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千里と桃香VS第四(千里と桃香)

「ここ、四番ルーム?」


 千里が聞く。


「ごめんね。この部屋しか空いてなかったの」


 ミーちゃんがかわいく謝る。

 そこへ、女性が三人入って来る。


「いらっしゃいませ、リィです」

「私はルゥよ。よろしく」

「おい、姫様何の用だ」

「ちょっとちょっと、ここまで三人かわいく入って来たのに、最後だけなんなの? おち? かわいくないんだけど」


 千里がクレームを入れる。


 カキン!


 千里の首下でナイフが交差する。一方は千里、もう一方は最後に入ってきた女性、店のカウンターにいた女性である。


「せっかく、気持ちを切り替えて、かわいいお姉さんとおいしいお酒を飲もうと思ったのに、これ?」


 千里がセーラに訴える。


「そうよ。この子達が第四よ」

「この子っていうな。お前より年上だぞ」


 セーラをお前呼ばわりする第四。


「あの、ミーちゃんと、リィちゃんと、ルゥちゃんはわかったさ。このナイフのお姉さんは?」

「千里さん、そろそろ空気読みましょうよ」

「だって。気になるじゃん」


 女性はナイフをしまって名乗る。


「私はヨンだ」

「ヨンちゃん! 名前はかわいいじゃん。でも、偽名でしょ?」


 千里が反応する。だが、ヨンはつれない。


「何だっていいだろう。で、姫、何の用だと」

「あの、姫じゃなくて、女王ね。出世したの」

「え? いつの間に?」

「あなたね。いつもいつもお酒ばっかり飲んでいないで、ちゃんと市勢のことも気にしなさいよ」

「やだよ。めんどくさい。酒を飲んでいれば楽しいだろう?」

「あなたはそうかもだけど。で、要件だけど。ないわ。この二人があなた達に会いたがったから連れてきただけ。私とこの子はもう帰るわよ」


 セーラはローレルの服の袖をつかむ。


「おい、ちょっと待てよ。せっかく来たんだから、お金くらい落として行けよ。何を飲む?」

「いらないって。これから私達デートなの。そこでおいしいお酒を飲むからここではいらないわ」

「女同士でデートなのか?」

「違うわよ。私はムキムキマッチョなイケメンと。この子はアイドルみたいな美少年とね。どっちも王子様よ。ちょっと遠いから急がなきゃ」


 セーラが部屋を出ようとする。


「ちょっと待てって。ムキムキってなんだよ」

「その言葉のとおりよ。私、白馬で迎えに来てくれるって約束しているんだから。白馬に乗った王子様が、私のことお姫様抱っこしてくれるの」


 セーラが両手の指を組んで、くねる。


「ローレル、あなたはきらびやかな馬車で迎えに来てもらうんだっけ」

「……ええ」

「そういうわけで、あなた達に用事があるのはそっちの二人。私達はこれで失礼するわ」


 セーラとローレルが部屋を出ようとする。


「だから、ちょっと待てって、私らも行っていいだろう? 見たいんだよ。気になるんだよ」


 かかった。セーラは思った。


「まあ、ついてこれるなら来たらいいんじゃないかしら」


 そう言って、セーラとローレルは部屋を出る。

 ヨン達がそれを追いかけて部屋を出る。というところで、ばたんとドアが閉まった。


「なんてな」


 ヨンが扉を閉めて鍵を内側からかける。


「ちょっと、あなた達、ついてくるんじゃないの?」


 しまった。だまされたのはこっちか。セーラは心の中で嘆く。

 ローレルは、まあ、そんなに甘くはないよね。と、ため息をつく。


「行くわけないだろう。ちょっとからかっただけだ。ムキムキとよろしくやってこい、頭お花畑女。そんなことより、こっちの二人の方が面白そうなんだよ」


 ヨンは部屋に残っている千里と桃香を見る。


「ヨン、その二人に手を出してはいけません」


 セーラが扉越しに叫ぶ。


「って、姫様は言っているけど、どうする?」

「うーん。さっきナイフを向けられちゃったしね。桃ちゃんはどうする?」

「私はナイフを向けられてませんから」


 ミーが桃香にナイフを向ける。


「あ、今向けられました」


 リィとルゥもナイフを握る。


「じゃあ、お尻ぺんぺんかな」

「そうですね。それくらいのお仕置きは必要かもしれません。毎日男を侍らせてお酒を飲んでるんですよね。反省が必要です。まあ、全くうらやましくありませんが」

「だよね。いい男ゼロだったじゃん。露出を高めないともてないって寂しいわよね」


 ミーが桃香にナイフを突きつける。

 桃香はそのナイフを左手で外側へはじくと同時にその勢いを利用して右のこぶしをミーの腹に撃ちこんだ。


 グハッ!


 ミーの体がくの字に曲がる。桃香は、さらにもう一歩踏み込み、ミーの横まで移動すると、もう一度右手を振り上げ、その尻を思い切りはたいた。


 バチン!


 ミーが腰を引き、背をのけぞらせる。

 桃香はミーをリィの方へと蹴とばす。

 リィがミーをよけて桃香に迫った時には、そこに桃香はいない。


 バチン!


 リィも桃香に尻を叩かれる。


 千里とルゥはお互い牽制しあいながらその様子を見ていた。


「桃ちゃんやるー」

「まだペンしかしてませんから、もう一発ずつ叩かなきゃ」


 ルゥがナイフを千里に突き付ける。


「ごめんね。私、桃ちゃんほどやさしくないから」


 そう言って、ルゥのナイフを持った手首を左手でつかんで引き寄せると同時に、右のこぶしをルゥの顎に叩き込んだ。


 グッ!


 ルゥはその場に倒れ込む。


「さ、あとはボスだけかな。ヨンちゃんだっけ」


 ヨンはナイフを投げると同時にテーブルの上を飛んで千里に迫った。


「うわ、危なっ! ナイフを投げちゃダメじゃん」


 ヨンは返事をすることなくこぶしを撃ちこんで来る。

 千里は、それを一つずつ丁寧にはじく。


「ねえ、ヨン、私達、二対四で戦ってるって覚えてる?」


 パシン!


 ヨンの尻が桃香に叩かれる。

 ヨンが見回すと、ミーもリィも尻をさすっている。ルゥは沈黙したままだ。


 千里と桃香に挟まれたヨン。

 ヨンは千里に襲い掛かる。しかし、千里がヨンに助言する。


「いいの? 桃ちゃんをほおっておいて」


 ヨンが桃香の方を振り向くと、そこに桃香はいない。

 立ち直りかけていたミーとリィの尻に蹴りを叩き込む桃香。


 ドゴンドゴン!


 ミーもリィも壁にぶち当たる。


「ほら、よそ見してちゃだめだよ」


 千里が踏み込んでヨンの腹に左こぶしを撃ちこむ。

 くの字に曲がって頭が下がったヨン。

 千里はそのヨンの首に後ろから左腕を回して締めると、そのまま体重をかけて倒れこんだ。


「セーラがやっててやって見たくなったんだよね」


 ゴチン!


 ヨンの脳天が床にたたきつけられる。

 だが、千里はまだ手を離さない。


「桃ちゃんやっちゃって」

「はーい」


 尻が持ち上がった状態のヨン。桃香に叩かれ放題叩かれる。


 バチン、バチン、バチン!


「お願い、もうやめて、お尻が腫れちゃう。腫れちゃうから。痛い! 痛いって!」

「はい、ごめんなさいは?」

「誰が謝るか!」

「いいの? 桃ちゃん、かんちょうって、するかもよ?」

「ごめんなさい。ごめんなさい。私が悪かったです。許してください」


 速攻で謝るヨン。


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