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育った屋敷を目指して(優香と恵理子)

 西門を出て、ヘブンリー領へと続く街道を進む。かつて通った道を逆に進むことになる。




 何日も野営をし、そして、ヘブンリー公爵領、領都ヘブンリーにたどり着いた。


「ミリー、宿をお願い。馬車も預かってもらってね」


 恵理子がミリー達に指示を出していく。


「はい」

「リシェル達は、食糧の補充をお願い」

「はい」

「じゃあ、私達は冒険者ギルドへ向かいましょうか」


 優香と恵理子は、リーシャとブリジット、そして、ネフェリとリピーを連れて冒険者ギルドへと向かう。




「マウラさんいます?」


 冒険者ギルドに入り、優香が受付に向かって声をかける。


「あ、勇者様ご一行様じゃないですか」

「マウラさん、その言い方、やめてもらっていいです?」

「何でですか。勇者様で通るんだからすごいじゃないですか」

「特に何かをしたわけじゃないしさ。こっぱずかしいんだよ」


 優香は勇者呼びをやめてもらおうとお願いする。


「しょうがないですね。じゃあ、私は遠慮なくタカヒロ様、マオ様って呼ばせていただきますね」


 と、マウラはほほを染める。


「それが普通だと思うんだけど。様はいらないけど」

「で、本日は旅の途中で寄ってくださったのですか?」

「一つお願いがあるのと、グスタフさんいるかなって」

「えっと、兄……、グスタフさんは今、ギルマスと話をしていると思います。なので、お願いの方を先に聞きますね」

「うん。お願い。実は、この二人の冒険者登録をお願いしたくって」


 と、ネフェリとリピーを前に押し出す。


「えっと、新メンバーですか?」

「うん。だから、パーティメンバーとしての登録もお願い」

「わかりました。お二人は新規ですので、カッパーでよろしいで……」

「プラチナAでお願い」


 優香がマウラの提案を遮る。


「……え? なんて?」

「二人とも、僕より強いからプラチナAでお願いって」

「えっと、それはギルマス権限なんです。私じゃ何ともできないんですけど」

「じゃあ、ギルマスに話をしに行こう。ちょうどグスタフさんもいるんでしょ?」

「はあ。ちょっと聞いてきます」


 マウラは、席を外し、二階に上がっていく。

 すると、二階から顔を出すギルマスとグスタフ。


「よぉ、久しぶりだな、一年ぶりか?」


 と言うのはグスタフ。


「おう、ちょうどいい。上がってこい」


 ギルマスは優香達を二階へと呼ぶ。




「これはこれは勇者様、このようなギルマス部屋ですが、どうぞ」


 グスタフがくだけて言う。


「な、このようなってどういう意味だ。男らしいと言え」


 と、殺風景な執務室を誇るギルマス。


「えっと、まず、勇者ってのはやめてくださいね」

「ん? それで通るんだからいいじゃないか」


 優香のお願いに、ギルマスはマウラと同じことを言う。


「勇者って程のことをしていないんですよね、っていうか、基準がわからないんですけど」

「それっぽいことをしたってことでいいんじゃないのか?」

「別に悪を倒したわけじゃないですよ」

「倒したじゃないか。この街の小物だけど」

「確かに小物でしたけど」

「伯爵の息子を小物と言うな」


 ギルマスがこの終わらなそうな優香とグスタフのやり取りに終止符を打つ。


「で、俺に用事ってなんだ?」


 グスタフが聞いてくる。


「あ、いえ、この街に寄ったので、一応、お世話になったご挨拶を。プラチナランクのグスタフさんに手合わせをいただいたこと、いろんなところで使えましたし」

「はぁ。今のお前達にとっちゃ、何の自慢にもならんだろう? 今はプラチナAだったか?」

「おかげさまで」

「だからおかげさまじゃねえよ」

「で、俺には何の用だ」


 ギルマスが聞く。


「あ、新規加入メンバーのランクをプラチナAにしてほしくて」

「……今、ちょうどな、こいつをプラチナAに推薦するかどうするかって話をしていたんだ。こいつに勝ったらしてやってもいいぞ?」

「推薦と権限って?」

「推薦は、お偉いさんみんなで決める。権限はギルマスが勝手に決める。責任の所在が違うんだ。だから、権限の方は基本的に誰もやりたがらない。よっぽど人格まで見ないとな」

「じゃあ、この二人、プラチナAにして」

「グスタフ、戦えるか?」

「嫌です」

「何でだよ。プラチナAになろうとしているやつが、この程度のことを断るのか?」

「だって、その二人、絶対に強いです。はっきり言いますね。この二人、プラチナAの勇者の二人より強いですよ。ギルマスがやってくださいよ」

「あ、いいですね。ギルマスのいいところ、見てみたいです。というか、うちのギルドの宣伝になるかもしれません。是非にやってください」


 マウラまでがギルマスに戦うように提案する。


「えっと、知ってると思いますが、この二人、ドラゴン族です」


 恵理子が補足を入れる。


「……マウラ、もういい。プラチナAで登録しろ。ギルマス権限だ」

「わかりました。残念ですけど」

「あー、ギルマスの戦うところ見たかったな」


 恵理子もわざとらしく残念がる。


「うるさい。俺は経営畑なんだ」

「「……(絶対嘘だ)」」


 マウラは、プラチナAランクのカードを二枚用意し、ネフェリとリピーに渡した。


 六人は、ギルマスやグスタフ達にお礼を言って、ミリー達と合流する。そして、宿で一泊する。




 翌日、マイナン領へと向かう。ここで最後の買い出しをした後は、どこの町にも村にもよらずに森へと入る予定だ。


 再び何日もかけてマイナン領へとたどり着く。


 マイナン領では、馬車を預けてそこからは歩くことにしている。森の中は馬車では進めないし、馬を放置しておくわけにもいかない。食料、特に肉は現地調達だ。行きも二人はそうしてきた。




 マイナン領を後にし、森へ入ると、ヨーゼフとラッシーが積極的に魔物を狩ってくれる。よって、肉には困らなかった。しかしながら、相変わらずと言うか、野菜は野営地の周りで薬草などを採集することとなった。どうしても、肉だけ、と言うわけにはいかない。


 数日をかけて森を抜け、山脈の麓にまでたどり着く。


 そこからは、ワイバーンの巣がある、赤ドラゴン族のテリトリーとなっている。なるべく気配を消して登っていく。


 山頂に着くと、ミリー達が歓声を上げる。


「きれいです」

「森があんなに低く、でもあんなに広く。そしてその向こうには海でしょうか」


 反対側を見ても、歓声が上がる。


「広いです。広い大地がどこまでも続いて」


 そんな感動の中で、


「戻って来たのか」


 という突然の声。赤ドラゴン族のルビーだ。


「ルビー、また会ったな」


 ネフェリはルビーに話しかける。


「また、と言っても先に会ったのはついこの間のことだがな」

「そうだな。で、何をしているんだ?」

「ワイバーンの監視だ。ワイバーンが安心して暮らせるよう、騒がないよう、見ているんだ」

「そんな事態になりかねないのか?」

「なるかもしれんし、ならないかもしれない。わからなくても危機に備えるのは大事なことだ」

「まあ、わかるけどな」

「お前達は、かつて過ごした地に行くのだろう?」


 ルビーは優香と恵理子にも話しかける。それに優香が答える。


「ああ、そうだ」

「長くいるつもりか?」

「いや、すぐに戻るつもりだ」

「そうか。早く戻って行ってくれると助かる。ワイバーンが落ち着かなくなるんでな」

「わかった。じゃあ、みんな、行こうか」


 優香と恵理子は、皆を引き連れ、山脈を下りて行った。


(わ)「あけましておめでとうございます。いつも、本作「好き好き人生3」を読んでくださり、ありがとうございます」

(千)「今年は、私ももっと活躍したいと思っていますので、どうぞ、ご期待ください」

(桃)「あ、優香さんと恵理子さんのおせちが食べたい」

(千)「あ、そうだ。おいしかったもんね」

(桃)「黒豆、伊達巻……」

(千)「桃ちゃん、頑張ろう。二人に会えるまで」

(桃)「センセと真央ちゃんはいいんです?」

(千)「今は食い気よ」

(桃)「太らないように気をつけないとですね」

(千)(わ)「……」

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