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自爆装置は男のロマン~仲間を探しに再出発!(優香と恵理子)

「ヴェルダ、メリッサ、それからリピー、ありがとう。大変だったでしょう」

「優香様、恵理子様、お待たせしました。ちなみに大変だったか、というと、この馬車の機能がすごすぎて、野営なども快適でした」

「「機能……」」


 優香と恵理子が顔を見合わせる。この馬車、パパの趣味かな、と。

 他のメンバーは、目をキラキラさせて馬車の周りをくるくる回っている。中には、すでに馬車の中に入り込んでいるメンバーもいる。


「えっと、ヴェルダにメリッサ、このば、しゃの使い方とかって聞いてる?」


 馬車と言っていいか悩みつつも、優香が聞く。


「はい。キザクラ商会の方から、聞いています。というか、それぞれの機能を備えたところに使い方の説明文を貼ってくれました」

「そう……」


 恵理子があきらめたような表情をする。


「優香様に恵理子様、最重要の伝言があります」

「「何?」」

「はい。この馬車の御者台にあるこの備え付きの箱を見てください。この箱を空けると金属のプレートがあります。キザクラ商会の方に聞いたところ、これは自爆装置で、もし、人に奪われそうになったらこのプレートに魔力を流して馬車を破壊しろ、とのことです」

「自爆装置……」

「パパの考えそうな……男のロマンとか言って……」

「でも、よくこんな大きな馬車が馬四頭で引けたね。どう見ても十メートルくらいあるけど」

「はい、それがですね。御者台に乗ってみてください」


 と、ヴェルダは優香達を御者台へと誘導する。


「この御者台のここにレバーがありまして、一、二、三、と書かれたところにレバーを動かすと、馬達をアシストしてくれるみたいなんです。どうしてそうなるのかわかりませんが、レバーを操作すると、馬車の下から甲高い音が聞こえるんですよね」

「「……」」


 優香と恵理子は顔を見合わせ、絶対EVだ。と頷きあう。そんなものをくれたのか、そんなものがこの世界にあったのか、そりゃ、奪われる前に自爆させろって言うわ。と。


「それで、中も見ていただけますか?」


 ヴェルダは優香と恵理子を馬車の中に連れて行く。


「こっちの馬車が寝室になっていまして、ベッドが二十台設置してあります」


 優香達が覗くと、中にリーシャがベッドに倒れているのが見えた。


「リーシャ、どうしたの?」

「あ、優香様、えっと、この銀色プレートに触ったら力が抜けて……」

「「あー」」


 優香と恵理子は理解する。魔力充電装置だと。


「リーシャ、寝る前に触ることって書いてあるじゃん」

「ごめんなさい。触りたくなっちゃって……」

「ま、いいわ。今日はゆっくり休んで」


 恵理子がリーシャに声をかけるが、リーシャは何とか起き上がり、抱きかかえているものを恵理子に見せる。


「見てください。着ぐるみです。着ぐるみが用意してありました。キザクラ商会の方、わかっています。寝るときにはやっぱり着ぐるみです」


 と、そこまで言ってリーシャは倒れこんだ。


「リーシャ、着替えてから寝なよ」


 優香が声をかけると、リーシャは手をフリフリして答えた。




 一台目の馬車を降りて二台目にいく。


「こっちの馬車には水回りとキッチンがあります。すごいんです!」


 と、ヴェルダもメリッサも興奮気味だ。


「馬車に水もお湯も出る装置がついていることに驚きましたが、なんと、お風呂にトイレまでついているんです。しかも、トイレは優香様達が育ったお屋敷同様に、水は流れるし、排泄物を浄化してくれるんです。においもなくなります。こんな快適なトイレがついた馬車、今まで見たことがありません!」


 優香も恵理子も、確かにこの世界のトイレには不満があった。屋敷には付いていた水洗トイレがなぜ外の世界ではないのかと。


「これは、奪われそうになったら爆破しないといけないわね」

「そうね。家族以外には見せられないわ」

「ライラ母様、何でこの世界に場違いなものを。ありがたいけど」

「ありがたいのよね、確かにね」

「優香様、恵理子様、キザクラ商会からもう一つ伝言が」


 ヴェルダとメリッサが優香と恵理子にキザクラ商会からの伝言を伝える。


「何かしら」

「馬とこれまで使っていた馬車が不要になったのなら、どこかの街のキザクラ商会に渡すようにと」

「そうよね。この馬車があったら、これまでの馬車はいらないわよね。馬もタロとジロがいればいらないしね」

「じゃあ、フィッシャーの街で預けちゃう?」

「そうね。そうしましょう。入れたらだけど」




 優香と恵理子は馬車から降り、そして、皆を集める。倒れているリーシャ以外の十六名を。


「みんな。マティが家族になって、馬車も新しくなった。私達の都合で申し訳ないんだけど、これから人探しの旅に改めて出発しようと思う」

「みんな、私達について来てくれる? 私達を助けてくれる?」

「「「「おー!」」」」


 クサナギ一家の旅が改めて始まった。


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