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突入、子爵邸(優香と恵理子)

「こんにちは、メイドクリーニングサービスです」


 恵理子は、目を丸くして固まっている子爵邸の門番にもう一度告げる。


「は? メイドの掃除なんて頼んでないぞ? それになんだその仮面は。怪しさ満点じゃないか」

「おかしいですね、子爵様より、直々に掃除をと頼まれたんですが」

「おい、誰か聞いているか?」


 門番は詰所にいる他の兵士に聞くが、誰も知らない。


「それじゃ、無理やり入らせてもらいますね?」

「ダメに決まって……」


 ガコン!


 門兵が恵理子のお玉で吹っ飛ばされる。


「な、出合え、出合え!」


 詰所の兵士達が叫ぶ。

 恵理子達が門を突破して庭に入ると、兵士が、騎士が集まって来た。


「貴様らは何者だ!」


 騎士の一人が叫ぶ。


「えっと、名乗るときは自分からって習わなかった?」


 恵理子が騎士にそう言うが、騎士は名乗るつもりはない。


「無許可で飛び込んでくる者に名乗る必要などない。皆、こいつらを捕らえろ! 手足の一本二本切ってもいい、不法侵入だ」


 むしろ、騎士達、兵士達に恵理子達を切れと命令を出した。


「それじゃ、みんな、やるよ」


 これに恵理子も応えてメンバーに声をかける。


「「「「オー」」」」


 十四人のメイドがお玉を振り上げる。

 対して、騎士、兵士、衛士までもが次から次へと集まってくる。

 恵理子は、切りかかってくる騎士達の剣を右手のお玉でひっかけて逸らし、左のお玉を顔面に叩き込む。

 リーシャ達も、お玉を振り回して、騎士や兵士たちを倒していく。


「意外とお玉って使い勝手いいのよね。ただ、軽いのが欠点かしら。一撃ではなかなか倒せないのよね」


 リーシャが言うように、お玉は軽いので、手足を狙った攻撃はほぼほぼフェイント。本命はどうしても顔になる。お玉の攻撃は。

 リーシャはその機敏性を活かし、体を使って回転し、遠心力を乗せた攻撃を騎士の顔面に叩き込む。顔狙いを察されて、腕で防御される。しかし、そうなると、がら空きになった腹に蹴りを入れる。


「ふん、お玉だけだと思うな」


 ミリー達は、ミリー隊が右、オリティエ隊が左。お互いに背中を合わせて戦う。しかも、一体一にならないように、二人一組で。アリーゼ達魔導士隊も今は魔法封印だ。




 屋敷の正面側がそのようになっている反対側、裏口には、フードをかぶった仮面が五人。


「ネフェリとリピーは、手加減してね。気を失わせる程度で。ブリジットは、マティを守ること中心で」

「「「はい」」」


 優香は、裏口から建物に入り、廊下を走る。屋敷の中央付近に出ると階段がある。上へ上へと登る。三階にまで上がったところで、廊下でおびえていたメイドを捕まえる。


「ねえメイドさん、子爵はどこにいるかな?」


 メイドは、震えながら仮面の優香を見て、そして、廊下の奥を指さした。


「奥の方の部屋かな。連れてってくれるとありがたいんだけど」

「あ、あの」


 メイドは震えながら立とうとするが、立てない。腰が抜けているらしい。


「ま、仕方ない。あっちだね。ありがとう」


 優香は廊下を再び走る。

 そして、左右の部屋のドアをネフェリとリピーが開けていく。


「いない、いない、いない、と」


 そして、廊下の突き当りの部屋。


「いますように」


 と、ドアを蹴とばした。


「何事だ」


 子爵が声を上げる。


「何事だって、外があんな状況になっているのによく落ち着いているね」

「そりゃな、我が領は何に対して騎士団を待機させていると思っている。獣人だ。この街には常に数百の獣人がいる。その獣人の対策として、我が領には五千もの騎士と兵士、衛士がいるのだ。あの程度のメイド、何でメイドかわからんが、いつまでもつか楽しみだな」

「へえ、自分の心配はしないの?」

「お前ら五人程度で何ができる」


 パンパンと、子爵は手をたたく。すると、部屋の奥から騎士が出てくる。それも、何人も。いや、二十人以上はいる。


「さてと、貴族に逆らったらどうなるか、理解してもらおうか。お前達。こいつらを捕まえて、牢にでも入れておけ」


 騎士達が剣を抜いて優香達に襲い掛かる。


「ちょっと多い。ネフェリ、リピー、お願い」

「「はい」」


 ネフェリとリピーが一歩前に出る。二人に切りかかった騎士に対し、ネフェリもリピーも素早く一歩踏み込んで、騎士の腹にこぶしを入れる。


「「グフッ!」」


 騎士の体がくの字に折れ曲がり、口から胃の中に入っていたあらゆるものを吐き出している。

 ネフェリとリピーは、直線的に移動しながらこぶしを足をふるい、騎士達を壁にぶつけていく。壁にぶつけられた騎士達はというと、そのまま沈黙してしまう。


「き、貴様らは何者だ!」


 一人残った子爵が剣をかまえる。

 すると、マティが一歩出て、フードをとり、仮面を外す。


「な、ま、マティルダ王女殿下?」


 子爵は目を見開く。


「確か、確か死んだと、いや、亡くなられたと聞いておりましたが」

「見ての通り生きている。フィッシャーよ。お前、一体何をした? 獣人に対して、何をしたのだ?」

「何をおっしゃいますか、何もしておりません。我が領は、獣人との貿易の窓口。双方にメリットがあるように、また、獣人には来てもらいやすいように、心がけております」

「ほう、今日、猫人族の娘が一人、行方不明になったと聞いて来たのだが、知らぬのか?」

「なんのことやら、わかりませぬ。殿下は、その情報を聞いてなぜ我が屋敷に?」

「しらばっくれるのか? 猫人族はどこだ?」


 子爵は、剣から手を離し、一歩、マティへと近づく。


「王女殿下、私をお疑いになられておられるのですか?」


 もう一歩近づく。そして、


「マティルダ王女殿下は死んだはず。この偽物めが!」


 と、マティに向かって飛びかかり、剣を抜いてマティの首を突き刺そうとした。だが、その瞬間。


「ヒール!」


 バシュ!


 優香が剣を振ると、子爵の手が剣と共に手首から飛び、そして、切り口が治癒魔法により止血される。


「グワッ、な、何が!」


 子爵は右手がなくなった手首を左手で抑える。


「貴様ら!」


 子爵がそう叫んだ瞬間、ブリジットが子爵の腹にこぶしを撃ちこんだ。


「グッ」


 と、子爵は腹を抑えて膝をつく。


「さあ、案内してもらおうか」


 ブリジットが子爵の襟首を捕まえて立たせる。


「その前に、よくもマティに怖い思いをさせたな」


 ドゴッ!


 ブリジットは、襟首をつかんだまま足を払い、そして、そのまま顔面を床にたたきつけた。


「グハッ!」


「ほら立て」

「わかった……」


 子爵は、自ら歩き始める。

 廊下を歩き、そして階段を一階まで降り、裏口から出る。そして、裏庭にあった小屋に入ると、そこから地下へと降りていく。


 ひんやりとして湿り気の多い空気の中を歩いて行くと、牢屋があった。


 その中には、猫人族が一人、倒れていた。幸いにも首輪はまだついていない。


「ネフェリ、お願い」


 優香がそういうと、ネフェリは牢屋の鉄柵を握り、左右に開いてしまう。そして、中に入って、猫人族を担いで出てくる。


「さあ子爵、行こうか」


 と言って、優香は、牢屋のある地下を後にするべく、振り向いた。

 子爵は変わらずブリジットに襟首をつかまれている。

 地上に出ると、


「リピー、合図を」

「はい」


 リピーは、屋敷に向け、口を開いた。


 ドッゴーーーン!


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