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国王の登場(優香と恵理子)

「では、参る!」


 騎士団長は、ミリーに切り込む。


「えっと、いちいち宣言したら、タイミングバレバレじゃない?」


 そう言ってミリーが剣をよけると、騎士団長は勢いのままミリーの横を通り過ぎる。まるで闘牛の牛のように。


「貴様、覚悟しろ。斬岩剣!」


 騎士団長が思いっきり剣を振り下ろす。しかし、ミリーは、すっとよけてしまう。剣が地面に突き刺さると、砂埃が舞う。そのすきを逃すミリーではない。


 パコン!


 ミリーが騎士団長のおでこにお玉をヒットさせる。


「はい、あなたの負けです」

「な、負けていない!」

「えー、お玉でパコンっていい音しましたよね。これが刃物だったら、あなた死んでいますよ? そもそも、斬岩剣って、何ですか? 岩を切れるんですか? それ、自慢になります?」

「な、きさま、愚弄するか? スピードとパワーそれが合わさったこの技が斬岩剣だ。何度も避けられると思うな! 斬岩剣!」


 騎士団長が再び剣を振り下ろす。


「動きのない岩に対してならいいのかもしれませんが、人に対しては無駄が多すぎです」


 ミリーはそれをくるりと回転してよけると同時に、お玉を騎士団長の鼻に叩き込んだ。


 バコン!


「ぐあっ!」


 騎士団長が剣を離して鼻を押さえる。鼻から血がたれるが、その鼻自体はつぶれてしまっている。


「おい、お前ら、全員でやるぞ! かかれ!」

「えー。みんな、お玉で応戦よろしく」


 ミリーが隊のメンバー、オリティエ隊のメンバーに声をかける。


「「「はいっ」」」


 騎士達はミリー達に襲い掛かるものの、フルプレートの鎧を着ていてはスピードでミリー達にかなうわけがない。

 ミリー達は、お玉で騎士達を叩いて行く。


 しかし、残念なことにお玉ではフルプレートメイルにそうダメージを与えられない。


「しつこいですね。全員メイス装備!」


 ミリーが声をかけると、お玉をメイド服のスカートにしまい、代わりにメイスを取り出した。


 ガコン! ガコン! ガコン!……


 ミリー達は、騎士のヘルメットに胴にメイスを叩き込んでいく。

 全身が鎧に守られているとはいえ、さすがにメイスで叩かれればダメージを食らう。


 騎士が少しずつ倒れ込んでいく。


「団長!」


 一人の騎士が、始めに剣を振りかざした騎士団長に声をかける。


「くそっ。退却!」


 騎士達は、倒れた者を背負って去って行った。


「なんだったのかしら」


 ミリーは首をかしげた。




 しばらくすると、優香達が宿に帰ってくる。


「ミリー、ただいま」

「おかえりなさいませ、タカヒロ様」


 ミリーは、優香の様子を見て、


「お疲れですか?」


 と、声をかけた。


「うん。大丈夫。強い騎士に会えなくって、無駄足だった」

「そうなのですか。残念ですね」


 そう話をしていると、恵理子達も帰ってくる。


「馬車に乗せてもらって帰ってこればよかったわ」

「そっちも、期待外れってところ?」

「そうなの。まあ、レベル的には、アストレイアとあまり変わらないわね」

「うん。この国にもいないのかな」

「まだ魔導士団に会っていないけどね」

「騎士団にもだけど」

「あの」


 ミリーが二人に声をかける。


「どうしたの?」

「ここに騎士団っぽい人達が来たんです」

「で、なんだって?」

「実力を見せろって襲ってきました」

「そっか。ミリー達もお疲れ様だったね」

「大丈夫です。すぐにおかえりいただいたので」

「まったく、この国ってどうなっているのかしら」


 恵理子が首をかしげる。


「わかんないけど、あまり用事もないし、明日には街を出ようか」




 翌朝早く。


「お客様! お客様!」


 ドンドンドン


 部屋のドアが激しくノックされる。

 その騒ぎのために廊下へ飛び出すミリー達。すでに着替えは済んでいる。


「何事ですか」

「あ、お客様。お迎えが来ておりますが」

「誰ですか。そんな約束はしていません」


 ミリー達はスケジュール管理も完璧だ。


「あの、王家の旗が掲げられているので国王様の関係かと。それに、何十人もの騎士や魔導士が付き添われています」


 そこへようやく優香と恵理子が廊下に顔を出す。


「それって、断ってもらえないんです?」

「は? 単なる宿屋の娘が、王家に物申せるわけないじゃないですか。お願いしますよ。何とかしていただけませんか?」

「はぁ。ミリー、悪いけど要件を聞いて来て。ブリジット、リーシャとアクアを起こして着替えさせて。他の者も準備をよろしく」

「「「はい」」」




 ミリーが部屋に戻ってくる。


「優香様、恵理子様、この国の王が、お二人と我々に会いたいそうです。それで迎えに来たと」

「それ、断れないかな」

「そう思ったのですが、騎士と魔導士っぽい人が出て来て、強い騎士と強い魔導士に会わせると約束したと」

「あー、マーベラスさん達か」

「そういえば、そんな約束したかしらね」

「確かに、騎士団にも魔導士団にも会ってないから、行ってみる?」

「そうね。行ってみましょうか」

「ミリー、全員に出かける用意をさせて」

「はい」




「おー、タカヒロ殿。昨日は失礼した。ひよっこではなく、今日は王城に参ろうぞ」

「マオ殿も、魔導士団を見ていただきたい」

「「……」」


 クサナギの二十一人は用意された馬車に乗った。

 馬車は昨日と同じコースをたどるが、高等学園のある方向へ曲がらず、まっすぐ王城に向かう。

 しかし、前後に騎士や魔導士が歩いているため、その進み方は遅い。遅い理由はそれだけではないだろう。馬も頑張っている。

 しかも、王家の旗を掲げているものだから、朝早いとはいえ、街を行く住民たちが頭を下げている。


「なんて迷惑な馬車」


 優香がぽつりと本音を漏らしてしまう。


「そうではありませんぞ。この豊かな国を築き上げた国王に対し、皆、敬意を払っておるのですよ」


 確かに国は豊かだし、国民の顔は明るい。いい国なのだろう。国民が王家の旗に頭を下げるのも不思議ではないか。そうとも思った。




 馬車が王城の門をくぐり、庭を抜け、玄関前にたどり着く。


 優香達は馬車から降りると、ルーベルグとマーベラスに案内される。

 二人が優香達を連れて行ったのは、謁見の間だった。


 謁見の間は神殿のような作りで、太くて大きい柱が左右に並び、その間に、幅五メートルほどの赤いじゅうたんが奥に向かって敷かれている。その先には階段があり、その上に椅子がいくつか並んでいた。

 赤いじゅうたんの左右には、右に騎士達が、左に魔導士た達が並んでいる。


 優香達は、絨毯の上を前へと進む。ルーベルグ達は、階段の手前で優香達を止めると、左右に下がっていった。


「国王陛下の御入室です」


 そう声がかかると、左右の騎士、魔導士が膝をつく。

 もちろん、配下ではない優香達が膝をつく理由はない。

 頭に冠を乗せ、赤いマントをつけた、国王オブ国王的な恰好をした国王が左の袖から出てきた。その後ろから何人かを引き連れて。

 その一人に、優香は見覚えがある。騎士高等学園にいたオキストロだった。


 国王が、椅子に座る前に、


「おもてを上げよ」


 そう声をかけると、騎士、魔導士が立ち上がった。

 もちろん、優香達は初めから頭を下げていない。

 壇上では、国王とオキストロが椅子に座った。

 国王の斜め後ろにいるのが宰相で、右が騎士団長、左が魔導士団長ってところかな。そう、優香はあたりをつける。で、オキストロは、王女かなと。


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