表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

199/445

エヴァのビンタ(優香と恵理子)

「オリティエ、じゃあ、勇者様方を馬鹿にされたこと、許せる?」

「許せないわよ。でも、ここは我慢するしかなくない? だって、雑魚中の雑魚ですもの。自分達の弱さを理解して、しっぽをまいて逃げ出したサザンナイトの騎士の方が、まだましに見えるわ」

「貴様ら、言わせておけば」


 オリティエはマイネルを無視して続ける。


「こういうの、なんて言うんだっけ、井戸の中のカエル?」

「オリティエ、わかったわ。行きましょう。カエルがかわいそうだわ。今度カエルを見たら謝らないと」

「そうね。行きましょう」


 ミリーとオリティエがマイネル達から視線を外す。


「貴様ら、聞け!」


 マイネルが叫ぶと同時に、その横に控えていた小柄な騎士が剣を抜き、ミリーに切りかかった。


「貴様ら、無礼だぞ!」


 ガキン!


 それをミリーがお玉で受け止める。


「マイネルと言ったか? この行為は我らに対する攻撃と取ってよいな。我らがこれから行うのは正当防衛だ。死んでも文句を言うなよ」


 ミリーがここから攻撃に移ることを宣言する。


「おい、お前ら、どうせこいつらを叩き潰すつもりだったんだ。きっかけはどうあれ、やるぞ」


 マイネルが宣言し、騎士達が剣を抜く。騎士達の総数はおよそ三十。


「全員、お玉装備!」


 ミリーがメンバーに指示をすると、全員が両手にお玉を持つ。


「貴様ら、どこまで我を愚弄すれば……」


 小柄な騎士が怒りを口にする。


 広くもない道の森側に騎士が、街側にミリー達が立ち、向かい合う。


「お前ら、行くぞ!」


 マイネルが声をかけ、騎士達が下り坂を駆けおりる。


「みんな、駆け抜けるよ!」

「「「「はい!」」」」


 ミリーの合図で、メンバー全員が走り出す。


 先頭を走るマイネルの剣をミリーがお玉ではじき、オリティエがその顔面にお玉をたたきつける。次の騎士もその次の騎士もそのまた次の騎士も。

 顔を殴られてよろけたところにまた次のお玉が襲ってくる。よって、騎士全員が何発も顔にお玉を撃ちこまれて倒れる。

 とはいえ、お玉にさほど殺傷力はない。


「お前達、立て! あいつら、馬鹿にしやがって」


 マイネルが騎士達に命令する。


「おい、私達は一撃ももらっていないぞ? 実力差はわかっただろう」

「ラフィットの騎士をなめるんじゃない。一番隊右、二番隊左、森に入れ!」

「「はっ」」


 道から外れ、左右の森の中に十数名ずつ騎士が紛れて行く。


 道に残ったのは、マイネルと小柄な騎士、それと、もう二人。


「さ、どうしましょうか」


 ミリーが首をかしげる。


「えっと、確認だけど、戦闘続行ってことでいいわよね。で、ここまでされたら私達もどこまで手加減できるかわからないわよ?」


 マイネルはそれを無視し、


「やれ!」


 と、声を上げると、左右の森から、そして、マイネルの後ろから、投げナイフがミリー達を襲った。


 ガキンガキンガキン!


 それをすべてお玉で撃ち落とすミリー達。


「えっと、これ、いつまで続くのかしら?」

「お前らが死ぬまでじゃない?」

「そ、その言葉が聞きたかったわ。これで遠慮なく、あなた達を殺せる。オリティエは左、私達は右、姫様隊は正面のあいつらを任せる」

「「はい」」

「全員お玉解除! 殲滅だ!」

「「「「はい!」」」」


 オリティエ隊が左の森に、ミリー隊が右の森に突入する。素手で。




 姫様隊はマイネル達三人の騎士と向き合う。小柄な騎士はその後ろに控えているからだ。


「ねえ、どうする。隊長さんっぽい人を任されちゃったけど。あの人、強いのかなぁ」


 エヴァが心配事を口にする。


「大丈夫じゃない? さっきだって、私ら一撃もくらってないよ。見てよ。鼻血出してる」


 オッキーが答える。


「ぶふっ! こんな時だから言わないように、見ないようにしていたのに」


 マティが笑ってしまう。


「でも、素手? オッキーはいいけど、私達二人は顔まで届かないかもよ?」

「うーん。棒にする?」


 オッキーがマティに提案する。


「そうね。棒にしましょうか」

「えっと、私も?」


 エヴァが二人に聞く。


「持ってないとナイフが飛んでくるかもよ」

「わかった」


 三人は薙刀の柄をかまえる。もちろん刃はついていない。


「おい、相談は終わったのか? こっちは、貴様らみたいなガキを当てられてムカついているんだ。あのリーダー格の二人より強いのか?」

「いえ、私達三人は最後に入った新人ですけど」

「なめやがって!」


 マイネルが切りかかってくる。その後ろから二人の騎士が牽制のためのナイフを投げる。

 エヴァが一歩前に出てナイフを柄ではじく。

 オッキーが右からマイネルの剣を受け止める。マティが左からマイネルの足を、思い切り柄でたたき、払いあげ、マイネルを宙に浮かせる。

 そこへ、オッキーがマイネルの延髄に向かって柄を叩き込んだ。

 これでマイネルが沈黙する。


「三人相手に、一人で来ちゃダメじゃん。有利な条件で戦わないと」


 オッキーが気を失ったマイネルにお説教をする。


「さて、残り三人ね。じゃあ、私が左、オッキーが右でいい?」

「いいけど、有利な立ち位置で戦うってのがリシェル達の教えだけど」

「うん。だから、右と左を私達で抑えて、真ん中のあの小さいのをエヴァがコツンってやって来て」

「コツン……」


 そんな相談をしてはいるが、相手は待ってくれない。二人の騎士が同時に切りかかってきた。


「エヴァ、お願いね」


 と、オッキーとマティが二人の騎士と対峙する。

 エヴァは、しかたないなー。とつぶやいて、前に出る。


「どいつもこいつもバカにしやがって」


 小柄な騎士がエヴァに向かって走り出し、剣を突き出してきた。

 エヴァは、左足をすっと引いて体を半身にすることでその剣をよけ、そして、


「ごめんね」


 と言って、騎士のほほを殴った。薙刀の柄ではなく、平手で。


 パチン!


 剣をよけられて、しかもほほをはたかれて体勢を崩した小柄な騎士は、よろよろと歩き、そして、膝をついた。


 エヴァがオッキーとマティの様子を見ると、すでに騎士を倒した後だった。


「オッキー、マティ、お疲れ様。二人とも、こんな大きな騎士をのしちゃうなんてすごいね」

「何言ってるの、ビンタ一発で戦意をくじくエヴァの方がすごいわ」


 マティがあきれて言う。


「え?」

「いいの? あれ、あのままで」

「うーん。もう戦う意思はなさそうだしいいかなって」

「でもあいつでしょ。一番最初にミリーに切りかかったの。あいつが発端なんだから、殺しちゃってもよかったんじゃない?」

「でも、もういいよ。なんか目は明後日の方向見ているし、ぶつぶつ言っているし。それに、「殺しちゃってもよかったんじゃない」なんて、マティはすっかり王女らしくなくなっちゃったね」

「あ、おほほほほほ。そうでしたわね」

「「あははははは」」


 笑いあっていると、両側の森から、ミリー隊とオリティエ隊が出てきた。


「「「お疲れさまでした」」」

「こっちも終わったみたいね。お疲れさま。で、あれは?」


 ミリーが膝をついて何かをつぶやいている騎士を指さす。


「エヴァがビンタ一発で別の世界に飛ばしました」


 オッキーが報告する。


「そう。それはそれですごいわね」

「ミリー達は、騎士を殺しちゃったんですか?」


 エヴァが聞く。


「いえ、殺す価値もないわ」


 ミリーは、そんなことはもうどうでもいいと、思考を別に向ける。これからどうしようかと。


「変なトラブルに巻き込まれちゃったけど、予定通り魔物を狩りに行きましょうか」

「「「「はーい」」」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ