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六人の勇者、六つの秘石。ああ、右目がうずく(優香と恵理子)

 リーシャがシンベロスと対決すると、立候補する。


「はぁ、仕方ない。私もやります」


 ブリジットが手を上げる。




 シンベロスAとリーシャ、シンベロスBとブリジットとの戦いが始まる。


 リーシャは、シンベロスに対して大鎌をかまえる。


「へー、大鎌ね」


 と、しんじゅが感心する。大鎌は使いづらいのだが、フランがいつもシンベロスに対して振り回しているので、シンベロスは苦手意識を持っている。


 リーシャはシンベロスに対して、反時計回りに回り込む。三つある首の左の首しか相手にしないという作戦だ。

 シンベロスの牙をはじき、左足の蹴りをはじいては、回り込む。正面に対峙してしまっては、突進された上、三つの首で攻撃されてしまう。

 リーシャは回る。とにかく回る。それに合わせてシンベロスも反時計回りに回る。

 が、突然シンベロスが時計回りに回った。それにより、シンベロスは後ろ足でリーシャに蹴りを叩き込む。


「お尻を見せたなー」


 リーシャはシンベロスの蹴りを飛び上がってよける。シンベロスにはリーシャが見えていない。そして、リーシャは、スパン、と、シンベロスの三本の尾を切ってしまった。


「「「キャウン」」」


 シンベロスは一鳴きしてリーシャの前に横になった。


「ふふふ、勝った」


 リーシャはシンベロスの腹をぐりぐりと撫でてやった。


「ほら、しっぽ治すよー」


 と、しんじゅがヒールをかけると、シンベロスに三本の尾が復活した。



 ブリジット対シンベロスBの戦いは、あっという間に終わった。

 ブリジットは鞭を取り出し、左の首に鞭を巻き付け、それを利用してシンベロスの背に乗ってしまう。後は、その鞭を締め上げるだけだった。

 あっという間にシンベロスはブリジットに腹を見せることになった。


「あの娘も、強いのね」


 ライラは感心する。



 リーシャは、シンベロスの腹をなでながら、語りかける。


「今日から君らは私達の家族だ。家族を傷つけることは絶対に許さない。いいね」

「ばふっ」

「よーし、いい子いい子」



「ライラ母様、しんじゅ姉様、この二匹、預かってもいいのですか?」


 優香と恵理子がライラに聞く。


「今、その子が言った通り、あなた達の家族になったのよ。名前を付けて連れて行きなさい」

「「ありがとうございます!」」

「名前どうする?」


 恵理子が優香に尋ねる。


「どうしたらいい? 全然思いつかないんだけど」

「今思いついているのは?」

「タロとジロ」

「「ばふ」」

「あ、返事しちゃった?」

「タロ!」

「ばふ」

「ジロ!」

「ばふ」

「気に入ったみたいね」

「よかった」




 一通り騒動が収まったところで、優香と恵理子は旅に戻ることにする。


「おりひめ母様、こはる母様、ソフィリア母様、ライラ母様にしんじゅ姉様、いろいろとありがとうございました」


 優香がお礼を言う。だが、それだけでは終わらない。終わらせられない。せっかくの機会なのだ。


「二つ、聞いていいですか?」


 恵理子がおりひめ達に問いかける。


「「「「「え?」」」」」


 恵理子の突然の要望に、驚きの声を上げる五名。


「一つ目、先ほど、この世界のドラゴン族は、と、おりひめ母様はおっしゃいましたが、お母様達はどこからどうやってここに来たのですか?」


 あからさまに挙動不審になる五名。ライラはおりひめの顔をチラ見して、


「こ、こはるが呼びに来たから、こはるにのっけてもらってきたのよ」


 と、取って付けたような答えを返す。こはるがソフィリア達を呼びに屋敷に言った後、すぐに戻って来た。どこかから飛んできたとは考えづらい。


「そ、そうだぞ。わらわ達は西のあっちの方からな。お前達が呼んでいるって聞いてな、びゅーんってな」


 ソフィリアは目が点になっている。こはる、なんていう言い訳をと。こはる達は飛んできて、私達は一瞬かと。


「どうやって連絡を?」

「あ、えっと、うん。アンヌが前日にな、お前達が屋敷に来たからってな」


 おりひめまでがしろどもどろに答える。


「へー。そうなんですか。昨日来た時のアンヌさん達もおかしかったんですよね」


 アンヌとサーナが視線を逸らす。


「それじゃ、お母様達は、この海の向こうに住んでいらっしゃるのですか?」

「いや、私達も旅をしている。旦那様が旅好きでな。だから、どこにいる、とは言えないんだ」


 おりひめが視線をそらしたまま答えた。


「ふうん。そうですか。ま、いいです。もう一つなんですけど、貴博・草薙、真央・石川、千里・佐々木、桃香・藤原の四名について知っていることを教えてほしいんですけど」


 さらにあからさまに視線をそらすおりひめ達。

 そこへ、我慢ならなくなった中二病こはる。


「六人の勇者が六つの秘石をもって、三大陸の中心に集った時、世界が荒れる。大地が裂け火が登り、空を焦がして闇を連れてくる。しかし、それは予期せぬ災いではなく必然。未来の希望につなげるための試練。その試練を乗り越えねば世界が終わる。六つの秘石を集めよ。六人の勇者よ早急に集え。しかし、その前に対策を取ることも重要。何が優先されるべきか、それは誰にも分らん」


 おりひめ、ソフィリア、ライラ、しんじゅの四人が目を点にして口を開けたまま固まる。また、訳の分からんことを、と。しかし、時間稼ぎのためにはナイスだとも。


「さらばだ」


 と、こはるは背を向けて屋敷へと走り去る。


「それでは私達も行く。よい旅をな」


 おりひめやソフィリア、ライラにしんじゅまでもが、余計なことを話さないようにと、そそくさと帰って行った。


 ぽかんとする優香と恵理子。

 しかし、胸に手を当て、真剣な表情で体を震わせる者が一人。


「秘石? 六つ集める? いったい、何が起こるんだ」


 ここには、秘石を持っている者が一名いる。リーシャだ。

 ちなみに、こはるはそれを知っていたわけではない。適当だ。

 何とか再起動した恵理子が口を開く。


「逃げられたわね」

「ああ。まったく適当なことを」


 優香がそれに答える。

 しかしながら、鵜呑みにする者も十三名ほど。リーシャとミリー達だ。


「「「勇者様!」」」


 優香と恵理子の前に膝をつく。


「あ、えっと、たぶん、違うと思う……」

「ご指示を! この世界を救ってください、勇者様!」

「そのためになら、我ら、どのようなことも成し遂げて見せましょう!」

「「「勇者様!」」」

「あれ、絶対に嘘だよ。だって、急ぐなら対策を取っていちゃダメじゃん。そもそも何に対する対策よ。言っていること、矛盾しているよ。それとも、実現しなくても世界が滅びないような対策を取っておくことが先ってこと? 本当にどんな対策よ。それに、世界が滅びそうなら、各国に連絡しなきゃダメじゃん。それにね、こんな中二病全開な話、どうやって国に持っていくの? 笑われるのが落ちじゃない。そんなの絶対いやだよ。この話は絶対にこはる母様の妄想だと思う」


 優香が声を上げ、うんうんとそれに恵理子が同意する。

 しかし、そんな二人のことをよそに、自身の世界に入り込んだままの者もいる。


「ま、まさか、秘石と私は一心同体? 私自身を犠牲に世界を救わねばならないのかー?」


 スパン!


 ブリジットがリーシャの頭をはたく。


「いいから、旅の準備をするよ。移動しながらでもできるでしょ、その妄想」


 頭を抑えながらリーシャは涙目で続ける。


「魔族、人間族、エルフ、ドワーフ、獣人族、ドラゴン族。この六つの種族が鍵なのよ! あぁ、私はきっと鍵なんだ。私の犠牲でこの世界が救われる。私は悲劇のヒロイン!」


 他にも種族はあるが、決めつけて疑わないリーシャ。


「はいはい。さあ、行こうね。病院にする?」


 ブリジットは、リーシャの襟首をつかんで引きずって行った。


「あぁ、右目がうずく……」

「なんでよ!」


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