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あなたのように自分を傷つける人に絶対に教えない!(優香と恵理子)

「レイ義母様、ドライア義母様にディーネ義母様。ディーネ義母様は、今日はありがとうございました。おかげで助かりました」

「あらあら、いいのよ。精霊が騒いでいるようだったから、ちょっと見に来ただけなの。そうよね、アクア。出てきなさい」

「は、はい!」


 アクアが実体化する。


「あ、あの。アクア、と申します。ディーネ様に本日祝福していただき、お名前までいただきました。今は、皆様のご子息、ご息女であらせられるタカヒロ様とマオ様のおそばに置かせていただくことになりました……優香? 恵理子?」

「あ、アクア、ごめんね。言ってなかった。本当の名前は私が優香。こっちが恵理子ね。外ではタカヒロとマオってことにしているだけ。それでいい? 理解した?」

「は、はい。ではここでは、優香様と恵理子様ということで?」

「うん。それでお願い」

「アクアと言ったか。私はレイ。よろしくな」

「私はドライアよ。よろしく」

「あの、お三方とも……」


 このアクアの質問に優香が答える。


「三人とも私達のお義母様で、大精霊よ」

「……やっぱり」

「アクア、そう緊張するな。私達の娘をよろしく頼む」

「は、はい。レイ様」

「まあ、飲め」


 レイは日本酒とイカを取り出す。


「相変わらずレイ義母様は」


 あははは。緊張している一人を除いて笑いが起こる。


「ところで、どうして義母様方は?」

「会いたくなったからに決まっておろう。いつ来たっていいだろ?」

「もちろんです。私達もレイ義母様に、お義母様方にお会いできてうれしいです」

「ディーネがな、今日二人に会ったことを自慢してきてな。ちょっとうらやましくなったんだ。家族が出来たそうじゃないか」

「そうなんです。みんな私達を支えてくれて」

「で、子供は?」

「……全員女性ですけど」

「……そ、そうか。まあいい。飲むか」

「レイ義母様って、もう」

「久しぶりにお会いしたんだし、飲みましょうか」


 恵理子も同意する。


「ほら、アクアも固まってないで、飲むよ」

「は、はい」


 五人の笑い声は朝まで続いた。一人はレイにもドライアにも追加の祝福を受け、その喜びからどこか違う世界へ行っていたが。




 朝方、レイ達が帰った後、


「「ハイヒール!」」


 優香と恵理子が体からアルコールを抜く。


「便利よねー、治癒魔法って」

「ほんとね。あの世界にもあったら千里ちゃん使ったわよね」

「こっちでも使っているかもよ」


 あはははは。

 そう笑っていると、


「優香様、恵理子様!」


 突然、アクアが土下座をする。


「アクア?」

「あの、お二方について行きます。これから先。お願いします。おそばにおいてください」

「えっと、どうしたの?」

「大精霊様方と一緒にお食事をさせていただけただけで、私は、私は!」

「お酒を飲んだだけだよね」

「それに、お二人はその大精霊様方のご息女で、あのように親しく」

「ねえアクア、レイ義母様達のことをそんなに思っているなら、レイ義母様達について行けばよかったんじゃない?」

「何をおっしゃいますか。当然のことながら、お二人をお慕い申し上げております。何より、お二人のことをまかされました。それが私の使命です。私はお二人について行きます。ついて行きたいのです」


 ビシッ!


 恵理子がアクアのおでこにチョップをくらわせる。

 アクアが目を丸くする。精霊を殴るとは、いや、殴れるとは。


「アクア。アクアが私達と一緒にいることを私達は受け入れた。つまり、あなたは私達の家族なの。そんなにへりくだる必要はない。って言うか、ちゃんと対等に接しなさい。自分の好きなことをしなさい。自分の意見を言いなさい。自己主張はちゃんとすること。みんながみんなのために動き、みんなを助ける。それが当たり前。だから頭も下げない。全部お互いさま。わかった?」

「はい。恵理子様」

「ん、もう。リーシャ、いるんでしょ」

「はい」


 ドアからリーシャが入って来る。


「リーシャ、アクアにも団服を」

「えっと、精霊も服を着るんです?」

「?」

「光になった時、服、一緒に消えますよね。あれ、実体あります?」

「消せるだけです。ドラゴン族もそうですよね。大きくなった時に服、破けませんよね。もらいます。着ます。欲しいです」

「わかった。じゃあ、後でキザクラ商会に行こう」


 リーシャが納得して、アクアをキザクラ商会に誘う。


「あ、ついでに冒険者ギルドで冒険者登録もお願いね」

「はーい」


 リーシャは部屋を出て行った。


「あの、お付きがあんな軽くていいのです?」

「お付きじゃないわ。か、ぞ、く。早く慣れなさい」

「はーい」


 アクアはわざとリーシャの真似をして返事をしてみる。


「あははは、それ、リーシャの真似? いいけどさ、面白いけどさ、アクアはアクアでいいんだよ」


 優香が笑う。


「そうよ。ま、一番砕けてるのがリーシャだから、リーシャの真似から入ってもいいのかもね」


 恵理子も笑う。

 それを見て、アクアはうれしくなった。




 昼過ぎ、エヴァが宿にやってきた。


「タカヒロ様、マオ様、教えてほしいこととお願いがあります」

「「……」」

「皆さんは、しばらくこの街に滞在されますよね」

「えっと、しばらくいてもいいって辺境伯が言ってくれたけど、そんなに長くはいないわよ。私達は目的があって旅をしているんだから。立て続けにいろんなことがあったから、ちょっと休みたいだけ」

「そ、そうなんですか」


 エヴァがしょんぼりとする。


「で、教えてほしいことって?」

「私、病気でした。それを教会の神父さんや司祭さんにお願いして診てもらっていましたが、治りませんでした。なのに、マオ様は簡単に治してしまいました。なぜできたのですか?」


 恵理子は、答えていいものかどうか悩むが、伝えることにする。


「エヴァ、あなたの魔力量が多いからよ」


 決して、神父や司祭に病気や免疫等の生理学的な知識がないとは言わない。


「え?」

「あなたの魔力量が、その神父や司祭より多く、私より少ない。病気とか怪我を治すような体内に関することは、相手の魔力量より多くないと発動しないわ」

「そ、そうなんですか? 知りませんでした。それでは、私は魔導士としての才能が有りそうということですか?」

「えっと、エヴァは今学校は?」

「実際には、王立学園の六年次ですが、病気のせいでしばらく通っていません」

「でも、学校で魔法の使い方を教えてもらったでしょ?」

「はい。私、あまり成績は良くなかったんです」

「魔力量の測定って学校でされなかった?」

「こんな地方の領の学校って、貴族の生徒は私と騎士の子供くらいなんです。だから、計っていません。学校の先生も貴族の子供にそんなことをするのは失礼だと思っているようで」

「へー。そうなんだ」

「ということは、私は魔力量が多いのに、魔法が下手だってことですか? それはどういうことですか?」

「ごめんなさい。私達は魔法の先生じゃないから、教えられないわ。いろんな人に教わると、結局中途半端になると思うし」

「そうですか」

「で、お願いって言うのは?」


 エヴァは、しょぼんとして言う。


「私に治癒魔法を教えてほしかったんです。治癒魔法を使えるようになって、病気の人とか、怪我をした人を治してあげたいと思ったんです」


 また、難しいことを。と、恵理子は思う。


「あのね、治癒魔法を教えるのって難しいの。何が難しいかわかる?」

「いえ、わからないです」

「治癒魔法の実習をするためには、病気の人とか、怪我をした人を用意しないといけないの。そんなことできる?」

「……」


 わざと病人や怪我人を作ることなんてできない。優香と恵理子は、治癒魔法の試験のために、腕を切られたことがある。


「だからね、治癒魔法を実践したりして教えてあげることが出来ないのよ」


 エヴァはあからさまにがっかりする。


「魔法の才能がないとは思えないわ。教会に仕えて神父さん達に教えてもらったらどうかしら?」


 エヴァはうつむいたまま肩にかけていたポシェットからナイフを取り出し、自分の左腕を切った。


「この、この傷を治すにはどうしたらいいんですか?」

「ヒール!」


 恵理子が慌てて傷口を抑えて治癒魔法をかける。

 そして、


 バチン!


 エヴァのほほを平手打ちした。


「あなたのように、自分を傷つける人に、絶対に教えない!」


 恵理子が怒鳴る。


「う、うわーん」


 エヴァが泣き崩れた。


「アリーゼ、ナディアいる?」

「「はい」」


 アリーゼとナディアが部屋に入って来る。


「エヴァを屋敷まで送ってあげて」


 恵理子がアリーゼ達に命じる。

 アリーゼは思う。泣かせておいて連れて帰れか。フォローしろってことかな。と。


「エヴァ様、立ってください。帰りますよ」


 アリーゼとナディアがエヴァの両脇を抱える。


「グスッ、グスッ」


 エヴァは泣きながら部屋を出て行った。


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