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雨が降ってきたら傘をさせばいいけど、自ら雨をまき散らそうなんて思わない(優香と恵理子)

 翌日。


「あー、よく寝た」


 優香が大きく伸びをして体を起こす。


「はふ。そうね。よく寝たわね」


 恵理子も同じように体を起こす。


「おはようございます。ご主人様」


 目を覚ました二人に対してネフェリが挨拶し、リピーが頭を下げる。


「「……」」

「硬い、硬いから」


 恵理子がネフェリのその言葉遣いに苦言を呈する。


「えっと、どのように……」

「まずは敬語をやめて。リーシャを見てよ。敬語なんて使わないし、使っても全然敬意なんて感じさせないでしょ。あんな感じでいいのよ。家族なんだし」

「あのな、お前達はドラゴン族を従えるのだぞ? ドヤろうとは思わんのか?」


 ネフェリが言葉を砕けさせて聞く。それに対して恵理子が続けて答える。


「ドヤる? 面倒くさいわよ、そんなの。私達には目的がある。それに向かって行動する。だけどね、その過程は楽しくしたいじゃない。せっかく家族になったのに、家族が増えたのに、何でかしこまる必要があるの? それにね、外向きにだって何かしたいなんて思わないわ。雨が降ってきたら傘をさせばいいけど、自ら雨をまき散らそうなんて思わないわ」

「ふ、そうか」

「そうよ。それがつまらないとか、俺つえーってしたいなら、ここは違うわよ」

「あはははは、いやいや、あんなに簡単に敵国の皇帝をずぶ濡れにしておいて、雨は降らせてないと。お前達、面白いな」


 ネフェリが笑う。


「……比喩よ比喩。もう」


 恵理子が口をとがらせる。


「いや、おかげで我らは助かったわけだしな」

「だから、いくらサザンナイトが怒ったりしようが、私達から何かしようなんて思わないからね」

「承知した」

「優香様―、恵理子様―、朝食の時間ですよっと」


 猫耳メイドのリーシャが部屋に入ってくる。


「ネフェリもリピーもおつとめご苦労様。一緒にご飯食べよ」

「ああ」

「うん」


 ネフェリとリピーが返事をした。


「そ、れ、では、と。ブリジットー、用意はできてる?」

「持ってきたよ」

「それじゃ、私達が、優香様と恵理子様のお着替えを手伝わせていただきます」

「「「「え?」」」」


 ネフェリとリピーが、優香と恵理子が声を上げる。

 ネフェリとリピーは、勇者の着替えもお付きの仕事かと。優香と恵理子は思わず素に戻る。


「着替えくらい自分でできるわよ」

「そうよ。置いて行きなさいって」

「そんなこと言わないでいいですよ。湯浴みの準備もしますから。昨日、お風呂入っていませんよね。

「いやいやいや、それこそ自分でするわ」

「私も……」


 優香も恵理子もほほを染める。


「いいですから、私達がお手伝いしますよ。それから、ほらネフェリもリピーも、だまって立っていないで、着替えてきなさい。メイド服よ。最強なんだから。で、これいる?」


 リーシャは頭の猫耳を指さす。


「「……」」

「ミリー、ミリー」


 固まるネフェリとリピーをよそに、リーシャの呼びかけにミリーがやってくる。


「はい、なんでしょう」 

「この二人にメイド服を」

「はい。承知しましたー。ネフェリ様もリピー様も行きますよ」


 ネフェリとリピーはミリーに連れて行かれてしまう。


「どうしたのリーシャ、なんか頑張ってる?」


 優香がリーシャに問いかける。


「ライバルが二人増えましたからね、ふっふっふ」

「「なんのライバルよー」」

「さー、湯浴みの時間です。ブリジット、やるわよ!」

「承知!」

「「いやー!」」




 優香と恵理子は、四人の猫耳メイド、うち一名仮面、うち二名たんこぶ付き、を連れてマティの部屋へと入る。「ヒールかけてよー」というつぶやきは無視だ。


「マティ、私達王都に帰ろうと思うけど?」


 恵理子がマティはどうする? と、聞く。


「え? あなた達、私のお付きじゃない……ヒッ!」


 優香と恵理子をお付き呼ばわりされたことで、ネフェリとリピーが殺気を飛ばす。


「いやいや、友達じゃない。一緒に帰ってよ」

「マティはいつ帰れるの」

「明日? いやいや、今日の昼には帰れますとも」

「わかった。じゃあ、昼ご飯を食べてからってことでいい?」

「うん。がんばる」




「リーシャ、ブリジット、ミリー達に、昼に出られるようにって、伝えておいて」


 恵理子が二人に指示を出す。


「「承知」」


 リーシャとブリジットはミリー達の下へと歩いて行く。


「さて、時間が出来ちゃったけど」


 優香が恵理子に問いかける。


「そうね、どうする?」

「ネフェリにリピー、私達に稽古をつけてくれない?」


 優香がネフェリとリピーにお願いをする。


「え?」

「私達が?」

「うん。昔は義理の母だったこはる母様やおりひめ母様に鍛えてもらっていたんだけど、全然かなわなかったのよね」

「その二人はドラゴン族なのか?」

「うん。そうよ」

「人間がドラゴン族に挑むとは……逆か、ドラゴン族が人に稽古をつけるとは。あなた達はいったい……」

「そういえば、勇者って呼ばれていたけど」


 リピーが疑問を口に出す。


「あなた達のせいじゃない……」


 恵理子が細い目をする。


「実は、ミリー達が会った時から言い始めているんだけどね。そんなたいそうなものじゃないわ。っていうか、そんなつもりはさらさらないわ。ね、恵理子」

「そうよ。せっかく私達より強いあなた達が家族になってくれたんだから、こんなチャンスはないわ。よろしくね」




 優香達は砦の訓練場を借りる。

 優香はネフェリと、恵理子はリピーと向かい合う。お互い素手だ。


「じゃあ行くよ」

「私も」

「「はぁっ!」」


 優香と恵理子は、ネフェリとリピーに胸を借りる。

 殴る殴る殴る、蹴る蹴る蹴る。全部ガードされる。そして、重い一撃をもらう。


「「ヒール!」」


 優香と恵理子は何度も・ネフェリとリピーに挑む。

 訓練場に集まっている騎士や兵士は呼吸も忘れていそうなくらいに固まって四人を見ている。勇者と呼ばれる二人は、あんなにも手の届かない存在なのかと。さらには、その勇者を簡単にあしらうドラゴン族の二人はいったいどうしたらかなうのかと。ましてやこの四人を敵に回すことなど考えられるか。いや、考えられまい。

 そう騎士達が思っているところへ参戦するメイドが二人。


「あー、ずるい。私も混ぜて」

「私もやります」


 リーシャとブリジットだ。

 騎士達は思う。あれを見て、あの中に入りたいなどと思う者がいるのかと。

 騎士達は、参戦した二人を見て前言撤回をする。あの六人を敵に回してはいけないと。




「そろそろ帰りましょう」


 昼食後、マティが優香と恵理子に声をかける。


「わかりました。ブリジット、行きと同じくマティのそばを離れないように。他は馬車の後ろを。前方と左右は近衛に任せて」

「「はい」」



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