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走れ!(優香と恵理子)

「えっと、整理していいですか]


 リシェルが臆することもなく、ごろつき達に確認する。


「私達は、村に入るときに冒険者カードを提示しました。だから、村に入るのにお金を払う必要はありません。で、あなた方は、なんのお金を要求しているんですか?」

「この村の滞在費だよ。俺らが守っているこの村に滞在しただろ。そしたら、お前らも俺らが守っているのと同じだ。だから金を払えと言っている」

「うーん。わかるようなわからないような」

「どっちでもいいぜ、金で払うのか? それとも体で払うのか?」


 ごろつきはイーゼルの肩を引き寄せる。


「やめてください」


 イーゼルが叫ぶが、やめる様子はない。


「えっと、私達、あまりお金持っていないんですよね。ここにいると、滞在費がかさみそうなので、とりあえず村から出たいんですが」

「いや、払ってから行けや」

「私、ちょっと怒っているんですけど、この村の人にあまり迷惑をかけたくないんですよ」


 口調は丁寧だが、リシェルの目は笑っていない。ローデリカも同じだ。


「怒っていたらどうだって言うんだ?」

「では、言います。イーゼルさんは護衛対象です。よって、イーゼルさんを守る義務が私達にあります。というわけだけど、オッキー、マティ、エヴァ、下がっていて。私達二人でやるから」

「二人でだと? あはははは、ふざけてんなお前ら……」


 サクッ!


 イーゼルの肩を抱き寄せたリーダー格のごろつきの首が落ちる。

 その右の男、左後ろの男、次から次へと首が落ちる。

 悪いとは思うが、イーゼルは血だらけになっている。


 リシェルとローデリカは動きを止めない。


 ごろつき達は、完全に後手に回る。剣を握ろうとして、その手首が落ちる。次いで首にナイフが刺さる。集まっていたため、動きも悪い。一人、また一人と首がなくなり、倒れていく。


 最後のごろつきの首を落とすと、リシェルはナイフを振り、血を払った。ローデリカも同じようにして、ナイフをさやに収める。


 リシェルとローデリカは、イーゼルの前に立ち、


「盗賊に襲われたので、正当防衛で盗賊を討伐しました」

「ごみを出しちゃってごめんなさい」

「え、ええ」


 イーゼルは、何が起こったのかわからないような表情で、何とか答える。


「イーゼル!」


 母親がイーゼルを抱きかかえる。


「大丈夫だったかい」

「う、うん。お母さん。何があったのかな」

「何を言っているんだい。お前を助けるために、この子らが盗賊を倒してくれたんじゃないか」

「あ、そうか。リシェルさん、ローデリカさん、助けてくれてありがとうございました」


 なんとなく、たどたどしいイーゼルにリシェルが聞く。


「あの、もしかして、倒しちゃダメだった?」

「ううん。ありがとう。嬉しい」


 と、言いつつも、表情を濁らすイーゼル。


「でも、このごろつき達、本隊じゃないの。この件で、きっと本隊がこの村を襲ってくる」

「この村ってこうやってお金を取られていたの?」

「……」


 イーゼルが無言で肯定する。


「どっちから、いつ頃にくるの?」

「毎日じゃないけど、いつも街道から堂々と。お酒を飲みに夕方に来るわ」

「そ、じゃあ、それまで、このごみを片付けて、村の門の外で待っていましょうか」




 夕方。


「あ、きたきた。ぞろぞろと」


 ざっと百人くらいの盗賊がやってくる。


「おい、お前ら、そこをどけ」


 盗賊のリーダーがリシェル達に声をかける。


「どかないわ。っていうか、私達の憂さ晴らしに付き合いなさい」

「は? 何を言っているんだ?」

「あんた達のお仲間程度じゃ、私達の気が収まらなかったのよ」

「そういうこと。かかってきなさい」


 リシェルとローデリカは盗賊をあおる。


「俺らの仲間? あいつら、やられたのか?」

「だから、手ごたえがなかったって言っているじゃない。来ないならこっちから行くわよ」


 リシェルとローデリカが殺気をまき散らす。

 盗賊達も剣を抜く。


「オッキー、マティ、自分達で判断しなさい。エヴァ、援護を」

「私だって負けられない」

「私も」

「援護? 援護って?」

「たかだか五人で何ができる。野郎ども、かかれ!」

「アイス……」

「あ、馬鹿」

「ラーンス!」


 リシェルの声も間に合わず、エヴァから超高速のアイスランスが放たれる。アイスランスは、何人もの盗賊を貫いて飛んでいく。


 突然の振りに慌ててアイスランスを放ったエヴァがぱたりと倒れる。


「言わんこっちゃない。ちゃんとセーブしなさいよ」


 リシェルがあきれる。


「オッキー、マティ、エヴァを守って」

「「はい」」


 リシェルとローデリカはそれぞれステップを踏み、飛び、盗賊の間をすりぬけるようにして、盗賊を切り捨てていく。


 オッキーとマティはエヴァの周りで、襲ってくる盗賊を一人、また一人と切り倒す。


 四人の強さに、盗賊のリーダーがうろたえる。


「お前らはいったい」

「ただただ盗賊を殲滅したい単なる女の子よ」

「そうよ。盗賊が大っ嫌いな女の子よ」


 リシェルとローデリカは盗賊のリーダーすら簡単に切り捨ててしまう。


 そうして、三十分もすると、盗賊は全滅する。


「ふんっ」


 リシェルとローデリカは、ナイフを振って血を払い、さやにしまった。オッキーとマティも剣をしまう。


「お疲れ様。手伝ってくれてありがとう」


 リシェルがオッキーとマティに声をかける。エヴァは、倒れていても聞いているはず。


 リシェルとローデリカのその盗賊に対する戦闘を見て、ついつい、オッキーが聞いてしまう。


「リシェルもローデリカも盗賊が本当に嫌いなんですね」


 その質問に、リシェルとローデリカは、涙を流してしまう。


「そうよ。大嫌い」

「私達ね、盗賊につかまっていたのよ。それを優香様と恵理子様に助けてもらったの」

「ごめんね、こんな汚れた先輩で」


 王女であるオッキーもマティも、伯爵家令嬢のエヴァも、二人のその言葉だけで、そのつらい過去を想像し涙を流す。自分達とは縁遠い経験、だが、実際に起こりうる現実、あってはならない事実。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……」


 オッキーは泣きながらひたすら謝る。マティもサザンナイトに狙われたことがあり、捕虜としての生活を想像したことがある。しかも、リシェル達のそれはきっと我が国アストレイアでのことだ。


「先輩は、先輩は汚れてなんかない。いつもきれいでかっこよくて優しくて素敵で、私達の憧れで、目標で。そして、大好きな先輩です!」

「うわーん」


 オッキーが思いのたけをぶつけると、マティも大声を上げて泣いてしまう。


「オッキー、マティ、泣いてくれてありがとう」

「でもね、私達、盗賊につかまっていたおかげで、勇者様に会えたの。今はとても幸せなのよ」

「いつか羽ばたいて行っちゃうひよっこには、わからないでしょうけどね」

「私も、私も先輩と一緒にいる!」

「だめよ。貴方達には、きっとやるべきことが見つかるわ」

「これ以上、私達の居場所を脅かさないで」


 そう、リシェルとローデリカは、笑った。




 ヨーゼフとラッシーがやってくる。イーゼルはラッシーに乗って。


「イーゼルさん、ごめんね、村の前、こんなに汚しちゃった」

「大丈夫だと思います。これで村もこいつらに脅かされることが無くなると思いますので。むしろ感謝です」

「そう言ってくれるとうれしいけど。ほぼほぼ私達の私情だったから」

「ところで、もう王都へ向かっていいの?」


 ローデリカがイーゼルに聞く。


「でも、もう夕方ですけど」

「なんとなく、いづらくなっちゃったし、どこかで野営でもする?」


 リシェルがローデリカに相談をする。


「イーゼルさんがいいならだけど」

「私は構いません。もう、出かける用意はしてありましたから」

「そう。じゃあ、行く?」

「はい」

「オッキー、マティ、エヴァをヨーゼフに乗せて」

「「はい」」


 未だに倒れているエヴァはヨーゼフに荷物のように乗せられる。


 オッキーもマティもエヴァも誓う。

 強くなろう。一人でも多くの人を、助けられるように。一人でも多くの人の笑顔を作れるように。誰もが苦しまない世界を、みんなが幸せを感じられる世界を実現するために。




 リシェルはヨーゼフに乗せられている、というかかけられているエヴァのお尻をぺしぺし叩いて言う。


「魔力の使い方。いい加減に覚えなさい。焦るといつもいつも全力で……」

「はーい」


 エヴァは反省する。頑張ろうと気合を入れると、ついつい全魔力を使ってしまう。この冬の特訓で、もっと魔力の使い方をうまくなろう。


「リシェル、ローデリカ、私に魔法の……」


 エヴァは言葉を止め、顔を赤らめる。何をされたかがわかったからだ。

 リシェルは、エヴァが動けないことをいいことに、スカートをつまみ上げる。


「ん? 偉い偉い。ちゃんとペチパンツ履いてるじゃない」

「や、やめてください。動けないからって、スカートめくらないでー」

「ちゃんと先輩の言うことを聞く、偉い後輩だこと」

「あはははは」

「「「あはははは」」」


 六人と二頭は走る。

 今はシーブレイズ聖王国の王都に向かって。

 待ってくれている人がいる。

 一刻も早く会いたい人がいる。

 追い付きたい人がいる。

 そばにいたい人がいる。


 走れ、走れ、走れ!


わんも「千里ー、千里―!」

千里「ん、んごっ」

桃香「千里さん、千里さん!」

千「な、なに? 桃ちゃん」

わ「無視ですか……」

桃「優香さんと恵理子さん編がひと段落つきました!」

千「!!! それって?」

桃「はい。私達の出番です!」

千「よっしゃー、ようやく出番だー」

わ「千里と桃香ファンの皆様……」

千「みんな―! 私達の出番が来たよー!」

桃「応援してくださいねー」

優香「でも、半年分よね。すぐ私達だわ」

恵理子「貴博さんと真央ちゃんも挟まなきゃね」

千「えー。っていうか、今、どういう状況」

わ「解説しよう」

千「……」

わ「優香さんと恵理子さんは旅立って2年が経過しました。一年遅れで旅に出た千里と桃香は後半年で優香さんと恵理子さんに追いつきます。で、次の春から三組が旅に出そろうことになります。貴博と真央はもう半年分書いちゃってますけど」

千「まあ、難しいことはよくわからないけど、いっちょやるか!」

桃「何をです?」

千「……」

貴博と真央「「いずれにしても、千里さんと桃ちゃん編が始まります。みんな期待してね」」

千と桃「「ええ子や……」」

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