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ミリー達のリスタート(優香と恵理子)

 いきなり、十四人プラス二頭の大家族になってしまった。

 優香はそう思う。

 しかも、皆が馬車には乗らず、寄り添って歩く。


「ねえ、ミリー。近くの町や村は寄らないでスルーするとして、君達の服をそろえられると言ったら、どこかな?」

「私どものことは気にしないでください。ご質問に対するお答えですが、お買い物が多くできるというのであれば、ここから、三日ほど歩いたところにある、マイナン伯爵の住む領都でしょうか」

「そこでは、みんな、街に入れる?」

「万が一に備えて、フードなどあれば……」

「わかった。まずは、マイナンを目指そうか」

「はい」


 馬車は朽ちた教会から小道を通って森を抜ける。草原に出ると、道が伸びているが、この道に沿うと、行きたくもない街にも出てしまいかねない。

 なので、街道をそれて進む。


「ミリー、方向は任せたよ。僕ら、この辺知らないから」

「……わかりました。ですけど、お二人はどこ出身なのですか?」

「まあ、その辺は内緒で」

「詮索し、申し訳ありませんでした」

「ミリー、そんなにかしこまらないでー」


 夜、広大な草原の真ん中で野営をしていると、ミリーが懇願してくる。


「あの、タカヒロ様、マオ様、お願いがございます」

「なに?」

「私達に戦うすべをお教えください。幸いにもあの教会から武器はもってきています」

「君達が手を汚す必要はないよ。もうすでに汚れてしまった、僕らがやるよ」

「お言葉ですが勇者様。お二人は優しすぎます。人を殺すことに躊躇されています。ですから、代わりに私達がやります。もちろん、私達は、全くの素人です。ですから、戦うすべを教えていただけましたら、私達は盾になりましょう。相手の剣をこの身をもって止めて見せます。そして、剣になりましょう、最後の一撃、人を殺すところも、私達がやります。私達にお任せください。ですから、私達に戦うすべを。お願いいたします」

「ミリー、みっともないところを見せたね。ごめん。でも、僕はもう、覚悟を決めた。ためらわない。正しいと思うことをやる。それが人を殺すことであっても。僕は、君達に助けられた。人を殺したことに動揺した僕を、君達が助けてくれた。だから、僕はもう迷わないよ」

「ですが……」

「タカヒロ。ミリーの言うこともわかる。私達がいつも一緒にいられるわけじゃないよね。だから、最低限でも、教えてあげようよ」


 恵理子の提案に優香も同意する。


「うん。わかった」

「ありがとうございます」




 翌日から、朝早く起きて二時間ほど剣の訓練。朝食を取って移動。夕食を取ったのちに二時間ほど訓練。という日課になった。

 そんな中、一番小さな、十三歳くらいの二人、アリーゼとナディアが優香と恵理子のところにやって来た。


「タカヒロ様、マオ様、お願いがあります。私達、魔法使いに憧れているのです。タカヒロ様のあの魔法、拝見しました。どうか、私達に魔法を教えてくださいませんか?」

「えっと」


 と言って、優香と恵理子は目を凝らす。

 確かに他の十人より魔力量は多い。だが、それが魔法使いに適しているかはわからない。

 しかし自分達に比べたら、魔力量はかなり少ない。なにせ、自分達はパパたるグレイスに容量を無理やり広げられたのだ。


「うーん、じゃあ、ちょっと、全力の魔法を撃ってみて」

「「はい」」


 二人は、草原に向かって手を差し出すと、


「ファイアバレット!」

「ウォーターバレット!」


 と、炎魔法と水魔法を発動させた。

 二人は、魔力を欠乏させ、フラフラになりながら、それでもどや顔を何とか決めて優香と恵理子を見る。

 優香と恵理子の二人は、


「うーん」


 と、渋い顔。魔力を全放出できるという点はなかなか。魔力操作ができている証拠。だが、やはり魔力量。

 優香と恵理子の反応をみて、


「え、確かに、盗賊達の数にはかなわなかったけど、全力の魔法なのに……。無詠唱なのに……」


 と、アリーゼもナディアも落ち込む。


「あ、あの、すみません、お二人にとって、魔法って……」


 優香と恵理子は黙って少女二人が撃った方へ手を差し出し、しかも、言葉を発することなく、ファイアバレットとウォーターバレットを発動させた。しかも、段違いの規模で。


 少女たちは、驚愕の顔を浮かべる。


「あの、すみませんでした……」

「私達、調子に乗っちゃっていました……」


 二人は、かなり落ち込んでいる。


「二人とも、名前は?」

「アリーゼ」

「ナディア」

「アリーゼ、ナディア、わかった。明日から特訓しよう」

「タカヒロ? あの子とあの子もどう?」


 恵理子は魔力量の多そうな女性をピックアップする。

「ナディア、あの二人を連れて来て」


 ナディアは、恵理子の指さした女性二人を連れてきた。


「二人の名前は」


 と、優香が聞くと、


「マロリーです、勇者様」

「ルーリーです、勇者様」


 そう言って、二人は顔を赤くした。


「勇者様はやめてって」

「ではなんと?」

「タカヒロでいいよ」

「「タカヒロ様」」


 二人は、手を胸の前で組んで再び顔を赤める。

 恵理子が、固まっている優香の脇をつんつんする。すると、


「「申し訳ありません、マオ様。決してやましい思いなど」」


 マロリーとルーリーが平謝りする。


「マロリー、ルーリー、いいのよ。気にしていないわ。ただタカヒロが固まってしまったから」

「はっ。そうだ。えっと」

「どうする?」

「どうするんだっけ」


 と、優香は再起動に少し時間がかかった。

 結局、優香と恵理子の二人で、自分達の魔力の半分を一人に流し、魔力の容量を増やしてみた。グレイスが自分達にやってくれたことである。

 優香がアリーゼとナディアの手を握り、魔力を流し込んだ時、二人は、十三歳がしてはいけない恍惚とした表情を浮かべた。

 恵理子がマロリーとルーリーに同じようにしようとしたとき、二人は、恵理子に土下座をして、


「「タカヒロ様からしていただきたいです」」


 と言った。


「うっさい!」


 恵理子は強制的に、二人に魔力を流した。


「ヨーゼフ、ラッシー、僕ら、もうだめだから、後の警護をよろしく」


 と言って、優香と恵理子は眠りに落ちた。




 翌朝から、優香がリーダー格のミリー、副リーダー格のオリティエをはじめとした、リシェル、ローデリカ、トリシャ、ウルリカ、ヴェルダ、メリッサに剣やナイフ、徒手での格闘を教え、恵理子が、アリーゼとナディア、マロリーとルーリーに魔法を教えた。魔法組は、魔力操作からが基本だった。


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