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想えば遠くにきた……(優香と恵理子)

 ミリーとオリティエは、入港している船を見て回る。どの船もすでに荷下ろしも積み込みも終わったようで、静かなものである。


 並んでいる船の一番端に止まっている船の前まで行くと、船の上から声がかかった。


「お姉さん達、そのふるまい、よっぽどいいところに勤めているんだろう?」


 声をかけてきたのは、フードをかぶった男だ。


「ええ。ご主人様は最高のお方です」

「そうだろうよ。今度、紹介してくれよ。商売の相手として」

「そうですね。いいものがありましたら、購入を考えさせていただきます。ところで、獣人のお方ですか?」

「お、わかるかい」

「はい。北のフィッシャーの街でも同じような恰好をしている獣人の船員さん達がいましたから。あなた方もムーランドラ大陸から?」

「いや、ナッカンドラだ」

「ナッカンドラというと、この南の大陸?」

「そうだ。あんたらは行ったことないのか?」

「はい。旅はしておりますが、この大陸から出たことはありません」

「そうか。気が向いたら来てくれよ。むしろ、乗って行ってくれ」

「はい。主人が行くと申した時にはぜひ」


 二人は再び歩き出す。


 港の突堤を歩いて、その先端で立ち止まる。


「ねえ、オリティエ、こんな遠くまで来ちゃったわね」

「そうね。自分が冒険者になるなんてことも、メイドになるなんてことも考えたことなかった。なれるなんて思ったこともなかった」

「こうやって景色を見てきれいだって感じる時間もできた」

「みんなと一緒にいることが楽しい」

「生きていることが嬉しい」

「すごいね。こんな風に変わるんだね、人生って」

「本当ね。私達、帰りたい家が出来たもんね」

「移動式だけど」

「本拠地はあるわよ?」

「どこ? アストレイア? それともカヴァデール?」

「あははは。そうね。どこかしら」

「移動式かも知れないけど、決まっているのは」

「あの二人のところ、ってことよね」

「うん」

「どこまでも行こう!」

「うん。あの二人についてね」

「うん」




「おーい、ミリー、オリティエ―」


 走ってくるメイド達。


「ずるいじゃん、二人だけこうやって景色眺めて」

「あら、ちゃんと聞き込みしたわよ、船の。できる範囲だけど」

「へー、そうなの?」

「そうよ」


 ミリーとオリティエは、皆の顔を眺める。

 そして、笑う。


「どうしたの? ミリー、オリティエ」


 ミリーとオリティエはみんなの顔を見て、うれしくて幸せで笑ってしまったのだが、そういう恥ずかしいことは言えない。


「いえね、アリーゼの口元にソースが」

「!!!」


 アリーゼがハンカチを取りだして慌てて口の周りを拭く。


「アリーゼ、ついていないわよ? 何か食べたのかしら?」

「!!!」


 アリーゼが顔を真っ赤にする。


「ミリー、ひどい! ちょっとだけだもん。味が気になったんだもん。これも調査だもん」

「はいはい。アリーゼらしい調査でいいわ。ナディアもね」


 アリーゼが頬を膨らませる。一緒に食べたナディアは視線を逸らせる。


「あはははは」

「「「あははははは」」」


「さ、みんな、帰りましょう。食事の用意をしなくていいっていっても、部屋の掃除とか洗濯とかあるんだから」

「「「はい!」」」

「いつまでも皆で優香様、恵理子様に仕えましょうね」

「「「はいっ!」」」


 ミリー、オリティエ、そして仲間達。十二人は海を背にして歩き出した。

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