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騎士高等学園と魔導士高等学園(優香と恵理子)

 クサナギ一行は、その後数日にわたり移動をし、途中の街はスルーして王都へとたどり着いた。


 あんなことがあったにもかかわらず、王都へは普通に入ることが出来た。なぜか。知られていないはずはないと思うのだが。


 いつものように宿を確保して部屋で休む。

 すると、宿屋の従業員が部屋をノックしてくる。


 トントントン


「はい」


 優香がドアを開ける。


「あの、お客様に、国立高等学園の方々がお見えになっていますけど」

「国立高等学園?」

「はい。騎士高等学園の方と、魔導士高等学園の方です」

「要件はなんだかわかる?」

「申し訳ありません。恐れ多くて聞けませんでした」

「わかりました。降りてみます」


 優香と恵理子がいつものようにリーシャとブリジット、ネフェリとリピーを従えて一階の食堂へと降りてきた。


「おー、皆さんがプラチナランク冒険者パーティクサナギの冒険者ですかな」

「あ、ずるいぞルーベルグ。私はマーベラス。魔導士高等学園の学園長をしている」

「私はルーベルグ、騎士高等学園の学園長です」

「それで、どのようなご用件でしょうか」

「皆さんのパーティに、有望な未成年の冒険者がいると聞きまして、剣士の子をぜひ、我が騎士高等学園へ入学をと思いまして」

「魔導士の子をぜひとも魔導士高等学園へ。特に、治癒魔法に適性のある子がいると聞いています。特待生としてどうでしょうか」

「あの、お断りさせていただきます」

「まあ、そう性急に決めなくてもいいのではないでしょうか。まずは見学からいかがですか?」

「そうですとも。我が学園のカリキュラムを見ていただいて、それから決めていただいても。我が国の魔法教育のレベルの高さを実感していただけると思いますよ」

「いやいや、騎士教育も素晴らしいですぞ」

「保護者の方々もぜひ見ていかれませんか?」

「うーん」


 本来なら悩むまでもない。お断りの一択だ。しかし、強い者がいるかもしれない。卒業して騎士や魔導士になっているかもしれないが、そういった人に会えるかもしれない。貴博達が自分達と同い年とは限らないし、まだ学園に通う年齢かも知れない。


「学生のレベルはどのくらいなのですか?」

「それは、皆様の目でお確かめください」

「騎士や魔導士になられた人で、強い人って紹介してもらえますか?」

「王城にいる者でしたら、紹介できると思います」

「強い者に興味がありますかな? ぜひ、我が国のレベルを見て行ってください」


 そこまで言われると、ちょっと断りにくい。

 そもそも、強い者に会って、本当の貴博や真央、千里や桃香かどうかを確認したい。


「見学について、少し相談させてください」

「おー、構いませんとも」

「我々はここで待たせていただきます」


 優香達は、部屋へと戻り、ミリー達を呼ぶ。


「アリーゼとナディア、それからエヴァとアクア。ちょっと魔導士高等学園を見に行くのに付き合ってくれる?」

「魔導士高等学園ですか?」

「もちろん、入学する気がないことはわかっている。だけど、ちょっと私達に確認したいことがあって、中に入りたいんだ」

「そういうことなら、大丈夫です。もちろん、このパーティから脱退する気はありません」


 アリーゼが答えた。


「それから、ヴェルダとメリッサ、君たちは騎士高等学園の方」

「あの、私は?」


 マティが聞いてくる。


「仮面を取れって言われてもめんどくさいから、今回はお留守番で」

「……はい」

「それじゃ、ミリー、オリティエもお留守番よろしくね」

「はい。いつも通り、馬車のメンテや買い出しを行っております」

「よろしくね。じゃあ、六人は一緒に一階へ降りようか」


 再び食堂に戻る。


「こっちの四人が魔導士です。十二歳が二人、十四歳が二人です。それから、こっちの二人が十四歳で、うちの剣士です」

「そうですかそうですか。我が学園を見てくれるのですな」

「我々が三人ずつ、保護者としてついて行きたいと思いますが、よろしいでしょうか」

「はい。もちろん構いません」

「それでは、まいりましょうか。外に馬車を用意しております」


 両学園長について宿を出ると、少し大きめの、しかも装飾のなされた馬車が二台止まっていた。


「それでは、魔導士高等学園へ行かれる方は、前の馬車へ乗ってください」

「騎士高等学園へ行かれる方は、後ろの馬車にお願いします」

「マオ、リーシャとリピーを連れて、魔導士高等学園へ行ってくれる?」

「おっけー。そっちへ行ってくるわ」

「ブリジットとネフェリは僕と一緒に騎士高等学園へね」

「「承知しました」」




 馬車に乗り込むと、馬車は王都のメイン大通りを、街の中心、王城に向かって進んでいく。とろとろと。

 馬は頑張った。ネフェリを乗せていても、リピーを乗せていても。


 通りの左右には、背の高い建物が並んでおり、人の出入りも激しい。これらの光景からも、この国が栄えていることがうかがえる。


「すごく栄えているんですね」


 優香がそう感想を漏らすと、ルーベルグが得意げに答える。


「そうだとも。現国王が即位されてから、改革を推し進め、人は増え、経済は周り、どんどんと国が栄えておる。そういう情報はあまり発信していないのだが、まあ、見ての通りですな。百聞は一見に如かずですぞ」


 しばらく通りを眺めながら進むと、優香達の乗っている馬車が右へ、恵理子達の乗っている馬車が左へ曲がった。


「騎士高等学園と魔導士高等学園は違うところにあるのですね?」

「この通りの右に騎士高等学園、左に魔導士高等学園がある。王に謁見するときも右が騎士、左が魔導士と決まっているのですよ」


 学園の門をくぐり、校舎と思われる建物の玄関先に止まった。

 ルーベルグが先に馬車を下り、それに優香達が続く。


「早速ですが、授業を見ていただこう」


 ルーベルグが校舎の中へと歩いて行くのでついて行く。


「この学園は、十二歳で入学し、十五歳で卒業する。卒業時には、その能力に応じて、騎士に選抜されたり、冒険者への道を選んだり、また、武の道をあきらめた者は一般市民になったりと、進路は様々。だが、多くの生徒は騎士を目指しているのです」


 ルーベルグはある教室の前に立ち、授業内容を説明する。


「ここでは、騎士としての作法や一般教養も学ぶし、冒険者になっても困らないよう、魔物のことも学ぶことが出来る。多くのことは国立学園で学ぶから、その応用なのだが」


 ルーベルグは歩きながら説明を続ける。


「一学年三クラスがあり、成績順にクラスをわけられている。成績は剣術で判定する。要は、強い者がより良い教育を受けられることになる」


 さらに歩いて行くと、大きな食堂に入る。


「ここは食堂で、昼食をとることが出来る。学園に通っている者は無料ですぞ」


 ルーベルグは得意げに上唇のひげをなでる。


「さてと、訓練場を見に行くかの。今の時間は三年次が訓練をしている」


 優香達は、ルーベルグについて訓練場へと移動した。


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