ご褒美ですか? 私達まだ十四ですが、未成年ですが、ご褒美ですか?(優香と恵理子)
「お待たせ。それで、助けてあげた人達は?」
「キリルの方へ向かって走って行きました」
「そっか。無事ならよかったわ。で、これが魔物?」
優香と恵理子は魔物の山を見る。
「きれいな羽ね」
「そうだね。これ、売れるの?」
「わからなくてどうしたらいいかと思っていました。いらないなら燃やしてしまおうかと」
アリーゼとナディアが困った顔をする。
「食べられるのかしら」
「お言葉ですが、食料はまだ十分ありますし、何より、カラフルな生き物って食欲がわかないんですが」
ミリーが丁寧に断る。
「孤高の野良猫なら食べるんじゃないか?」
ブリジットがリーシャに勧める。
「ええ、食べませんとも。私だけゲテモノ出すのやめてください」
「だってさ。アリーゼ、魔法少女隊で燃やしちゃってくれる?」
「……なんですか、魔法少女隊って」
アリーゼが怪訝な顔をする。
「さっきヴェルダが言っていたよ。魔法少女隊って。呼びやすくていいかも」
「もういいです。燃やします」
「「「「ファイアボール」」」」
アリーゼ、ナディア、マロリーとルーリーの魔法少女隊の四人は、山に積まれた魔物を焼却した。
「ヨーゼフ達もご苦労様」
優香と恵理子は二頭のケルベロスをわしゃわしゃしてほめてやる。
「それじゃ、キリルに向かって進みましょうか」
優香の掛け声でクサナギ一行は再び移動を開始した。
一日後、キリルの街に到着した。城門までシンベロス馬車を進め、門兵に入っていいかを一応聞いたうえで、街に入る。
始めにするのは、馬車を止めて置ける宿探し。基本、一番大きな宿に行くしかない。
宿にチェックインして、優香達は冒険者ギルドへ、ミリー達は買い出しへと出かける。
冒険者ギルドでのやることも変わらない。旅をしていることを伝え、貼り紙を貼らせてもらう。依頼は受けない。
なので、冒険者ギルドでやることは、案外少ない。が、ふと、優香が立ち止まって受付嬢に聞いた。
「ちょっと前に、カラフルな鳥のような魔物を討伐したんだけど、あれって、売れました?」
その質問に、受付嬢は、無言を返す。というか、固まって動かない。
「えっと、お姉さん?」
固まっている受付嬢の肩を、カウンター越しにゆさゆさすると、回復した受付嬢が、挙動不審な様子で問いかけてくる。
「あの、なんて言いました? カラフルな鳥と、聞こえましたが、聞き間違いですよね」
「いえ、間違っていません。カラフルな鳥を討伐したんですけどと」
「……カラスのようでフルーツ好きな鳥をそう略しているんですよね。最近の若い人の略し方って難しいですね、そんな鳥、知りませんけど」
「いや、いろんな色の羽で、色がカラフルな……」
「あーあーあー」
受付嬢が遮る。
「えっと、一体どうしたんですか?」
と、優香が受付嬢に聞くと、受付嬢は涙目になる。
「その鳥、どうしたんですか?」
「えっと、邪魔だったから燃やしたけど」
ガタガタガタ……
ギルド中で、椅子を引く音が響く。
「えっと、本当にどうしたんですか?」
と、優香がカウンターにのめり気味に聞くと、受付嬢はあきらめたようにため息を一つついて、説明を始めた。
「魔物か鳥かよくわかっていませんが、その鳥は、北西にある森の中の湖近辺にしか生息していない固有種なんですが、ここでは、ゴクラクチョウと呼ばれています。その鳥、死者を黄泉へと連れて行くという噂からゴクラクチョウという名前になったらしいんですが……その鳥を殺した人も連れて行くらしいんです」
「え、殺した人?」
「はい。この中に殺した人、いますか?」
優香は、ぐるりと見渡し、真帆少女隊がいないことを確認した。
「いない」
あからさまに、ほっとする受付嬢とギルド職員。
「では、その人はどこに?」
「街で買い物をしていると思うけど。それ本当の話?」
「その話が出てから、ゴクラクチョウを殺すなんて人はいなかったので、今となっては正しいのかどうかわかりません。ですが、近いうちにわかるかと」
「うーん。連れてきていい?」
ガタガタガタ……
「ごめんなさい、ごめんなさい。私が悪かったです。お願いですから連れてこないで」
どうにもならなさそうな雰囲気に、優香達はギルドを後にして、宿に戻る。
その帰り道、
「私、食べなくてよかったー」
リーシャがあからさまにほっとする。
「食べて成仏させた方がよかったんじゃないのか?」
「にゃにお? それで呪われちゃったらどうするんだ?」
フー、シャー、と、リーシャがブリジットを威嚇する。
「はいはい、二人ともじゃれ合うのはその辺にして」
恵理子が二人の間に割って入る。
「そんなオカルトがあるとは思えないんだけどね」
優香はつぶやく。
宿に戻って、優香と恵理子はヴェルダとメリッサ、そして魔法少女隊の四人を部屋で待つ。
「ヴェルダです」
「メリッサです。魔法少女隊を連れてきました」
「入って」
優香が声かけると、六人が入ってきた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど。昨日、あのカラフルな魔物を倒したと思うんだけど、倒したのは誰?」
「はい。アリーゼとナディアが魔法で倒しました」
ヴェルダが答える。
「じゃあ、ヴェルダもメリッサも手を出さなかったのね」
「はい。空を飛ぶ魔物には魔法かと思い、二人に魔法で倒してもらいました」
「それから、マロリーとルーリーは倒しに行っていないけど、死体は燃やしたわよね」
「「はい」」
「うーん」
優香が腕を組んで天井を見上げる。
「どうなさったのですか?」
「ちょっとわからないことがあってね」
「そうなの。まあ、直接倒したのは、アリーゼとナディアね。じゃあ、二人を残して、ヴェルダ達は下がっていいわ」
「はい。かしこまりました」
ヴェルダ達はアリーゼとナディアを残して部屋から出て行った。
「アリーゼ、ナディア、脱ぎなさい」
「「え?」」
二人が顔を赤らめる。
「ご褒美ですか? 私達まだ十四ですが、未成年ですが、ご褒美ですか?」
「違います!」
恵理子が顔を赤くした二人をたしなめる。
とはいえ、二人は、いそいそと団服、そして、メイド服を脱ぐ。
そして、下着に手をかけようとして、
「それはいいわ。ベッドに横になってくれる?」
「あの、初めてなんです。恥ずかしいんですが、優香様なら」
「恵理子様なら」
「「違います!」」
アリーゼとナディアは二人並んでベッドに横になる。
優香と恵理子は、その体に異変はないかと、チェックをする。
「優香様と恵理子様にきれいにしていただいた体です。存分にご覧ください」
「ちょっと貧相で申し訳ありません」
「……」
「ちょっと静かにしててくれる?」
「はい、恵理子様」
「うつぶせになって」
恵理子が二人に言う。
二人はいそいそとうつぶせになる。
優香と恵理子は二人の全身を確認するが、あざなどの異常はどこにもない。
「仰向けになっていいわよ」
二人を仰向けにする。
そして、優香がアリーゼの右手を、恵理子がナディアの左手を取る。
ピクン、二人が反応する。
「ちょっと目をつむっていて」
二人が目をつむると、優香と恵理子は、無詠唱でスキャンを行う。
しかし、やはりどこにも異常は見つけられない。
「二人とも、服を着ていいわよ」
「「え?」」
「あの、私達の期待と覚悟はいったい……」
「いいから着なさい」
「「はい」」
二人は、いそいそとメイド服と団服を着た。
「二人とも、体に異変を感じたら、どんな小さなことでもいいから教えて。お願い」
「「はい」」
「それじゃ、下がっていいわ」
「「はい」」
アリーゼとナディアは部屋を出て行った。




