だからってー!(千)」.




