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シチメンチョウを捕まえてくる依頼~れーちゃん登場(優香と恵理子)

 ノースエルトの宿に入る。


 宿に入った優香と恵理子はメンバーに役割を与えていく。


「ミリー、オリティエ、いつのものようにお願いね」

「「はい」」

「私達は冒険者ギルドへ行ってくるわ。何か持って行くものある?」

「いえ、素材の換金などでしたら、私どもで行ってきます」

「わかった。よろしくね。あ、そうだ。リシェル、ローデリカ」

「「はい」」

「後でパイタンを連れてキザクラ商会へ行ってきてくれる? メイド服と団服を作ってもらってきてほしいの」

「承知しました」

「後、普段着とか、寝間着とか下着とかもね」

「はい。わかりました」

「それと、アクア」

「はい?」

「アクアも一緒に行って、キザクラ商会の店員さんに聞こえるように、「干物がおいしそう」とか、「日本酒に合いそう」とか、「レイ様喜ぶだろうな」って、つぶやいて来てくれる?」

「……そんなんで酔っぱらいが釣れるんですか?」

「わからないけど、たぶん、一番近いのがキザクラ商会だと思うわ」




 優香と恵理子は、リーシャとブリジット、ネフェリとリピーを連れて冒険者ギルドへ行く。


「こんにちは」

「あら、こんにちわ。旅の方かしら」


 そう、暇そうにしている受付嬢が優香に問いかける。


「はい。旅をしている冒険者パーティ、クサナギです。よろしくお願いします」

「ご丁寧にどうもありがとうございます」

「ところで、ずいぶん静かですね」


 ギルドの中は、カウンターに受付嬢がいる以外、誰もいない。


「そうなのよ。急に魚がたくさん取れたものだから、みんな、アルバイトついでに、川へ行っちゃったわ。職員も冒険者もね」

「お姉さんは行かないんですか?」

「私、親が漁師だから、行かなくても食べられるから」

「そうでしたか」

「ところで、依頼を受けてくれるの?」


 ギルドの受付嬢は、優香と恵理子に何をしに来たのか、依頼を受けてくれるのかと、聞く。


「あ、違います。貼り紙をさせてほしくて」

「貼り紙? 一年間銀貨十枚だけど」

「お願いします」


 優香は銀貨を十枚渡し、貼り紙を貼らせてもらう。


「それじゃ、ありがとうございました」


 と、優香が立ち去ろうとするが、再び受付嬢に声をかけられる。


「ねえ、本当に依頼を受けてくれないの?」

「はい、僕ら、常設依頼専門でして」

「その常設依頼よ。見ての通り、冒険者がみんなで川へ行っちゃったものだから、肉が足りないのよ」

「その点なら大丈夫です。後で、うちのメンバーが売りに来ますから」

「それは助かるわ。でも、明日は? 明後日は?」

「……さすがにお約束できません」

「でも、一つだけ受けて。お願い」

「冒険者がたくさんいるじゃないですか、川に」

「山の仕事なの。冒険者はみんな川に行っちゃっているの。山に行ってくれないの」

「……」

「話だけでも聞いて。明後日、セントラルエルト、サウスエルトの国王がやってくるの。ここしばらくの魚が大漁の件でね。なんでも、この国が魚を取りすぎているせいで、下流まで来ないんじゃないかって」


 パイタンは南まで追い込んでいないからかな、と、優香は想像する。


「それで、その時に出す料理に、シチメンチョウが必要なの。捕まえてきてほしいの」

「何で魚が大漁なのにシチメンチョウ?」

「もともと兄弟とはいえ、魚の干物を国王の集まるパーティで出せる?」

「おいしいのに」

「そりゃおいしいわよ。私も好きだしね。だけど、王国からの依頼はシチメンチョウなの」

「冒険者に頼めばいいじゃないか」

「だから、行ってくれないの。全く危険がなくて、それでいてお金も食べ物も得られる魚の加工に行っちゃっているの」

「それって、危険な狩りを僕らにして来いってこと?」

「……いえ、言い方が悪かったわ。でも、お願い。プラチナランクパーティでしょ。危なくないわよね」

「もしかしたら森に入る。その時に見かけて、捕まえられたら捕まえてくるよ。それでいい?」

「ありがとう。それでいいわ。でも、なるべくなら捕まえて来て」


 はぁ。優香と恵理子はため息を一つついて、ギルドを後にした。



 

 優香と恵理子が前世の記憶をたどる。


「シチメンチョウって食べたことあったっけ?」

「なかったと思う。いつもチキン」

「どうなんだろうね。王族のパーティで出るなんて、ちょっと食べてみたくなっちゃうけど」

「食べたいです。鳥ですよね鳥。エビ、魚と来ましたから、鳥です」

「リーシャが食べたいっていうなら、とりあえず食べてみて、おいしかったら取りに行きましょうか」

「よし!」


 リーシャがこぶしを握った。




 優香と恵理子はリーシャ達を引き連れて宿に戻ってくる。


「女将さん、シチメンチョウって鳥を知っていますか?」

「もちろんよ。何言っているの? このノースエルトを代表する鳥じゃない」

「その料理って、出してもらうことできます?」

「いいの? 高くなっちゃうけど」

「構いません。お願いします」

「わかった。晩御飯を楽しみにしていて」

「それから、現物を見させてもらっていいですか?」

「見たことないの? こっちへいらっしゃい」


 女将さんは、食材庫へと優香達を案内する。


「このぶら下がっているのがシチメンチョウよ」

「「……」」

「へー、丸くておいしそう」


 優香は感情のこもっていない声で感想を伝える。そこには、すでに羽をむしられた胴体の直径が五十センチくらいのシチメンチョウがぶら下がっていた。

 リーシャは、興味を示したが、優香と恵理子は思った。色も模様もわからん、と。


「女将さん、ありがとうございます。夕食を楽しみにしています。僕ら、ギルドからシチメンチョウを取ってくるように言われて、知らなかったので助かりました」

「シチメンチョウを取ってくるのかい。余ったらうちにも回してくれると助かるよ。高く買い取るからさ」

「はい。頑張ってみます」




 夕食時。


「はい。シチメンチョウのグリルとシチューよ。グリルは薬草をまぶして焼いてあるわ。おいしいのよ」

「本当においしそう。いただきます」

「「「いただきます」」」


 優香は、グリルをナイフとフォークで切り分け、口に入れる。


「んー、おいしい。シチメンチョウステーキだね」

「本当。ジューシーでおいしいわ」


 恵理子もご満悦である。

 リーシャは無言で食べている。


「シチューもおいしいわ。女将さん、このお野菜もこの街で作られたものですか?」

「そうよ。おいしいでしょう。いつもはマスのシチューだけど、今日は注文通りにシチメンチョウにしたわ」

「マスも取れるんですね」

「川でね。お隣のラフィット、いえ、カヴァデールだっけ、そっちみたいに養殖はしてないけどね」


 女将さんは、キッチンにいったん戻って、お皿を持ってくる。


「はい、サービス。シチメンチョウの皮を焼いたの。シチューに入れるシチメンチョウは皮を取っちゃうんだけど、それに塩コショウをして焼いただけでもおいしいのよ」

「んー、女将さん、うれしいです。エールください!」

「あらあら。嬉しいわ。持ってくるわね」


 優香は恵理子と微笑み合う。居酒屋のノリになってくる。当然、未成年以外は、優香達が飲めば同じように注文する。


「あはははは、カンパーイ!」

「「「カンパーイ」」」

「ぷはぁ」


 優香はエールをのどに流し込んで、皮を食べようとフォークを皿に向ける。

 が、皿がない。


「マオ?」

「え?」


 恵理子が私じゃないと、周りを見回す。


「うん。いける。これも酒に合うな」

「「レイ義母様!」」


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