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ネフェリ様とリピー様をペット扱いするとは万死に値します(優香と恵理子)

 リーシャが立ち上がる。


「お二人の探している方々との思い出の料理なんですね。お任せください。私達がお二人のその目的を全力でサポートします。だから、絶対にかないます。またそのお仲間と食べられますよ。まだ道の途中ですが、今はどうか、私達とこの料理を一緒に食べてください」

「ふふ、当り前じゃない。あなた達は私達の仲間であり、家族なんだから」


 恵理子が涙を拭いて立ち直る。


「ごめんなさい。じゃあ、いただきましょう」

「「「「いただきまーす」」」」

「鍋、よそうよ」

「あ、ありがとう」


 恵理子はお椀を受け取る。


「ふーふー」


 パクッ


 魚を口に入れる。


「おいしい。おいしいよ」


 止まった涙が再び恵理子のほほを濡らす。


「あの子達、絶対好きだよね。みんな揃ったら食べにこよう」

「他の街にも鍋、あるかしら。鍋を巡る旅も楽しそうよね」

「そうだね」

「ほら、思い出に浸ってないで、目の前のムニエルもフライも食べておくれ。おいしいから」

「「はい。いただきます」」


 リーシャはお玉で鍋から魚をすくう。


「リーシャ、野菜も食べなさい」

「……まずはお魚から」

「野菜も出汁がしみておいしいから」

「はーい」

「ムニエルとかフライは食べたの?」


 優香がリーシャの皿を見る。


「えへへ」


 どちらもすでに消えていた。


「あは、あははは」

「あはははは」

「「「あははははは……」」」


 優香と恵理子がおもむろに立ち上がる。


「みんな、ありがとう。僕らの家族になってくれて」

「ごめんね、昔を思い出して泣いちゃって。今も楽しい。こんなに楽しい。みんなのおかげよ。これからも、みんなと一緒にありたいと思う。みんな、よろしくね。ありがとう」


 突然、パーティリーダーであり、憧れの二人にそんなことを言われ、どうしていいかわからなくなるメンバー。一人を除いて。


「はひひっへるんれふは、あはひまへへふ」

「飲み込んでからしゃべりなさい」


 ごっくん


「当たり前です。私は、お二人と結婚するんですから」

「り、リーシャ? 何を言って?」

「恋愛に性別なんて関係ないですし、重婚? どんとこいです」


 リーシャはそう笑う。


「私も―」

「私もです!」


 あちらこちらからリーシャに追従する声が上がる。


「ばかね、あなた達。結婚なんて単なる紙切れ一枚の制約よ。そんなものより強い絆を私達は持っている。そうでしょ」


 目をキラキラさせるもの多数。


「暗に結婚を断られた気がします」


 と、がっかりする者、リーシャを含めて数名。


「みんな、ありがとう。大好き」


 恵理子のその一言に涙する者多数。


「ねえねえ、感動に浸ってるところ悪いんだけど、ご飯食べて」


 女将さんがため息をついて見せる。笑いながら。


「鍋はね、絆を強くする食べ物なのよ」





 翌日。


「今日一日、みんなはどうするの?」


 いつも一番に答えるリーシャではなく、ブリジットが先に答える。


「私はお二人の護衛がてらついて行きますが」

「私達もそうします」


 ネフェリとリピーも二人について行くことにする。


「私達は訓練がてら森に入ってきてよろしいでしょうか。魔物がいたら討伐してきますし」


 ミリー達は森へ入るようだ。


「うん。いいけど、どうもこの国の騎士達も森の中で訓練をしているらしいから、邪魔にならないようにね」

「はい」


「で、リーシャは?」

「私、魚を見てくる」

「ふふ、いってらっしゃい。池に落ちないようにね」


 ちなみにアクアの最近のお気に入りは、タロとジロと一緒にする昼寝だ。


「アクアは、たまには動きなさいよ。まあ、馬車を見ていてくれるから助かるけど」

「うん」


 実際にはアクアが見ているのではなく、タロとジロとアクアの周りを漂う精霊達が近づくものを探知しているのだが。




 ミリー達は山へと続く道を通り、森へと向かう。

 森の入り口には兵士が立っており、ミリー達に声をかけてきた。


「ちょっと待て」

「なんでしょうか」

「冒険者か?」

「はい。そうですが」

「ひいふうみい……」

「十五人です」

「お、ありがとう。十五人な。それだけいれば大丈夫だろう。見ない顔だから旅の冒険者だろう? 注意事項な」


 そう言って兵士は続ける。


「まず、この森の手前側な。騎士様や兵士が訓練をしている。決して殺気を放たないでくれ。なるべく目立つように歩いてくれ。でないと敵と認定されてしまうかもしれない。それから、その奥、道が続いている範囲が薬草採集の範囲。道がなくなったその奥が魔物討伐を冒険者達が行っているところだ。あんまり奥まで行くと帰って来られなくなるからな、気をつけろよ」

「はい。ありがとうございます」




「それじゃ、とりあえず、この道の一番奥まで行ってみましょうか。そこまで警戒はしなくてよさそうよね」

「「「はい」」」


 ミリー達一行は緊張感もなく、隊列も組まずに道を進む。兵士にも言われたが、殺気を出して訓練中の騎士や兵士に絡まれてもたまらない。


 が、しかし、隠せないものもある。


 突然、ミリーが右腕を横へ伸ばし、一行を止める。


「グエ」


 緊張感もなく歩いていたために、前にぶつかる者が出る。

 しかし、一瞬にして緊張感が広がる。


 ミリーの前に投げナイフが何本も刺さった。


「誰だ!」


 ミリーが叫ぶ。それと同時に、皆が警戒態勢に入る。

 すると、


 パチパチパチ


 拍手をしながら出てくる男が一人。

 腰には短剣を携えているが、鎧は着ていない。冒険者のようないでたち。だが、ここはまだ騎士や兵士の訓練区域のはず。


「冒険者?」

「あははは、冒険者に見えるよね。これでもこの国の騎士だ。マイネルという。この国の騎士団長の一人を務めている。ちなみにこの格好だけどね、ちゃんと地上戦では鎧を着るし盾も持つよ。でも、山の中では鎧も盾も邪魔なんだ。わかるだろ? って言いたいところだけど、逆にその広がったスカートは邪魔じゃないのかい?」

「メイド服は最強でしてよ。で、私達に何の用かしら。ナイフまで投げておいて。死にます?」

「いや、だから外しただろう?」

「だから何の用だと? ナイフを投げた時点で敵対行動とみなします」


 ミリーが殺気を放つ。


「待て待て待て、君ら、あのプラチナパーティのメンバーだろう? 全員がおそろいの恰好をしているし、強そうに見えたからさ、僕らの訓練にちょこっと付き合ってくれないかな、と思ってさ」

「お断りします」

「報酬なら弾むぞ」

「お金には困っていません」

「じゃあ、何ならやってくれるんだ?」

「やりません。私どもは勇者様、聖女様に仕える身。お二人のためにならないようなことは致しません。必要がありません」

「ふーん。その勇者様ってのと聖女様ってのだけが強いのか、実はただその名を名乗ってやりたい放題やっているのか。そもそも、本当にドラゴンを飼っているのか」


 マイネルが口に出してはいけない疑問を口にする。


「勇者様と聖女様のことを侮辱することは許しません。そのうえで、ネフェリ様とリピー様までペット扱いするとは万死に値します」

「で、あんたらはその甘い汁を吸っていると」

「貴様ら、ころ……」

「やめなさい、ミリー。相手の強さも計れないような雑魚、相手にするのは馬鹿らしいわ」


 オリティエがミリーを止めに入る。


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