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ブリジットがボケた×3(優香と恵理子)

「おーい、精霊様! 卵を六つ持ってきました」


 ザザー


 湖から精霊が出てくる。


 リピーが優香と恵理子の前に立とうと移動するが、それを優香が手で止める。


「六つ? 後の二つはどうした。今すぐ残りの二発を食らうか?」

「いえ、今、他の家族が探しています。そのうち持ってくるかと」

「そうか。では、まずはその卵をもらおう」


 精霊がそういうと、アリーゼの持っていた卵が宙に浮きあがり、精霊の下へと飛んでいく。


「精霊様、その卵、どうされるのですか?」

「返したくとも親はすでにいない。私が代わりにふ化させる」

「そうでしたか。申し訳ありません」


 精霊は無言を返し、卵と共に湖の中へ消えた。


「ふう。それじゃ、ナディアを待とうか。リピーもありがとね」


 優香は砂浜に腰を下ろした。




 昼も過ぎ、ネフェリが上空を旋回し、降下してくる。


 ズササササ―


 ドラゴン形態のまま降下したネフェリの足からナディアと少女を抱えたブリジットが降りる。商人の二人は、ロープで巻かれたまま放り出される。


「ブリジット、ナディア、ありがとう。卵は見つかったの?」

「一つだけです」


 ナディアが優香に卵を渡す。


「一つだけか。最後の一つはもうなかったんだね」

「申し訳ありません」

「ナディアが謝ることじゃないよ。仕方ないさ。で、その一個は割れちゃったの?」

「いえ、こいつが食いました」


 ブリジットが少女を優香の前に押し出してくる。


「ゴホ、ゴホッ、申し訳ありません。ご事情も知らず、いただいてしまいました」

「んー、まあ、仕方ないか。これは精霊様に謝るしかないね」

「精霊様?」

「そう。ま、見ててね」


 そういうと、優香は湖に向かい、


「精霊様!」


 と呼びかける。


「残りの二つを持ってきたのか?」

「はい。一つは、ここに」

「では、もう一つは?」

「ふ化しました」


 ブリジットが優香が答える前に答え、少女を精霊に向かって押し出す。

 ブリジットがぼけた、ブリジットがぼけた、ブリジットがぼけた。優香も恵理子もナディアですらそう思った。


 精霊は、右手を前に出し、プルプルと震えながら、


「卵から人間が? 卵から人間が?」


 とつぶやいたかと思うと、


「そんなわけあるかー!」


 と、その右手からアイスランスをブリジットに向かって撃ちこんだ。

 ブリジットは、すっとそれをよける。

 そして、ブリジットは答える。


「では、この娘から明日の朝には出ます」


 ブリジットがぼけた、ブリジットがぼけた、ブリジットがぼけた。優香も恵理子もナディアですら再びそう思った。


 大精霊が顔を怒りの感情で染め、


「貴様! 私を馬鹿にしているのか? 私は高位精霊だぞ! 最後の一撃、貴様が食らうがいい!」


 そういった瞬間、


「待て!」


 ネフェリが大精霊に向かって言う。


「我らはドラゴン族ぞ。我が家族を傷つけたのなら、この森、貴様が眷属と言っている鳥ども、すべてまとめて灰にしてやろう」


 リピーもドラゴン形態になる。


「たとえ、貴様が高位精霊だとし、我らに魔法を撃ちこもうとも、死ぬ前にすべてを焼き尽くして見せる」

「な……」


 精霊が固まる。しかし、


「ならば、貴様の家族でなければいいのだろう?」


 ザシュッ!


 卵を食べてしまった少女にアイスランスが突き刺さった。


「グハッ!


 少女が大量の血を吐き出し、倒れる。


「マオ!」


 優香がそう言って少女に駆け寄り、アイスランスを引き抜く。大量の血が噴き出る。


「メガヒール!」


 恵理子が少女に治癒魔法をかけた。

 恵理子は、小声で少女に「ごめんね、巻き込んで」とささやくが、少女は気を失っており返事はない。

 優香は、精霊に顔を向ける。しかし、精霊はネフェリと向き合っている。緊張感が増していく。まさに一発触発の雰囲気だ。

 優香は覚悟を決めようとする。卵を回収できなかった分のバツはすでに受けた。少女がだが。そうなれば、もうこれ以上引く理由はない。

 相手は高位精霊だが。ゼロ距離の魔法を撃ちこんで来るが。

 確か、精霊に対するときは、高密度の魔力をまとうことと、母様達から教わったことを思い出す。こぶしに魔力を集め、そして、足に力を入れる。


 だが、その瞬間。


「双方引け!」


 と、空から声がかかる。


「「え?」」


 優香と恵理子が声の主を見上げて声を上げてしまう。ディーネがそこにいた。だが、ディーネのその厳かな雰囲気に、優香も恵理子もそれ以上声を上げることが出来ない。

 ネフェリと向き合っていた高位精霊も同じだ。上空を見上げる。突然現れた精霊、実体化していることから最低でも高位精霊。それが声をかけてきた。


 ディーネは高位精霊に向かって声をかける。


「お前の名は?」

「……ありません」

「高位精霊なのに名がないのか?」

「はい」

「もしかして、祝福を受けておらんのか?」

「はい。その通りでございます」


 精霊がうなだれて頭を下げる。高位精霊として、名が無いことは恥ずべきことなのだろうか。


「まあ良い。今回の件は、眷属を殺され、卵を持ち去られたお前の気持ちもわかる。そちらの人間も人を、家族を守りたかったのだろう。それに、その人間達は、お前のバツをすべて受けたのだろう?」


 ディーネはすべてを見たかのように話を進める。


「それにだ。そもそも、卵を盗んだのは、そこの商人の二人であろう」


 自分達に目が向かないと安心していた商人の少年と少女が目を見開いて冷や汗を流す。


「ならば、その人間達とこれ以上諍いを起こすことはないのではないか?」

「……は、はい」


 高位精霊は、不満を顔に表しつつも了承の意を示す。


「ならば幕を引け。さすれば、私がお前を祝福してやる。さらには、名をつけてやろう」


 精霊は、目を見開き、ディーネを見上げる。


「不服か?」

「滅相もございません。仰せの通りにいたします。是非、祝福を」


 高位精霊がそういうと、ディーネが高位精霊の目の前に降りてくる。


「こうべをたれよ」


 高位精霊が胸の前で指を組み、頭を下げる。


「我が名はディーネ。大精霊ディーネの名において、そなたを祝福する。これからは、アクアと名乗るがよい」


 ディーネが高位精霊の頭に手をかざすと、高位精霊が明るく光った。


「ありがとうございます。ディーネ様」


 ディーネは再び空中に浮かび上がる。そして、優香達に向き、告げる。


「人間達に告げる。特にそこの商人の二人」

「「は、はい」」


 商人の二人がなんとか返事をする。


「この地のゴクラクチョウに二度と手を出すな。その卵は決して万病に効くものではない。いいな、そのことを広く伝えよ」

「「ははー。承知いたしました」」

「ではな」


 と言って、ディーネは消えた。


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