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勇者に聖女にドラゴン族に高位精霊に女王に王女に野良猫に……(優香と恵理子)

 一階に全員が集まる。


「ちょっとお待ち、焼いたパンにシチメンチョウを挟んだから、持ってお行き。おなかすいたでしょう?」

「女将さーん」


 リーシャが涙ながらに飛びついた。


「お城でも朝ごはんが出るって言っていたから、ちょこっとにしておきな」

「はい。もぐもぐもぐ」


 リーシャが受け取ったそばから口にサンドイッチを放り込み、返事をした。


「さあ、行こうか」


 優香達は、用意してもらった馬車に乗り込み、城へと向かった。




 城では、騎士達に案内されて、謁見の間へと通される。


「勇者パーティの入場です」


 その掛け声により、入り口のドアが開く。中の様子はどこも同じなのか、赤いカーペットが敷かれ、その上を歩いて行く。


 階段の下まで歩くと、そこで止まり、壇上を見上げる。

 そこには、中心に女性。右側に青年。左に、迎えに来たこの国の国王が立っていた。

 優香達は、ここでも、へりくだるつもりはない。よって、膝をついたりしない。


 いつものように、「おもてを上げよ」から始まらないので、どうしたものか悩んだ挙句、エトリーヌは感謝の言葉から入る。


「私達の呼びかけによく来てくれた。感謝する」


 優香達は、「ははー」も言わない。


「それから、三羽のシチメンチョウの確保も大儀であった」


 これに対して、恵理子が発言する。


「四羽です」


 騎士達が視線を逸らす。


「それに、冒険者ギルドから受けた依頼ですので、国王様方にねぎらっていただく必要はないかと」

「な、なかなか謙虚だな」

「ところで、あの大きいの、おいしかったです?」

「「「……」」」


 三国王が黙る。騎士達は完全に目を背ける。


「あれ?」


 恵理子が疑問の声を上げる。

 すると、エトジルが答える。


「申し訳なかった。あの大きな個体は、我が騎士団をもってしても、とどめておけなかった」

「え?」

「我が城に持って来てくれた後、あのシチメンチョウは目を覚ましてな、そして、大暴れに暴れて、森へと帰って行ってしまった。見回してもらうとわかると思うが、我が騎士団は奮戦したぞ」


 そういえば、騎士達はみな、鎧が傷だらけだ。


「しかも、魔導士団までもが壊滅してしまった」

「……」

「せっかく捕まえてきてくれたのに、申し訳なかった。国を代表して謝る」


 エトジルが頭を下げた。

 恵理子は、ちゃんととどめをさしておかなかったことを責められなくてよかった。というか、そうなる前に帰りたいな、そう思う。


「そうですか。残念ではありました。ですが、ちゃんと報酬はもらっておりますので、頭をお上げください」

「そう言ってもらえると、助かる。ありがとう」

「そういえば、名を聞いていなかったな」


 エトリーヌが話題を変える。もちろん、タカヒロとマオという名前は知っている。


「「……」」


 優香も恵理子も答えない。そうすると、他のメンバーも答えない」


「「「……」」」


 そうすると、やれやれ、という顔をして出てくるのがオッキーだ。


「エトリーヌお姉さま、ご無沙汰しております」

「……? え、もしかして、オキストロか?」


 エトライとエトジルも気が付く。


「昔、遊んでいただいたことを今でも覚えております」

「懐かしいな。というより、大きくなったな」


 エトリーヌがそう返すが、エトライが口を挟む。


「オキストロ、どうしてここに?」

「はい。今は、プラチナランク冒険者パーティ、クサナギのメンバーとなり、勇者タカヒロ様、聖女マオ様に付き従っておりますので」

「「「聖女?」」」


 三国王が繰り返す。恵理子が顔を赤らめる。


「エトリーヌお姉さま、お姉さま方をタカヒロ様方に紹介してもよろしいでしょうか」

「うむ、頼む」

「タカヒロ様、マオ様、中心にいらっしゃるのがエトリーヌ・エルト、セントラルエルト王国女王陛下、右がサウスエルトのエトライ国王陛下、左がエトジル国王陛下ですわ」


 優香と恵理子がうなずく。


「エトリーヌお姉さま、お兄さま方、紹介させてください」


 エトリーヌは、紹介の順番がこちらが先か、そう思う。

 オキストロは、エヴァを呼ぶ。


「お姉さま方、こちらが、エヴァンジェリン・カヴァデール、ラフィットから新たに興したカヴァデール国の女王陛下ですわ。それから、タカヒロ様は、その王配殿下となります」

「「「え?」」」


 まさかの隣国の女王登場に、エトリーヌ達は焦る。そして、ズダダダダ、と、階段を駆け下りた。さすがに上からはまずいと思ったのだろう。


「カヴァデール女王、お初にお目にかかります」


 エトリーヌが挨拶をする。しかし、エヴァは顔を真っ赤にする。国王に挨拶される立場になるとは。

 動かないエヴァに対し、オッキーがフォローを入れる。


「お姉さま、申し訳ないです。エヴァは女王になったばかりで、まだ落ち着かないのかもしれません」

「いや、構わないとも。今後とも友好的にやっていきたいと思っているんだ。あはははは」


 エトリーヌが苦笑いをしているときに、空気を読まないリーシャ。


「おなかすいた……」

「はっ! すまなかった。朝食を食べる前に呼んでしまったか。エトジル!」

「はい。朝食を食堂に用意させております。移動しましょう。できれば、その場でフランクに話せればと」




 食堂へと移動し、朝食をとる。

 リーシャはとりあえず、食事を口に運ぶ。あれもこれも。同じように、アリーゼ達も遠慮せず食べていく。大人チームはそれなりにおとなしく食べる。


「あ、あの」


 エトリーヌが声をかけようにもなかなかかけられない。全くもって、フランクどころの雰囲気ではない。


「オキストロ、ちょっといいか」


 仕方ないのでエトリーヌは話しかけやすいオッキーに小声で声をかける。


「あの、ドラゴン族を従えしって、本当なのか?」

「ええ、あちらがドラゴン族のネフェリ様、その横にいらっしゃるのが娘のリピー様です」

「……オキストロ、もう、驚くこともないよな」

「えっと、あちらの青い髪のお方が、高位精霊のアクア様、聖女様の隣にいる白髪の少女が同じく高位精霊のパイタン様です」

「「「……」」」

「精霊? 精霊って実在したのか? しかも高位精霊? 様?」

「はい。様付けが正しいかと」

「勇者様、聖女様、女王様、ドラゴン様がお二方、高位精霊様がお二方……」


 エトリーヌがつばを飲み込む。


「オキストロ、正直に言ってくれ。このパーティに戦いを挑んで勝てる国はあるか?」

「ありません。私がここにいるのがいい証拠です。それに」


 と、オッキーは続ける。


「他のメンバーにすら勝てる騎士団もないと思います。実際、ラフィットの騎士団をぼこぼこにしています。それに、ご理解いただけていると思いますが、この国の騎士団を壊滅に追い込んだボスシチメンチョウを無傷で捕らえられる実力です」

「「「……」」」

「おまけですが、もしタカヒロ様とマオ様に剣を向けたら、ネフェリ様とリピー様のブレスで一瞬にして焼かれます」

「「「……」」」


 三国王は固まって、クサナギのメンバー他達が食事をしているのを見守ることしかできなかった。




 食後。


「あー、おなか一杯」


 リーシャが満足の声を上げる。


「朝からおなかいっぱいになっちゃったね。パイタン、大丈夫?」


 恵理子が横に座るパイタンを気遣う。


「うん。大丈夫」

「えっと、朝ごはんもいただいたことだし、もう帰っていいのかな?」


 という、優香のつぶやきに反応したのはエトリーヌだ。


「勇者様! 申し訳ありませんが、もう一度謁見の間へお越しいただけませんか?」


 その提案に、エトライもエトジルも目を点にする。


「えっと、もう用事はないかと思うんだけど」

「あの、もう一度だけ、もう一度だけですから」

「ふう。わかった」


 優香は席を立つ。



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