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千里、飽きる(千里と桃香)

「明日の様子を見て、いなくなっていたら南西の救援に向かおう。残っていたら、殲滅だな」

「はい。しかし、簡単に終わりそうでよかったです。さすがはローレル様」


 ルージュがローレルをねぎらう。


「だが、我が国が喧嘩を売られたという事実は消えん。本来なら、追撃するところだが、今は時間が惜しい。近いうちに潰す。ルージュ、フォンデ、準備を」

「「はい」」

「あのー、本当に終わっちゃったの?」


 セーラがやって来て、恐る恐る聞く。恐る恐るというのは、ローレルの殺気が収まっていないからである。


「ああ、王子も騎士団長達も死んだ。残りの騎士や兵士はすぐに逃げ出すだろうさ。だから、セーラ、明日にはこっちに向かっている騎士団を連れて、南西に向かおう」

「わかったわ」

「あのー」


 今度は千里が声をかける。


「私達、必要?」

「必要に決まっている。二人がいるから安心して喧嘩を売れるんだ。いなかったらなんて想像、したくもない」

「あら、たくましく育っちゃって」

「おかげさまで」


 そう答えつつ、ローレルは千里と桃香に気になっていることを聞く。


「ところで、千里と桃香はつまんなそうね」

「ん? そう見える?」

「そう見える。興味なさそう」

「うーん。だって、そもそも私達の目的って、人探しだもん。国同士のうんぬんなんて、興味ないわ」

「そうですよね。みんな騎士とかをやっているわけじゃないのかなーと、思ったりします」

「そうしたら、やっぱり冒険者なのかなー。ねえセーラ、セーラの情報網って、冒険者ギルドまで入ってる?」

「入っていますよ。というか、強い冒険者がいればそれはそれで話題になります」

「ふーん」

「今回、チャラの方にはいませんでしたけど筋肉の方、期待しましょう」


 桃香が千里をなだめてみる。


「そうだねー。強い騎士のうわさが入ってきていない段階で期待薄だけど」




 翌日。


「どんな感じ?」


 千里がセーラに聞く。


「ドレスデンは撤退を開始しました」

「じゃ、こっちは、南に行くのね」

「はい。一応、騎士団を一つくらいは残そうかと思います」

「そ―ゆーのはわかんないから好きにしたら?」

「んもう」




「それでは、出発します」


 セーラが声をかける。


「あれ、ルージュとフォンデがいないけど」


 千里の疑問に答えたのはローレル。


「里帰りに出した」

「あ、そう」

「興味ないのです?」

「うん。そのうち戻ってくるんでしょ」

「ええ。必ず。あれ、寂しい?」


 ローレルが茶化す。


「いなきゃいないでねー」




 一行は、途中で出会った第一騎士団と第二騎士団に向きを変えるように言い、先にラズルを目指す。そして、数日して砦へと入る。


「ローレル様、お着きになりました」


 騎士がセーラに扮したミーに告げる。


「そのまま通せ」

「はっ」


 ローレルを先頭に、セーラの部屋へと入る。

 パタンとドアを閉めた瞬間、ミーが膝をつく。セーラがセーラに跪いている構図だが、今は仕方ない。


「セーラ様。すべて順調です」

「よかった。ありがとう。ミー」

「いえ、今もまだ敵陣にいるヨンが心配なだけです」

「すぐに終わらせましょう。信号弾を撃ちなさい」

「はっ!」


 ミーは、変装を解く。

 ミーが出て行ってしばらくすると、砦から一発の花火が上がった。


「何で、信号弾、派手なの?」


 千里が疑問に思う。


「ヨンの趣味です」




 その夜、ヨンが戻ってきた。


「ヨン、お疲れ様」


 千里がねぎらう。


「ありがとうございます、千里様」

「で、どんな感じ? 強い奴いそう?」

「いえ、一週間もぐりこんでいましたが、私に気づくものもいないですし、さして強い者がいるとは。それに、私の適当な時間稼ぎ見え見えの作戦が行われてしまうほど、策士もいないかと」

「そう。残念」


 あからさまに千里と桃香が興味をなくす。


「じゃあ、後は、セーラとローレルにお任せするわ。用事があったら呼んでー」

「私も寝ます」


 千里と桃香が下がっていった。




「ヨン、それで、状況は?」

「えっと、私、千里様と桃香様に従っていて、その使命を果たし終えたところなんですけど? 後はお任せじゃだめなのです?」

「報告くらいしなさいよ」

「ここに到着した夜に、指揮官を拉致。私がその指揮官になりすまし、適当に過ごして今に至る。そんな感じです」

「はぁ。わかったわ。で、拉致した指揮官は?」

「それは私じゃなくて、チーとキーにお願いします。戻ってきたばかりなので」

「ありがとう。休んでいいわ」

「そうさせていただきます

わ」


 ヨンも下がっていった。


「ガルデウスを呼んで」


 ドアの外の騎士にセーラが命じる。




 しばらくするとガルデウスがやってきた。


「姫様、お呼びでしょうか」

「えっと、姫じゃなくて女王ね」

「は、陛下」

「それで、相手の指揮官って?」

「兄でした」

「そう。で、元気?」

「はい。地下牢に入れてあります」

「あなたは顔を見せたの?」

「いえ、ちらっと見ただけです」

「ガルデウス。多分明日の朝、ファルテンの軍は、指揮官がいなくなったことで騒ぎが起こる。で、どうしたらいい?」

「攻め込んだらいいのでは?」

「第一と第二騎士団を今こっちに回しているところ。だけど、今の状況はまだ五千対二万なの」

「なるベく血は流したくないということでしょうか?」

「そうよ。だけど、早く終わらせたい、という方が強いわね」

「それでは自分達が行ってまいりましょう」

「よろしく頼むわ」

「はっ」




 ガルデウスが出て行ったあと、セーラは悩む。同じくローレルも。


「やばい。やばいわ。この戦い、早く終わらせないと」

「そうよ。どうする? 夜襲をかけて全滅させる?」

「とりあえず、明日、ガルデウスに任せましょう。それで引かなかったら、全力で壊滅させるわ」

「そうね。失敗したわ。ルージュとフォンデを帰すんじゃなかった」


 その様子を見ていたミーが聞く。


「どうしてそのように焦っているのですか?」

「決まっている。千里と桃香が飽きているからよ」


 ローレルが答える。


「そうよ。あの二人、ヨン以上の自由人なのよ」

「ということは?」


 ミーがさらに聞く。


「明日の朝、あの二人がいなくなっていてもおかしくないの」


 ハッと、セーラは気づいてしまった。


「ミー、お願い。貴方達に私が命じる権利がないのはわかってる。お願い。砦中を警戒。あの二人が抜け出さないように」

「はっ!」


 ミーが飛び出した。




 その夜中。


「ヨン! うるさい。寝不足は美容の敵なの!」

「申し訳ありません」


 気配を消して千里達を監視していたつもりだったが、あっさりばれた。

 仕方ない。外を見張るか。

 ヨンは、千里達の部屋を出た。



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