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アイスラーンスー!(優香と恵理子)

 何十分戦っているのだろうか、一時間以上戦っているのだろうか。ミリー達も戦闘に慣れてくる。

 動きは速いし一撃一撃は重い。体をくねらせて飛ばしてくる石つぶてもなかなか避けられるものではない。しかし、だいぶパターン化されてくると、余裕が出てくる。


「ミリー、これ、最終的にどうする?」


 オリティエが大蛇に攻撃しながらミリーに聞く。


「どうするって?」

「倒せたとして、どうやって持って帰る?」

「うーん。そうね。ちょっと考える」

「それより、全然効いている気がしないんだけど。ちゃんと削れているのかしら」

「それは大丈夫だと思うわ。でも、攻撃が数パターンしかないのが気になるけど」

「それでも一つ一つが強力だけどね」

「魔法、撃たないよね?」

「それ、フラグじゃないわよね」


 その会話に気づいたかのように、大蛇が動きを止める。そして、鎌首を大きくもたげた。


「退避―、退避―」


 大きな魔法発動の気配を感じ、ミリーが全員に指示する。

 全員が、バックステップを大きく踏んで、森の中へと下がる。が、大蛇は口を開け、その首を大きく円を描くように振り回した。炎をまき散らしながら。


「魔法少女隊! アイスウォール!」


 アリーゼ達がアイスウォールを顕現させ、炎から隊の身を守る。


「連続して撃てないことを願って、突撃! それと、魔法少女隊は森の鎮火!」


 再び騎士隊が飛び出して行く。


 アリーゼ達はウォーターボールを打ち出して、森に広がる火を消していく。


「ミリー!」


 オリティエが叫ぶ。


「わかってる。このままじゃ日が暮れるんでしょ。オッケー、そろそろ倒す算段をつけるわよ。あんまり、テンプレ的な倒し方は好きじゃないんだけど」

「ミリーって、そのきれいな容姿にしては、力押ししたがるよね」

「ありがとう。でもオリティエもね」


 さてと、と、ミリーはつぶやく。


「姫様隊、全力で街の入り口まで後退! 私達がこいつをプルしていくから、目に入ったらエヴァ、あなたは全力アイスランスをホールド。タイミングを見て撃って!」

「「「はい」」」

「エヴァ、行くよ。ついて来てね」

「はい」


 オッキーの合図でマティそしてエヴァが全速力で引いて行く。


「よーし、デカ蛇、ついてきなさい」


 ミリーが剣を叩き込んで、引く。

 オリティエも同様に剣を叩き込んでいく。


「後退しながらは楽でいいわ。順番に叩けばいいんだから」

「そうね。ついて来てくれれば叩く必要もないし、ダメージを与える必要もないしね」

「でも、街までプルして大丈夫かしら」

「大丈夫に決まっているでしょ。街に誰がいると思っているの?」

「ふふふ。そうよね」


 シャー!


 大蛇は、かみつこうと攻撃を仕掛けながらついてくる。

 ミリー隊もオリティエ隊も、後ろ向きながら全力で街へと向かって下がっていく。


「ミリー、もうすぐ広場に出る」

「オッケー。そこからは道があるからさらに楽になるわ」


 ガサガサ

 ドーン!


 大蛇がミリー達に攻撃を仕掛ける。ミリー達はそれをバックステップでよけながら広場へと飛び出した。


「なんだなんだ?」


 広場にいた冒険者達は、飛び出してきたミリー達に注目する。が、すぐに固まる。

 ミリー達を追いかけて出てきたそれ。巨大なヘビ、真っ白な大蛇に体が硬直する。が、


「やばい、逃げろ!」


 という誰かの言葉に意識を取り戻し、何もかもを投げ捨てて森へと逃げていく。


「ごめんねー」


 ミリー達は、冒険者達に謝りながら、道を下っていく。

 当然、大蛇はミリー達を追いかける。




 ドスン、ドスン!


 大蛇の攻撃音が響いてくる。


「エヴァ、近いよ」

「うん。見えたら準備する」

「よろしく」


 マティがエヴァの前に立つ。オッキーもマティに並んで立った。


「エヴァ、砲撃準備!」


 オリティエの声が聞こえる。


「はい!」


 エヴァは全魔力を注いだアイスランスを顕現させる。

 そこへ、


 シュタッ! シュタッ! 


 と、ミリー達がエヴァの数十メートル手前に集まっていく。


「ほら、攻撃してこい!」


 ミリーが言うと、大蛇は大きな口を開けて、ミリーにかみつこうと突進した。


「今! てー!」

「アイスラーンス―!」


 ザシュ!


 エヴァの全力のアイスランスが大蛇の口の中に吸い込まれた。

 アイスランスの勢いは止まらない。大蛇の体の中を突き進んでいく。正しくは消化管の中を。

 そのアイスランスの勢いのせいで、大蛇は五十メートルもの体をピーン!と伸ばし、そして、


 ドスン!


 と、道に倒れ込んで、動かなくなった。


 同時に、


 バタン!


 エヴァも倒れこんだ。


「よーし!」


 と声を上げて、ミリーやオリティエ達は、ハイタッチを交わしていく。


 オッキーとマティは、エヴァを抱き起す。


「ごめんね、ありがとう」


 エヴァがオッキーとマティにお礼を言う。


「いいよいいよ。エヴァのアイスランスはやっぱり最強だよ」

「うーん。これしかできないけど」


 一応断っておくが、エヴァは治癒魔導士志望である。




「さて、どうしようか」


 ミリーがオリティエに相談する。相談している内容は、


「どうやって運ぶ? ここで解体する?」


 ということだ。


「これ、冒険者集めても、ギルドに運べなくない? 解体するしかないんじゃないの?」

「そうだけど、このうろこ、全然刃が通らなかったじゃない。解体できるの?」

「うーん」


 と言っていると、


「ミリー!」


 優香と恵理子がブリジット達を連れてやってきた。


「あ、タカヒロ様、マオ様」

「これ、どうしたの?」

「森の奥で見つけたので、ここまでプルして来て、最後はエヴァのアイスランスでこうなりました」

「えっと、この子、まだ生きているけど?」

「……では早くとどめをささないと、ということですか?」

「そう言うことだね」

「ですが、このうろこ、刃が通らないのです。タカヒロ様ならできますか?」

「うーん。やってみる?」


 そう優香が剣に手をかけると、


「ちょっと待って」


 アクアが飛んできた。文字通り空を。

 そして、


 ビシバシ!


 と、ヘビの鼻先を叩いた。

 すると、大蛇は、スルスルスルと、小さくなって、白い肌、白い髪、白いワンピースの女の子になった。

 その子は、おなかを手で押さえて、うんうんうなっている。


「えっと、どういうことかな? アクア」


 優香がアクアに何が起こったのかを聞く。


「この子、私と同じ精霊です。高位精霊です。この感じ、土の高位精霊ですね」

「土?」

「正しくは大地から派生した高位精霊です」

「ヘビだったじゃん」

「姿はイメージですから」

「そうなんだ」


 恵理子は、その会話を聞きながら、


「おーい、大丈夫かい?」


 と、女の子に声をかける。すると、女の子は、何とか声を発する。


「冷たいものを食べて頭がキーンってする。おなかが痛い」


 オッキーは思う。あのアイスランスを受けて、おなかが痛いくらいで済むなんて、胃腸が丈夫なんだな、と。


「ヒール!」


 そう言って、恵理子は女の子に魔力を流し込む。

 すると、女の子は呼吸を落ち着かせ、そして、体を起こす。

 女の子は、周りを見回すと、おなかの痛みを消してくれた恵理子の背中にすすす、と移動し、そして恵理子に耳打ちした。


「この人達、私の昼寝を邪魔した挙句、私のこといじめるの」


 いじめるっていったい……、ミリー達は考える。


「そう。そうなんだ。ごめんね。この人達、お姉ちゃんの仲間なんだ。君が強そうだから、ちょっと挑戦しちゃったみたい」

「そりゃ私、強いけど。でも、あんな氷を食べさせるなんて……」

「ごめんごめん。あったかいご飯食べる? もうすぐ晩御飯の時間だよ」

「おいしい?」

「おいしいと思うな。マスのお鍋を今日も作ってくれるって女将さん言っていたし」

「マスって?」

「お魚だよ。おいしいよ」

「うん。食べる」


 ミリー達は思う。高位精霊を食べ物で釣るのかと、連れ出していいのかと。


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